百人一首の覚え方
010
これやこの 行くも帰るも 別れては
知るも知らぬも 逢坂の関
(蟬丸)
上の句|これやこの ゆくもかえるも わかれては
下の句|しるもしらぬも おうさかのせき
2023/11/29
※イラストはイメージです
現代語訳
これがあの、都から旅立つ人も、都へ帰る人も、知っている人も知らない人も、ここで別れてはまた会うという逢坂の関なのだなあ。
解説
近江国(滋賀県)と山城国(京都府)の境にある関所「逢坂の関」を行き交う人を見て詠んだ歌。関所とは、人の行き来や荷物を調べていたところです。
「行く」と「帰る」、「知る」と「知らぬ」、「別れる」と「逢う」と3組の対になる語が用いられ関所の様子が伝わってくると同時に、出会いと別れを繰り返す人生の無常まで感じられるようです。
出典
後撰和歌集語句解説
これやこの
「これがあの(有名な・うわさの)」という意味。「や」は「〜なあ」という詠嘆を表す間投助詞。
行くも帰るも
「行く人も帰る人も」という意味。ここでは、京の都から旅立つ人と帰ってくる人という意味を表しています。
逢坂の関
近江国(滋賀県)と山城国(京都府)の境にあった関所。逢坂の関を越えた東側が東国とされていました。「逢ふ」と掛けた掛詞です。
作者紹介
蟬丸(せみまる)(生没年不詳)
平安時代前期の歌人。逢坂山の関の近くの庵に住んでいたとも言われていますが、はっきりとした経歴はわかっていません。
作者に関する逸話
生没年も、経歴もわかっていない伝説的な人物。盲目の琵琶の名手であったとか、宇多天皇の第八皇子の敦実親王に仕えていたとか、醍醐天皇の第四皇子だったといったさまざまな説があります。
決まり字
- 上の句
- これやこの 行くも帰るも 別れては
- 下の句
- 知るも知らぬも 逢坂の関
「これ」が決まり字の二字決まりです。
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語呂合わせ
これしる
何かを指差して「これ知る」と言っている人を思い浮かべると覚えやすいです。
何かを指差して「これ知る」と言っている人を思い浮かべると覚えやすいです。
イラストレーター
沼田光太郎 ぬまた こうたろう
監修者
谷 知子たに ともこ
1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。