ひらがな特集

STEP1.まずは、鉛筆を思い通りに動かすための「運筆練習」

ひらがなは、曲線や交差する線などの集合体です。ひらがなをきれいに書けるようになるためには、思い通りに手首を動かす力や筆圧などの運筆力を身につけておく必要があります。特に、3・4歳くらいのお子さまだと手指の骨の発達がまだ十分ではないので、いきなり文字を書き始めるのではなく、ウォーミングアップの運動をしっかりしておくことが大切です。

イラスト STEP1

運筆力を伸ばす遊び

●おえかき遊び

イラスト おえかき遊び

ひらがなの文字につながる線や流れを表現する動きをたくさん盛り込んだお絵かき遊びは、手首のコントロール力を育てます。「ぐるぐる描こう」「くねくね進もう」と動きをイメージできる言葉をかけながら遊ぶといいでしょう。

●ぬりえ

イラスト ぬりえ

お子さまが大好きなぬりえは、実は筆圧を伸ばすのにぴったりの遊び。好きなキャラクターやお話のぬり絵だと、長時間集中して取り組むことができ、自然と力強く線を描けるようになります。

STEP2.正しい字形を上からなぞる「なぞり書き」

手指が自由に動かせるようになったら、今度はなぞり書きをすることで一つひとつの文字の線の曲がり方や交わり方などの仕組みを学びます。また、この時期に大切なのは、自分のよく知っていることばをひらがなで書いてみるなど、楽しく文字を書く体験をすることです。

イラスト STEP2

どうしてなぞり書きをするといいの?

文字は何本かの線によって形作られる図形のようなものです。しかし幼児期の図形を認識する力はまだまだ発展途上。ですから、お手本があるからと言って文字を正しく書くというのは難しいことなのです。すでにあるお手本を「なぞり書きする」ことは、文字の全体像をイメージしやすく、文字の形のバランスをつかむ助けになるのです。

イラスト どうしてなぞり書きをするといいの?

大切なのは、楽しく文字を書く体験をすること

「あいうえお」順に練習させると、お子さまにとっては書くのが難しい「あ」からスタートしてしまいます。まずは一筆で書ける「つ・く・し」のような書きやすい字から練習するとよいでしょう。また、お子さまの名前や好きな言葉など、書きたい言葉から練習させてあげることも大切です。「次は何を書こうか?」とお子さま自身に決めさせてあげると、書いたあとの達成感もグッと高まります。

イラスト 大切なのは、楽しく文字を書く体験をすること

STEP3. 正しく書くための「うつし書き」・「正しい書き順」

なぞり書きの次は、お手本となる字を見ながらの「うつし書き」を学びます。目で字形をとらえ、必要な線を組み合わせて、字を書く力を身につけていきます。また、字を書けるようになってきたら、正しい書き順で書くことを促し、きれいな字を書く力を伸ばします。

イラスト STEP3

お子さまが正しく書けるコツ

コツ1 書き順を目で追ってイメージできること

イラスト 書き順を目で追ってイメージできること

書き順の学習は、「動作」の学習ですから、言葉で教えられてもなかなかわからないもの。実際の動きを見るのがいちばんわかりやすく、身につきやすい方法です。自分で鉛筆の動きをイメージできるよう、おうちのかたが実際に書いて見せてあげるのもよいですね。

コツ2 「丁寧に書きたい」と思えるきっかけがあること

イラスト 「丁寧に書きたい」と思えるきっかけがあること

雑に書くクセがつくと「とめ・はね」などがいい加減になり、間違った字形に気づくことができません。たとえば、お手紙を送る遊びを通して、自分の字が相手に読めるかどうか考える機会を与え、「字は丁寧に書くもの」という意識をはぐくみたいですね。

ひらがなの書き方 Q&A

Q.
どうして鏡文字になってしまうの?
A.
6歳ぐらいまでのお子さまは、左右対称の図形はほとんど同じ形であると認識しがちです。また、この時期のお子さまは、タテ(上下)方向に目線を走らせる傾向があります。タテに注目するあまり、ヨコ(左右)方向の位置関係がおろそかになり、鏡文字になってしまうのです。この場合は、お手本を隣ではなく、正面(上)においてみることをおすすめします。
イラスト どうして鏡文字になってしまうの?
Q.
字のカタチがぐちゃぐちゃになってしまう…
A.
幼児期のお子さまは、まっすぐな線と斜めの線の区別がはっきりつかず、2つの線が交わるというこ ともなかなか理解できません。 例えば「あ」には斜めの線や曲線、そして線の交わりがあります。 これはお子さまにとってかなり厄介なものだといえるのです。 すでにあるお手本を「なぞり書く」ことは、文字の全体像をイメージできるため、効果的です。
イメージ 字のカタチがぐちゃぐちゃになってしまう…
Q.
どうして正しい書き順で書けないの?
A.
幼児期は目立つところから書いてしまうという特徴があります。 お子さまは形を写すことに集中すると、ついつい「正しい」書き順よりも「書きやすい」方法で書いてしまいがちです。 一度間違って覚えてしまうと、あとで直すのが大変なので、変なくせがついてしまう前に、正しい書き順が身につくように、おうちのかたがお手本を示してあげたいものですね。
イラスト よくある書き順まちがいの例 / ヨコの線よりタテの線を優先してしまう / 直線より曲線を優先してしまう / 短い線より長い線を優先してしまう

監 修

沢井 佳子先生
チャイルド・ラボ所長。
静岡大学情報学部客員教授。

お茶の水女子大学大学院修了。発達心理学専攻。
認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。
幼児教育番組「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビ)制作の心理学スタッフを務めたほか、大学講師などを経て現職。
「こどもちゃれんじ」(ベネッセ)の「考える力」プログラム監修。
幼児教育番組「しまじろうのわお!」(テレビ東京系列)監修。
人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事。
日本子ども学会常任理事。