2017/05/24

[特別編:3] 主体的な学びを促す指導をアクティブ・ラーニングの視点から考える(座談会2 前編) [3/4]

目的や学びたいことを起点とした探究学習のよさ

 佐々木:「第6回学習指導基本調査」の結果を見て、総合学科では、探究学習・課題解決型学習の実施率が、普通科などに比べて有意に高いことを知りました。
 片岡:総合学科では、学びの目的が社会とつながりやすいので、探究学習・課題解決型学習が充実しているのだと思います。総合学科を有する多くの高校では、生徒が各々のテーマに沿って課題研究を進め、最後に発表するという活動を行っています。
 松下:本校は、文部科学省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けています。1年生は「熊高ゼミ」という探究的な活動を行い、論理的思考力や発信力の育成を目指しています。教師がそれぞれテーマを掲げてゼミを開講し、生徒は希望するゼミに所属して研究テーマを設定し、1年生の最後にプレゼンテーションを行います。
 研究テーマは生徒自身が決めるのですが、1年間を通して深めていけるテーマとなるよう、テーマ設定時に目的意識を持たせることが非常に重要です。私の場合、「伝える」を多角的に考えるというテーマで開講し、何をやってもよいとしましたが、最初のガイダンスでいくつか具体的な事例を挙げて、生徒の興味を広げました。
佐々木宏先生
 佐々木:東京都立の高校と中等教育学校では、2016年度から、学校設定教科「人間と社会」が必履修科目となりました。1年生で履修する高校が多く、ボランティアなどの校外体験活動とアクティブ・ラーニング形式を活用した授業をあわせて行うこととなっています。具体的な授業内容は各校に任せられ、NPO法人などと協働するケースが多く見られます。本校では、学ぶことや働くことの意味を考えたり、2030年の社会をイメージしたりする授業を行っています。1年生の担任と、1~3年生の副担任が授業を担当していますが、アクティブ・ラーニング形式の授業に慣れていない教師もいるため、具体的な授業イメージを持てるように、時間配分や台詞などの進行を具体的に示したスクリプトを用意しています。これまで講義形式で授業を行うことが多かった教師からも、「生徒が楽しそうに学んでいる」といった感想がよく聞かれ、教師自身もアクティブ・ラーニングの視点を取り入れるきっかけになっているようです。実際にやってみて「時間内に終わらなかった」という感想もありますが、多くの場合は教師自身が話し過ぎてしまうことが原因のようです。
 山田:私は、英語の授業にジグソー法を始めとした協調学習を取り入れています。これまでの経験を通して、協調学習を効果的なものにするためには、行う目的を十分に生徒に理解させてから授業を行うことが大切と感じています。
 十分な基礎学力がない生徒が多い高校では、コミュニケーションがうまく取れない、苦手な生徒と一緒になりたくないといった理由でグループ学習を嫌がる生徒が見られました。そうした生徒自身の課題を克服するためにも、授業に協調学習を取り入れる意義は大きいのですが、生徒が目的を見失うと、なぜ話し合いをしているのかが分からなくなってしまいます。一方、学力の高い生徒が多い高校では、自己主張やコミュニケーションが得意な生徒が多く、議論は活発になる傾向があります。その半面、大学入試対策をしっかりしてほしいと考える生徒もいますので、やはり目的を伝える必要があります。