百人一首の覚え方
017
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
(在原業平)
上の句|ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ
下の句|からくれないに みずくくるとは
2023/10/20
※イラストはイメージです
現代語訳
遠い昔の神々の時代でさえも聞いたことがない。竜田川が一面に散ったもみじで流れる水を紅色に染めて、絞り染めにするなんてことは。
解説
この歌は、実際の景色を詠んだものではなく、屏風に描かれた絵に合わせて詠んだ「屏風歌」です。川を人間のように見立て(擬人法)、川の水面にもみじが流れる様子を、川が絞り染めをすると表現しています。色あざやかな川の様子が目に浮かんでくる歌です。
出典
古今和歌集語句解説
ちはやぶる
「神」にかかる枕詞。勢いが激しいことを表しています。
神代
遠い昔。不思議なことも多く起き、神が治めていたのだと考えられています。
竜田川
現在の奈良県生駒郡を流れる川。流域には竜田山があり、紅葉の美しさで知られています。
からくれなゐ
濃い紅色
くくる
絞り染めの技法である「くくり染め」にするという意味。くくり染めは、布の一部を糸でくくるなどして模様を染め出すものです。
作者紹介
在原業平(ありわらのなりひら)(825年ー880年)
平安前期の歌人。平安時代の和歌の名人である「六歌仙」「三十六歌仙」の一人。容姿端麗で風流を好み、「伊勢物語」の主人公のモデルといわれています。
作者に関する逸話
平安時代きっての美男子で、恋多き人として知られる在原業平。この歌を捧げた二条の后、〈清和天皇の后だった高子〉とは、かつて恋愛関係にあったといわれています。
高子は当時大きな力を持っていた藤原氏の娘。清和天皇との結婚が予定されていましたから、2人の恋は許されないものでした。恋心が深まった業平と高子は、駆け落ちを約束。業平は、高子を連れ出すことには成功したものの、逃げる途中で失敗し、高子を連れ戻されてしまったといわれています。
また、業平は絶世の美女として知られる小野小町とも恋愛関係にあった時期があるという言い伝えもあります。
決まり字
- 上の句
- ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
- 下の句
- からくれなゐに 水くくるとは
「ちは」が決まり字の二字決まりです。
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語呂合わせ
ちはやから
「ちはや」という子が「ちはやから!」と手を挙げている様子を思い浮かべると覚えやすいです。
「ちはや」という子が「ちはやから!」と手を挙げている様子を思い浮かべると覚えやすいです。
イラストレーター
沼田光太郎 ぬまた こうたろう
監修者
谷 知子たに ともこ
1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。