百人一首の覚え方
003
あしびきの 山どりの尾の
しだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む
(柿本人麿※)
上の句|あしびきの やまどりのおの しだりおの
下の句|ながながしよを ひとりかもねむ
2023/11/29
※イラストはイメージです
現代語訳
山鳥の長くたれ下がった尾のように、長い長い秋の夜を、私は一人で寝るのだろうか。
解説
長い秋の夜を一人で眠る寂しさを詠んだ歌。山鳥は、雄の尾が長いことに加え、つがいになっても夜は谷をへだてて別々に寝ると言われています。山鳥の姿に、寂しい気持ちやわびしい気持ち、離れている恋しい人を思う気持ちを重ね合わせているのかもしれません。
出典
拾遺和歌集語句解説
あしびきの
「山」にかかる枕詞。
しだり尾の
長くたれ下がるという意味の動詞「しだる」に山鳥の「尾」と、「〜のように」の意味を表す格助詞「の」が続いたもの。「長くたれ下がった尾のように」という意味になります。
ひとりかも寝む
「ひとり」は「一人で」という意味。「かも」は疑問の係助詞「か」に、詠嘆を含んで強調する意味強意の係助詞「も」が組み合わさったもの。「ひとりかも寝む」で「一人で寝るのだろうか」という意味になります。
作者紹介
柿本人麿(かきのもとのひとまろ)(生没年不詳)
持統天皇、文武天皇に仕えた宮廷歌人。「三十六歌仙」の一人。『万葉集』の代表的歌人でもあり、80首以上が収録されています。百人一首の第4首に収録されている山辺赤人と共に「歌聖」と称されています。
※万葉集では柿本人麻呂と表記されますが、小倉百人一首では柿本人麿と表記します。
作者に関する逸話
和歌の名人として有名な柿本人麿ですが、生没年も家系もくわしいことはわかっていません。あまり地位の高くない役人だったといわれており、晩年は石見国(現在の島根県西部)の国司(地方官のこと)を務めていたといわれています。
決まり字
- 上の句
- あしびきの 山どりの尾の しだり尾の
- 下の句
- ながながし夜を ひとりかもねむ
「あし」が決まり字の二字決まりです。
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語呂合わせ
あしなが
足が長い人を思い浮かべると覚えやすいです。
足が長い人を思い浮かべると覚えやすいです。
イラストレーター
沼田光太郎 ぬまた こうたろう
監修者
谷 知子たに ともこ
1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。