百人一首の覚え方

002
春すぎて 夏来にけらし 白妙しろたへ
衣干すてふ あま香具山かぐやま 持統天皇じとうてんのう

上の句|はるすぎて なつきにけらし しろたえの

下の句|ころもほすちょう あまのかぐやま

2023/09/29

※イラストはイメージです

現代語訳

春が過ぎて、いつの間にか夏が来たらしい。夏になると白妙の布を干すと語りつがれている天の香具山に、真っ白な衣が干されていることだ。

解説

香具山の木々と干されている衣の白の色彩のコントラストが鮮やかな歌。季節が順調に進むのは、天皇による政治がうまくいっている証拠です。夏の到来を喜ぶ政治的な和歌なのです。
天の香具山は、持統天皇がいた藤原京から東南にある山。忙しく政治を執り行う中で、ふと目に入った緑と白の美しいコントラストに目を奪われたのかもしれません。

出典

新古今和歌集しんこきんわかしゅう
万葉集まんようしゅうでは「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したりあめの香具山」

語句解説

来にけらし

「来にけるらし」が変化したもの。「らし」は「〜のようだ」と推定を表す助動詞。「夏来にけらし」で「夏が来たようだ」という意味。

白妙

木の皮の繊維で折られた布のこと。「白妙の」は「衣」にかかる枕詞。

干すてふ

「てふ」は「といふ」がつづまった形で「ちょう」と読む。「干すてふ」で「干すという」という意味。

香具山

奈良県橿原市にある、大和三山のうちの1つ。大和三山のなかで最も神聖な山とされている。

作者紹介

持統天皇(じどうてんのう)(645年ー702年)

第41代天皇
天智天皇の第二皇女。天智天皇の弟である天武天皇の皇后から、史上3人目の女性天皇となった。

作者に関する逸話

父である天智天皇の崩御後に勃発した「壬申の乱」は、持統天皇(当時は鸕野讃良皇女うののさららのひめみこ)にとって夫(天武天皇。当時は大海人皇子)と兄(大友皇子)の戦いでした。
壬申の乱に大海人皇子が勝利し、天武天皇が即位すると皇后に。天武天皇の崩御後は、息子である草壁皇子を即位させようとしましたが、若くして亡くなってしまったため、自らが即位することとなりました。
持統天皇は、律令を制定したり、藤原京を造営したりするなど、奈良時代の政治の礎を築いた有能な統治者であったと言われています。

決まり字

上の句
春すぎて 夏来にけらし 白妙の
下の句
衣干すてふ 天の香具山

「はるす」が決まり字の三字決まりです。

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語呂合わせ

春すぎて衣干す
春が過ぎて服を干している衣替えの様子をイメージすると覚えやすいです。

イラストレーター

ぬまた こうたろう


監修者

たに ともこ


1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。

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