【聴覚過敏・体験談】「大きい音が苦手・ビクッとしてしまう」原因と対処法 【聴覚過敏・体験談】「大きい音が苦手・ビクッとしてしまう」原因と対処法

2023.11.8

【聴覚過敏・体験談】「大きい音が苦手・ビクッとしてしまう」原因と対処法

お子さまの中には、突然の大きい音にビクッとして体が固まってしまったり、パニックを起こしてしまったりする子がいます。
ざわざわとした雑踏や大勢の話し声がする場面が苦手でイライラしてしまうケースも。

お子さまがつらそうにしていると、保護者のかたも「なんとかしてあげたい」と思われることでしょう。

この記事では、そんな「大きな音が苦手」「苦手な音がある」など、音に対しての過敏さがある場合の原因と対処法をお伝えします。

体験談もあるので、ぜひ参考にされてみてくださいね。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

なぜ音が気になる? どんなふうに聞こえている?

友達に後ろから大きな声で名前を呼ばれ、飛び上がるほどびっくりする子ども

耳に入る音に対し、苦痛や困難を感じてしまう特性を「聴覚過敏」といいます。

たとえば携帯電話の着信音や雷の音、運動会のピストルの音、急に耳元で名前を呼ばれるなど…。
大きな音を怖がり、跳び上がるほどびっくりしたり、パニックを起こしたりするのは聴覚過敏の一例です。

みんなで奏でる楽器の音、雑踏のざわざわ音や人が多い場所での話し声、エアコンや空気清浄機の稼働音などが気になってしまい、つらいケースも。

人によって特定の音が苦手な場合とそうでない場合があり、つらいと感じるボリュームもさまざまです。

聴覚過敏のある人は、刺激になる音が頭に響くように聞こえたり、音割れのように聞こえたり、エコーがかかったように聞こえることもあり、人によっては耳や頭の痛みを感じることもあります。
多くの場合、不快感や不安、恐怖、イライラなど、負の感情を伴います。

聴覚過敏がない人でも、黒板やガラスを引っかく音など、理屈抜きでいやな音がありますよね。

聴覚過敏がある人は、大げさだったり怖がりだったりするわけではなく、そうした不快音に、日常的に囲まれていると捉えてみるとイメージしやすいでしょう。

聴覚過敏の原因とは?

聴覚過敏の原因は、おもに脳の機能が関わっているといわれていますが、生まれもっての特性のほか、耳の疾患がある場合、ストレスや心理的な要因が作用している場合もあり、原因がなかなかわからないこともあります。

いずれにしても、音に過敏=耳がよい、というのとは違い、脳や神経のうち音の受容に関する部位の特性や変調が根本にあると言われます。

また、聴覚過敏はASD(自閉症スペクトラム)などの発達障害によくみられる特性でもあります。ただし発達障害がある人に必ず聴覚過敏があるわけではありません。

※聴覚過敏は感覚過敏のひとつで、感覚過敏には他にも
・好き嫌いの原因となりやすい「味覚過敏」
・シャワーや雨が痛いと感じる、衣類の着心地が気になる「触覚過敏」
・ほかの人が感じない程度の匂いもかぎ取れる「嗅覚過敏」
などがあります。

聴覚過敏のお子さまが安心できる対処法 逆効果になる対処法とは?

イヤホンをして外からの音を遮断しながら本を読む子ども

お子さまに聴覚過敏の傾向がある場合は、聴覚の保護と、刺激されにくい環境づくりが対処法になります。

グッズを活用する

耳栓やイヤーマフ、最近ではノイズキャンセリング機能のついたさまざまなイヤホンやヘッドホンがあります。
中には耳障りな音をシャットアウトして話し声だけ聞こえる設定にできる、といったものも。
音に過敏なお子さまの聴覚を保護し、つらい反応を軽減できる心強いアイテムです。

使い勝手がよくお子さんがいやがらずに使えるグッズを選んでみましょう

山口県

小1保護者 みらい

楽しく行っていた学童ですが、周りがうるさくて困っていたので、イヤーマフを購入してみました。あまりつけてはいないようですが、お守りがわりになっていると思います。

静かな環境を作る

自宅でソファーに座って会話を楽しむ親子

ご家庭では、静かに過ごせる環境づくりが対処法のひとつになります。

例えば勉強中に他の部屋の音が気になるようであれば、ドアや窓のへりを隙間テープで埋めたり、外の音が気になるようであれば、厚手のカーテンを使用したりして、できるだけ音が入るのを防ぐとよいでしょう。

また、保護者のかたが声をかけるときも、いきなり大きな声を出さず、声のトーンを落として話しかけると、伝えたい内容がお子さんに伝わりやすくなります。
叱るとき、注意するときも同様です。

群馬県

小1保護者 きりん

わが子はASDで聴覚過敏なので、勉強は自宅の中の静かで落ち着ける場所で、見えるところに余計なものを置かないなどの視覚支援も用いながら進めています。

学校と情報を共有する

学校生活では、先生にお子さまが苦手な音や音量を伝え、聴覚過敏の特性を共有してもらうと安心ですね。

たとえば、お子さんが苦手な音が鳴る活動の際には、耳栓やイヤーマフの使用を認めてもらえるか相談してみましょう。

グッズの使用のほかには、席の配置の配慮もお子さんの負担軽減と集中力アップにつながります。 背後からの突然の声かけがない最後列や先生の声が聞きやすい最前列、音楽室の音が聞こえない窓側、校庭の音が聞こえない廊下側など、お子さんの気になる音に合わせて席を考えてもらえるといいですね。

兵庫県

高2保護者 はる

ヘッドホン型耳栓を利用しています。また、式典などでは外に出やすい席にしてもらっています。

個別に話をする

学校で子どもが学習内容や指示をしっかり受け取れるよう、隣に座って個別に指示を出す先生

特に発達障害のお子さまには、先生の声など聞くべき音と、周囲の音が同じ大きさで聞こえてしまい集中できなくなる、という状況が見られることがあります。

聞くべき音に集中するのに、周囲が思っている以上に力を使わなければならず、一生懸命話を聞いていても聞き落としてしまうなどの状況にもつながります。

そのため、ガヤガヤした環境でうまく聞き取れないようであれば、個別に指示を出す、静かなところで改めて話をするなどの対応も助けとなります。

静かな場所で休ませる

聴覚過敏を抱えていると、周囲の音を聞き分けるだけで疲れてしまうこともあります。
また、突然の大きな音にパニックを起こしてしまうことも。

疲れていたり、パニックを起こしてしまったりする場合には、静かな場所に移動する、お子さま自身が心地よいと感じる音楽などを聴くなどして、静かに休めるような配慮も必要です。

無理に慣れさせるのは避ける

聴覚過敏の特性がある人は、ない人とはそもそも聞こえ方が異なるため、あえて苦手な音を聞かせることがストレスになるばかりでなく、逆効果となって音をより怖がる状態になる可能性もあります。安易な荒療治は避けましょう。

パニックになるほどではなくても音に過敏な子の対処法は?

学校でノートをとりながら授業を受ける子ども

聴覚過敏によってパニックまでは起こさないけれど、耳に入ってくる音に意識をとられやすいケースもあります。

リビング学習をしていても、水が流れる音、ご飯が炊ける音など、生活音のひとつひとつに意識がいってしまい、すぐに集中が途切れてしまう……そんなときは、耳栓やイヤーマフをするほかにも、勉強中は小さめのボリュームでBGMを流すという対処法で、集中しやすくなるお子さまもいます。

その場合、歌詞のある楽曲やドラマチックなクラシック音楽などではなく、リズムやボリュームが一定の単調な曲がおすすめです。

「集中を高めるBGM」などと検索すると、いろいろな曲がヒットしますので、お子さまに合いそうなものを試してみてくださいね。

聴覚過敏のあるお子さまは、日々「音疲れ」をしているかもしれません。おうちに帰ったら、静かな場所でそっと休める時間をとってあげてみてくださいね。

まとめ & 実践 TIPS

自宅で勉強をしている子ども

聴覚過敏は、生まれ持っての特性のほか、耳の疾患、ストレスや心理的な要因が作用している場合もあり、ASD(自閉症スペクトラム)などの発達障害が背景にある場合もあります。

いずれにしても、苦手な音や音量が刺激する状況を作らないよう「予防」することが最善の対策です。

いざというとき、お子さまが落ち着けるこだわりの方法やグッズを見つけて、取り入れられるといいですね。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。