百人一首の覚え方
031
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに
吉野の里に ふれる白雪
(坂上是則)
上の句|あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに
下の句|よしののさとに ふれるしらゆき
2023/11/29
※イラストはイメージです
現代語訳
夜がほのかに明けるころの、明け方の月かと思うほどに、吉野の里には白雪が降り積もっている。
解説
あたり一面の雪明かりの白さを、明け方の月の光に見立てて詠んだ歌。夜明けに外が明るいように感じて「明け方の月の光だろうか?」と外を見渡したときの驚きが伝わってくるようです。雪を月に見立てている点が面白い歌です。
出典
古今和歌集語句解説
朝ぼらけ
夜が明けてきて、周囲がほんのり明るくなってくるころ。
有明の月
夜が明けても、まだ空に残っている月。
見るまでに
ここでの「見る」は目で見るのではなく「思う」「見受けられる」という意味。「まで」は「〜ほど」という程度を表す副助詞。「見るまでに」で「思うほどに」という意味となります。「~までに」が錯覚(見立て)であることを示しています。
吉野の里
現在の奈良県吉野郡のあたり。桜と雪の名所として知られています。
作者紹介
坂上是則(さかのうえのこれのり)(生誕年不明ー930年)
平安前期の官吏・歌人。平安時代の和歌の名人である「三十六歌仙」の一人。蹴鞠の名手としても知られています。
作者に関する逸話
坂上是則は、桓武天皇に征夷大将軍に任命された坂上田村麻呂の子孫と言われています。
和歌の名手だけでなく、鹿の皮でできたまり(ボールのようなもの)を、地面に落とさずにけった回数を競う蹴鞠において、続けて200回以上けりあげ、醍醐天皇から絹を授けられたと言われています。
決まり字
- 上の句
- 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに
- 下の句
- 吉野の里に ふれる白雪
「あさぼらけ あ」が決まり字の六字決まりです。
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語呂合わせ
あさぼらけよし
「朝ぼらけ」の時間帯に「よし!」と言っている人を思い浮かべると覚えやすいです。
「朝ぼらけ」の時間帯に「よし!」と言っている人を思い浮かべると覚えやすいです。
イラストレーター
沼田光太郎 ぬまた こうたろう
監修者
谷 知子たに ともこ
1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。