2017/05/24

[特別編:3] 主体的な学びを促す指導をアクティブ・ラーニングの視点から考える(座談会2 前編) [4/4]

生徒が学びに向かうための土台をつくる

 山田:生徒にアクティブ・ラーニングを実施する意図を伝える際、私は自分の経験を基に説明しています。私は民間企業に勤めた経験があり、海外で教育関連の仕事をしていました。オーストラリアなどの学校では、生徒が主体となり授業を行うのが一般的であるため、将来はそうした学びを経験し、自分の意志をはっきり伝えてくる人たちと渡り合う必要があることなどを伝えています。
 そうした話は年度始めにするのですが、生徒は忘れてしまうこともあるので、活動の度に思い出させるようにしています。何度も話したので、生徒は頭では理解してくれているようです。今後は、国際交流などの体験を通じて実感する機会を持たせたいと思っています。
山田翔一郎先生
 石塚:本校には、中学校時代に学習に苦労し、学習する前から「どうせ自分にはできない」と考えてしまう生徒もいます。そうした生徒が「やってみよう」と学習に前向きになれるよう、例えば、事前に課題ごとの到達基準を明確に伝え、目標意識を持たせるような工夫もしています。
 松下:本校の国語では、答えが1つではない課題に協働的に取り組む学習などにも取り組んでいますが、その一方で授業の冒頭の5分間ほどで、古典文法や速読的なことを反復的な練習することの導入を検討しています。協働的な学習の土台となる基礎的な知識をしっかりと身につけておく必要があると考えているからです。

個々の教師の先進的な実践を、いかに学校や地域で共有していくか

片岡達郎先生
 片岡:私は、茨城県の教頭会の研究部会で、県内高校のアクティブ・ラーニングの実態調査に携わっています。26校へのアンケート調査では、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業を行っているのは23校で、そのうち組織的に行っているのは3校にとどまりました。実践上の課題に挙がったのは、話し合いが苦手な生徒への配慮が必要なこと、教師が指導に不慣れであること、授業に時間がかかることの、大きく3点です。
 校内でアクティブ・ラーニングが広がっている高校では、学校長主導で進めている学校だけでなく、校内に中心となるグループがあり、自主研修で浸透させている学校もありました。今後、アクティブ・ラーニングを充実させていくためには、校内に自主研修に取り組む集団をつくり、その活動を支援し、さらに学校間の情報共有を促していくことが大事になると考えています。
 松下:これまで、校内にアクティブ・ラーニングの実践を広げていくために、その必要性や効果について、国の教育改革の動向を踏まえて丁寧に説明することを意識してきました。本校では、ベテラン教師も積極的に授業改善に取り組んでおり、一斉授業が中心という教師の方が少ない状況です。今後は、教科や分掌を超えた連携を強め、全校の取り組みとしていきたいと考えています。新しい組織をつくるというよりも、既存の組織を有効活用して、全校に広げていく方策を模索したいと考えています。
—— 次回、後編となる実践編では、3校における具体的な取り組みを紹介する。
※ベネッセ教育総合研究所では、これから求められる資質・能力とその指導・評価に関する研究を行っています。【アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究】