ひらがなは、曲線や交差する線などの集合体です。ひらがなをきれいに書けるようになるためには、思い通りに手首を動かす力や筆圧などの運筆力を身につけておく必要があります。特に、3・4歳くらいのお子さまだと手指の骨の発達がまだ十分ではないので、いきなり文字を書き始めるのではなく、ウォーミングアップの運動をしっかりしておくことが大切です。
運筆力を伸ばす遊び
●おえかき遊び
ひらがなの文字につながる線や流れを表現する動きをたくさん盛り込んだお絵かき遊びは、手首のコントロール力を育てます。「ぐるぐる描こう」「くねくね進もう」と動きをイメージできる言葉をかけながら遊ぶといいでしょう。
●ぬりえ
お子さまが大好きなぬりえは、実は筆圧を伸ばすのにぴったりの遊び。好きなキャラクターやお話のぬり絵だと、長時間集中して取り組むことができ、自然と力強く線を描けるようになります。
手指が自由に動かせるようになったら、今度はなぞり書きをすることで一つひとつの文字の線の曲がり方や交わり方などの仕組みを学びます。また、この時期に大切なのは、自分のよく知っていることばをひらがなで書いてみるなど、楽しく文字を書く体験をすることです。
どうしてなぞり書きをするといいの?
文字は何本かの線によって形作られる図形のようなものです。しかし幼児期の図形を認識する力はまだまだ発展途上。ですから、お手本があるからと言って文字を正しく書くというのは難しいことなのです。すでにあるお手本を「なぞり書きする」ことは、文字の全体像をイメージしやすく、文字の形のバランスをつかむ助けになるのです。
大切なのは、楽しく文字を書く体験をすること
「あいうえお」順に練習させると、お子さまにとっては書くのが難しい「あ」からスタートしてしまいます。まずは一筆で書ける「つ・く・し」のような書きやすい字から練習するとよいでしょう。また、お子さまの名前や好きな言葉など、書きたい言葉から練習させてあげることも大切です。「次は何を書こうか?」とお子さま自身に決めさせてあげると、書いたあとの達成感もグッと高まります。
なぞり書きの次は、お手本となる字を見ながらの「うつし書き」を学びます。目で字形をとらえ、必要な線を組み合わせて、字を書く力を身につけていきます。また、字を書けるようになってきたら、正しい書き順で書くことを促し、きれいな字を書く力を伸ばします。
お子さまが正しく書けるコツ
書き順を目で追ってイメージできること
書き順の学習は、「動作」の学習ですから、言葉で教えられてもなかなかわからないもの。実際の動きを見るのがいちばんわかりやすく、身につきやすい方法です。自分で鉛筆の動きをイメージできるよう、おうちのかたが実際に書いて見せてあげるのもよいですね。
「丁寧に書きたい」と思えるきっかけがあること
雑に書くクセがつくと「とめ・はね」などがいい加減になり、間違った字形に気づくことができません。たとえば、お手紙を送る遊びを通して、自分の字が相手に読めるかどうか考える機会を与え、「字は丁寧に書くもの」という意識をはぐくみたいですね。
監 修
沢井 佳子先生
チャイルド・ラボ所長。
静岡大学情報学部客員教授。
お茶の水女子大学大学院修了。発達心理学専攻。
認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。
幼児教育番組「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビ)制作の心理学スタッフを務めたほか、大学講師などを経て現職。
「こどもちゃれんじ」(ベネッセ)の「考える力」プログラム監修。
幼児教育番組「しまじろうのわお!」(テレビ東京系列)監修。
人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事。
日本子ども学会常任理事。