2013/11/13
第1回 : 学校外教育費の支出格差はどのようなタイプの活動から生じるか?[1/4]
都村 聞人
東京福祉大学 教育学部 専任講師
つむら・もんど●京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は教育社会学。最近の業績として、翻訳(共訳)『豊かさのなかの自殺』(Ch・ボードロ、R・エスタブレ著、藤原書店、2012年)、著書(共著)「教育投資の規定要因と効果—学校外教育と私立中学進学を中心に」(佐藤嘉倫、尾嶋史章編『現代の階層社会[1]格差と多様性』、東京大学出版会、2011年所収)など。
つむら・もんど●京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は教育社会学。最近の業績として、翻訳(共訳)『豊かさのなかの自殺』(Ch・ボードロ、R・エスタブレ著、藤原書店、2012年)、著書(共著)「教育投資の規定要因と効果—学校外教育と私立中学進学を中心に」(佐藤嘉倫、尾嶋史章編『現代の階層社会[1]格差と多様性』、東京大学出版会、2011年所収)など。
1.はじめに
従来、学校外教育費の分析においては、調査データ上の制約から、塾、家庭教師、通信教育などの学習系の学校外教育とスポーツ、芸術などの習い事系の学校外教育をまとめて分析することが多かった(都村・西丸・織田(2011)など)。そのため、学校外教育の実態の詳細を把握することは困難であった。
ベネッセ教育総合研究所が2009年と2013年に行った「学校外教育活動に関する調査」(以下、2009年調査、2013年調査と呼ぶ)は、学校外教育活動を「スポーツ活動」「芸術活動」「教室学習活動」「家庭学習活動」に分類し、それぞれの活動別に活動経験、活動頻度、支出額等を調査している。「学校外教育の測定を精緻化」し、「子どもの活動を網羅的に調べた」(片岡(2010))ことにより、子どもの活動パターン別の分析が可能となっている。
そこで、本稿においては、「学校外教育費の支出格差はどのようなタイプの活動から生じるか」という問題にアプローチしてみたい。具体的には、(1)学校外教育活動のタイプによる学校外教育費の支出格差はどれぐらいか、(2)どのような活動が学校外教育費の格差を生んでいるか、(3)所得階層による学校外教育費の格差に、学校外教育活動のタイプはどのように影響しているかという点を考察したい。
なお、2013年調査は、3歳~18歳(高校3年生)の第1子を持つ母親に対して、インターネットにより調査を行っている。各学年について、男子をもつ母親515ケース、女子をもつ母親515ケースを対象とし、合計16,480ケースとなっている。
2.学校段階による活動タイプの変化
2009年調査を分析した片岡(2010)は、「スポーツ活動」「芸術活動」「教室学習活動」「家庭学習活動」の経験の有無をもとに、活動パターンを16タイプに分類している。本稿も片岡の分類に従って、タイプ分けを行い、分析したい。
表1は、学校段階別に活動タイプの構成割合をみたものである(注1)。未就学児においては、家庭学習活動のみのタイプ⑧が32.6%ともっとも多く、次いで家庭学習活動にスポーツ活動を加えたタイプ⑥が多くなっている(16.3%)。また、いずれの活動も行っていないタイプ⑯も1割程度いる。小学校1-3年生になると、家庭学習活動とスポーツ活動を軸としたタイプ⑥、タイプ②が全体の約3割を占め、全活動ありのタイプ①も8.6%と増加している。小学校4-6年生では、依然としてタイプ②、タイプ⑥、タイプ①が多いほか、教室学習活動とスポーツ活動を行うタイプ⑩も8.1%に増加している。
中学生になると、家庭学習活動・教室学習活動・スポーツ活動を行うタイプ②が20.0%ともっとも多い。本調査においては、部活動もスポーツ活動に含めているため、スポーツ活動の経験率が高いものと思われる。高校生においては、いずれの活動も行わないタイプ⑯が15.8%ともっとも多くなっている。
学校段階が進むにつれて、活動タイプも変化していることがわかる。
注1)2009年調査の結果については、片岡(2010)を参照してほしい。ただし、2013年調査では家庭学習活動について「知育玩具」「絵本」「幼児向け雑誌」「学習雑誌」「知育・教育のアプリ」を新設しており、本稿ではこれらの項目を含んだ分析を行っているため、単純な比較は行えない。また、本稿の「高校生」には、2013年調査で新たに調査対象となった高校3年生を含んでいる。