2020年から小学校で必修化されるプログラミング。

教科の授業に、どのようにプログラミング的思考を導入すればいいのか?教科のねらいとプログラミングのねらいが相乗効果を生むような授業づくりはどうすればいいのか?

ベネッセでは、学校現場の先生がたと共に、理科や算数はもちろん、いろいろな教科におけるプログラミングの授業を考案・実践し、試行錯誤を繰り返してきました。

このたび、それらの中から4つの指導案を、ベネッセの指導案サイト「プロアンズ」で公開いたします。プロアンズとは、プログラミングの「プロ」と指導「案」の「アン」に複数形の「ズ」をつけて命名されました。

学校での実践事例として本サイトでご紹介してきた、4年算数3年理科2年音楽について、指導案の公開は初めてです。授業ですぐに使えるScratchテンプレートも用意されています。ぜひ「プロアンズ」をご覧いただき、ご活用ください。お気づきの点やご意見をお寄せいただければ幸いです。

ここでは、5年算数の指導案について、少しご説明いたします。

正多角形の作図のプログラミングでは、繰返しの単位を見つける

5年生算数の正多角形の性質を学ぶ授業では、その性質を根拠にして、作図をする活動があります。

正多角形は円の中にぴったり入ること、円にぴったり入った正多角形の頂点と円の中心を結ぶ線が作る角(中心角)の大きさが全て等しいことをもとにして、コンパスと分度器と定規で作図できます。

また、正多角形とは、全ての辺の長さが等しく、全ての角の大きさが等しい図形なので、辺の長さと角の大きさが等しくなるように、定規と分度器で作図することもできます。

このように、正多角形の特徴をもとにして作図する活動を通して、正多角形の特徴を理解することが教科のねらいです。手書きでの作図過程で、繰り返している部分がないかどうかに気づき、繰返しの回数と正多角形の辺の本数との関係を見出すことが大切です。その規則性がわかれば、コンピュータに作図させるための命令が作りだせます。

作図の根拠が変われば、作図方法は変わるのです。そこで、「プロアンズ」では、3つの作図方法を紹介しました。

 

 

(1)正多角形は、辺の長さと角の大きさがすべて等しい

作図する前に、作図の根拠が考えられるような、Scratchテンプレートが用意されています。

「辺を書く、向きを変える」という繰返しの単位をもとにプログラミングした後、「向きを変える」ときの向きは、正多角形の角の大きさとどういう関係になっているのか、式で考えることができるように設計されているのが、この指導案と教材の特徴です。

 

(2)正多角形は、円にぴったり入り、中心角が全て等しい

コンパスで円を描いて、中心角が等しくなるように円周上に点をつけ、その点を結べば正多角形が作図できます。この方法を、「一筆書きできないか?」という見方で考えたのがこの作図方法です。(1)でプログラミングしたことを応用できるかどうか、発展的な学習内容になります。

 

中心角と、回転する角の大きさの関係はどうなっているのでしょうか?ノートでよく考えてみると、別のプログラミングの方法が見つかります。

(3)回転する向きを逆にしてみる

(1)は、「辺をかく、向きを変える」という2つの命令を繰り返す作図方法です。このとき、進む方向に対して左の方向に向きを変えています。完成させようとしている図形から見ると、図形の外側の角です。「内側の角として向きを変えることはできないか?」という見方で考えたのが、この作図方法です。

 

(1)(2)(3)はほんの一例です。まだ、いろいろな作図方法があると思います。

新学習指導要領では、数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して、数学的に考える資質・能力を育成することが算数科の目標にかかげられています。見方とは「数量や図形を捉える際に着目する観点」、考え方とは「その着目した観点から考察を深めたり表現を洗練したりしながら統合的・発展的に考えることに関わる考え方」です(*)。プログラミングを導入することで、いろいろな見方や考え方を深められる可能性があります。

 

(*)『 平成29年度版 小学校新学習指導要領ポイント総整理算数』東洋館出版社、p.45