もうすぐ夏休み。1学期が終われば、いよいよ2学期に向けて授業準備に入る先生も多いことと思います。そこで、2学期の授業で、ご活用いただけるよう、ベネッセのプログラミング指導案サイト「よりお寄せいただければ幸いです。

かけ算とわり算の意味を、プログラミングの繰返しで考える

3年算数では、既習の九九を使ってわり算を学びます。新学習指導要領算数の第3学年の目標及び内容の(4)除法、ア(ウ)には、除法と乗法や減法との関係について理解すること、と書かれています。このことは、同解説によれば、「除法は,ある数量から,一定の大きさの数量を取り去るときの最大の回数を求める場合(累減)とも考えることができる。例えば,12÷3の答えは,12-3-3-3-3=0となるときの3の個数とも考えられる。」とあります。

そこで、児童の理解をうながすために、プログラミング的思考の繰返しを使って、視覚的に理解できるように、Scrach教材を開発しました。かけ算とわり算を改めて振り返る機会として、あまりのあるわり算の学習後に利用できるのではないかと思っています。

例えば、かけ算の3×5は、3+3+3+3+3のことで、5回3をたす計算です。一方、わり算の15÷3は、15-3-3-・・・と、あまりが0になるまで3をひく計算です。Scratchのブロックでプログラミングすると、下図のようになり、それぞれ、「3をたす」「3をひく」を繰返し処理すればいいことがわかります。

Scratch教材では、児童が、かけられる数とかける数、または、わられる数とわる数を決めて、りんごの数が増えたり、減ったりする様子が視覚的に確かめられるようになっています。2つの計算を並べて考えることで、かけ算とわり算の関係がより理解しやすくなるのではないでしょうか。

このことは、例えば、5×12を、5×(10+2)、5×(4+4+4)とかける数を分解して考えたり、49÷5は、49-5×8ー5×1と、あまりがわる数5より小さくなるまで5を差し引くと考えれば、商を8と1の2回に分けて求めることもできます。456÷32など、未習のわり算でも、引き算で求めようとする児童も出てくるかもしれません。

累加、累減の考えは、「○をかける」を繰り返す計算が累乗であることにもつながると思います。

 

センサーの制御を、プログラミングの条件分岐で考える

新学習指導要領理科の第6学年の目標及び内容の(4)電気の利用、ア(ウ)には、身の回りには,電気の性質や働きを利用した道具があることを理解する、と書かれています。同解説には、「また,身の回りには,温度センサーなどを使って,エネルギーを効率よく利用している道具があることに気付き,実際に目的に合わせてセンサーを使い,モーターの動きや発光ダイオードの点灯を制御するなどといったプログラミングを体験することを通して,その仕組みを体験的に学習するといったことが考えられる。」とあります。

そこで、戸田市教育委員会と現場の先生がたとともに、micro:bitの明るさセンサーを使って、省エネのための工夫を考える指導案をつくり、授業実践しました。

この授業で児童に考えさせたいことは、省エネのために、電気を点灯したり消灯したりするための条件設定です。6年生にとって「AならばB、さもなければC」という条件分岐は易しくありません。事前協議でも、ワークシートのどこまで( )にするのか、意見が分かれました。「もし、まわりが暗くなったら電気がつく、でなければ電気は消える」または「もし、まわりが明るくなったら電気が消える、でなければ電気はつく」のどちらかに決めてしまってもいいのではないか、という案も出たのですが、結局、どちらの場合も考えられるような上記のワークシートを使いました。

ここまで、言葉で書けたとしても、センサーが動くようにプログラミングするときには、「明るくなったら」「暗くなったら」の意味を、数値で定義する必要があります。あいまいな命令では動かないのがコンピュータです。

下の例では、「明るさが40より小さくなったらハート、でなければバツ」のLEDがつくように、プログラミングしています。micro:bitでは、画面左にシミュレータがあります。明るさ190(40より小さくない)ですから、バツが表示されており、条件分岐がうまくいっていることがわかります。

シミュレータでうまくいけば、実機での確かめです。micro:bitのLEDが思った通りに点滅する様子に、児童はうれしそうにしていました。さらに時間があれば、本物のLEDを接続して、より本物の電気に近い状態で実験することもできるでしょう。

教科横断で、「分類」するための条件制御を学ぶ

最後は、6年理科「水よう液の性質」と4年算数「いろいろな四角形」です。この2つの単元は、どちらも、対象物をある条件で分類する学習をします。

新学習指導要領では、資質・能力の育成が中心テーマになっています。これまでは内容を中心に考えられてきましたが、内容によらない能力ベイスでの指導が奨励されています。情報過多の現代では、情報の内容を全部覚えることはできません。できるだけ統合していく必要があります。そのときには、推論したり、類似のものをまとめたりする等の能力が重要になるのです。

プログラミングは、思考の枠組みを作ることと似ています。内容が水溶液であろうと図形であろうと、「分類する」という条件制御の枠組みは同じ構造で作ることができます。

下の2つの例は、それぞれ、うすいアンモニア水と食塩水を分別する条件、長方形と正方形を分別する条件を考えさせています。教科横断で共通する考え方を学ぶことで、類似の場面でもその考えを使えるようになるのではないかと思います。