2023.11.13
【専門家・体験談】「感情のコントロールができない」子どもとどう向き合う? しんどいときは?
「ちょっとしたことで大泣き…」
「いったん怒りに火がつくと、しばらくは手がつけられない…」
お子さまと日々接する中で、このような問題(かんしゃく)に 直面している保護者のかたは少なくありません。
しかし、「なぜ感情のコントロールが難しいのか」を知っておけば、お子さまと向き合いやすくなります。
背景や原因を押さえたうえで、サポートするためのヒントをご紹介します。
目次
監修者
山﨑衛やまざきまもる
マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。
なぜカッとなる、泣く、キレる? 感情が爆発する背景・原因
お子さまが突然泣いたり怒ったりし始めると、保護者のかたとしては、「どうして急に?」と驚かれるのではないでしょうか。
一般的に、子どもの感情が爆発するのには、以下のような背景があります。
・自分の思い通りにいかない。要求がかなえられない
・行動をジャマされたと感じ、プライドが傷つけられた
・自分の気持ちをうまく表現できずもどかしい
・日常生活の中で、友達とのトラブルなどのストレスを感じている
・寝不足や空腹である
お子さまにこれらの要因が複数重なったときに、自分の感情をコントロールできなくなってかんしゃくを起こしたり、泣き出したりする場合があります。
感情のコントロールと発達障害、どんな関係がある?
発達障害の診断を受けたお子さまの中にも、感情のコントロールが難しいケースが見られます。
友達や大人の言葉がきっかけで感情が爆発すると、相手をどなったりものを投げたりすることもあります。
一方でしばらくして感情が安定すると、何事もなかったように落ち着くこともあります。
では、発達障害のお子さまの感情が爆発する背景を見ていきましょう。
注意欠如・多動症(ADHD)のお子さま
注意欠如・多動症(ADHD)のお子さまが持つ特性の1つとして、「衝動性」(自分の「言いたい」「こうしたい」という言動をコントロールするのが難しいこと)が挙げられます。
この衝動性が、周りの目には「ほかの子と比べて、ちょっとしたことでカッとなりやすい」と映るケースはよく見られます。
自閉症スペクトラム(ASD)のお子さま
自分がこだわっていることに対して「ジャマされた」と感じたり、「できるはずなのにうまくいかなかった」と感じたりした際に、感情を爆発させるお子さまがいます。
また、感覚に敏感さがある場合、「笛の音が聞こえている」「蛍光灯がチカチカしていている」など、お子さんが感覚的に苦手な状況にさらされるとストレスが高まり、ちょっとしたことで感情が爆発してしまうことがあります。
具体的には、「大切にしているものを勝手に触られた」「好きなものをけなされた」「嫌いな音や匂いを感じた」といった状況が起こると、かんしゃくを起こすケースがあります。
感情のコントロール方法とサポート
感情のコントロールがうまくいくようになると、周りの友達や先生とよりよい関係を築きやすくなります。
ここでは、「感情が爆発した・しそうなとき」と「感情が少し落ち着いてから」の2段階に分けて、保護者のかたがしてあげられるサポート方法をご紹介します。
さまざまな対処法を試していくことで、お子さまに合った感情のコントロール方法を見つけていきましょう。
お子さまの感情コントロールがうまくいけば、保護者のかたも安心できる場面が増えてくるのではないでしょうか。
爆発したとき・しそうなとき
お子さまが感情を抑えられなくなったとき、「やめなさい」などと押さえつけるのは逆効果になる場合が多いもの。
基本的には、以下のように「怒りの感情から気をそらす行動」を促すのがおすすめです。
・ネガティブな感情を引き起こすものから一緒に離れ、別室に連れて行く
・ぬいぐるみなどお気に入りのグッズを用意しておき、「さわってみようか」と促す
・好きな飲み物を飲んで一息つく
・お気に入りのおもちゃで遊んだり、動画を見たりする
「この方法でうまくいった」というノウハウを、日頃からいくつかためておくと、お子さまが感情的になった際にも、落ち着いて対処しやすくなります。
そして落ち着いたら、そのことをほめてあげてください。
落ち着いているとき
「自分がどのようなときに感情が爆発しやすいか」をお子さまが知っておくことも、コントロールにつながります。
お子さまが落ち着いているときに、イライラのきっかけ(作業が思い通りに進まなかったとき、自分の文房具を触られたときなど)を一緒に見つめてみましょう。
また、イライラした際に、どうしたらよいのかという具体的な行動(水を飲む、先生に言いに行くなど)を伝えてあげるのも効果的です。
また「悔しかったね」「辛かったね」「イライラしたね」など自分の気持ちを言葉で表現できるよう、声かけをしてあげましょう。
感情を言葉で伝えられるようになると「悔しい」など、行動でなく言葉で吐き出せるようになります。
【体験談】みんなはどうしている? 子どもの感情との向き合い方
お子さまの感情爆発が続くと、それに対応していくのはなかなか大変なもの。
ここでは保護者のかたがお子さまをどのようにサポートしているのか、体験談をお届けします。
感情のコントロールがうまくいかないときのヒントになさってください。
千葉県
小2保護者 うどん
怒りっぽい子だけれど、楽しいことが大好きな面もあります。そこで、「かんしゃくが起きそうだな」と感じたときには冗談を連発して、気分をそらすようにしています。
岡山県
小6保護者 ぱぴこ
小学校入学前からこだわりの強さが目立つようになり、そのせいできょうだいゲンカが増えました。接していく中で「何かを勝手に決められるのがイヤなんだな」と気づき、何事も大枠だけ決めたらあとは自由にやらせています。
神奈川県
小4保護者 カピさん
モノの置き場を決めできるだけ変えないことを心がけています。子どもはこだわりが強く、自分が決めた場所にモノがないと怒り出してしまうため、固定するようにしました。勉強や学校の準備などがスムーズにいくようになりました。
宮城県
小1保護者 みほ
かんしゃくがひどいときは窓から外に出ようとして危ないので、カギを必ずロックして安全を確保しています。安全な環境をつくったうえで、かんしゃくを起こしてもそっとしておくのを習慣にしたら、だんだん怒る回数も減ってきました。
まとめ & 実践 TIPS
そもそも感情表現は、お子さまの成長にとって、とても大切なことです。自分の喜怒哀楽が表現できることは情緒を豊かにしますし、相手の感情を受け止めることで、相手の気持ちを推し量れるようになっていきます。
しかし、感情が爆発するように出てしまうと、周囲とのコミュニケーションも取りにくくなってしまうことがあります。
感情のコントロールが難しいお子さまをサポートする毎日の中では、「この前はうまくいったのに、今日は怒りが収まらない…」といったこともあります。
それでも、怒ったり泣いたりする理由・背景を知り、お子さまにあったサポートをしていくことで、少しずつ感情の爆発は落ち着いてくるでしょう。
保護者のかた自身も、ときに「もうムリ!」と思うときもあるかと思います。
怒ってしまうのは、自然なこと。
少しでも気持ちが落ち着いているときに、「ちょっとでもうまくいけばいいかな」というくらいに思っておき、お子さまも保護者のかたも無理なく取り組める感情のコントロール方法を見つけていきましょう。
監修者
山﨑衛やまざきまもる
マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。