百人一首の覚え方
098
風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは
みそぎぞ夏の しるしなりける
(従二位家隆)
上の句|かぜそよぐ ならのおがわの ゆうぐれは
下の句|みそぎぞなつの しるしなりける
2024/5/31
※イラストはイメージです
現代語訳
風がそよそよと楢の葉に吹いている、ならの小川の夕暮れは、
(すっかり秋らしくなっているが)水無月祓のみそぎの行事が行われていることだけが、まだ夏である証拠なのだなあ。
(すっかり秋らしくなっているが)水無月祓のみそぎの行事が行われていることだけが、まだ夏である証拠なのだなあ。
解説
藤原道家の娘が後堀河天皇の中宮として入内(内裏に入ること、天皇と結婚するという意味)する際に持ち込まれた屏風絵に詠まれた歌。心地よい風と楢の葉が揺れる様子を感じながら、水無月祓(水無月は旧暦六月の異称。夏越祓ともいわれる、一月から六月までのけがれを落とす、みそぎの行事)の行事を眺めている爽やかな情景が浮かんできます。
出典
新勅撰和歌集語句解説
風そよぐ
風がそよそよと音を立てる
ならの小川
京都にある上賀茂神社の境内を流れている御手洗川のこと。ブナ科の落葉樹である「楢」の木との掛詞になっています。
みそぎぞ
「みそぎ」は水無月祓のこと。夏越祓ともいわれ、一月から六月までのけがれを払い落とすために、川の水などで身を清めたり、茅の輪をくぐるなどの行事が行われる。「ぞ」は意味を強める強意の係助詞。
夏のしるしなりける
「しるし」は証拠、あかしのこと。「ける」は気づきや詠嘆を表す助動詞「けり」の連体形。「夏のしるしなりける」で夏の証拠なのだなあという意味になります。
作者紹介
従二位家隆(じゅにいいえたか)(1158年〜1237年)
平安時代末期から鎌倉時代前期の歌人。藤原俊成に和歌を学び、その子、定家(ていか/さだいえ)と深い親交がありました。「新古今和歌集」の撰者の一人。
作者に関する逸話
後鳥羽院の信任が厚く、歌壇でも重用された家隆。後鳥羽院への忠誠心も強く、院が北条義時追討、鎌倉幕府討伐を図った承久の乱で敗れた後も、隠岐(現在の島根県)に流された後鳥羽院に歌を贈り続けたといわれています。
決まり字
- 上の句
- 風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは
- 下の句
- みそぎぞ夏の しるしなりける
「かぜそ」が決まり字の三字決まりです。
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語呂合わせ
風そよぐ味噌
そよそよと風に吹かれる味噌をイメージ すると覚えやすいです。
そよそよと風に吹かれる味噌をイメージ すると覚えやすいです。
イラストレーター
沼田光太郎 ぬまた こうたろう
監修者
谷 知子たに ともこ
1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。