進む「生成AI」の浸透
子どもたちは、どうつきあえばいいの?

ChatGPTなど、「生成AI」の登場により、子どもたちを取り巻く情報環境は、また一段変化が大きくなりそうです。従来のAIのように、既存のデータからの判別や予測などをするだけでなく、「生成AI」は、特別な技術がなくても、簡単な問いかけに対して、新しい文章・画像・音声・動画を自動的に生み出してくれる便利な技術です。子どもたちは、「生成AI」にどう向き合っていけばいいのか、広島工業大学の安藤明伸教授にお聞きしました。

この記事のポイント

使い方しだいで、学びを深めるきっかけに!

ゲーム、動画視聴と同様に、「生成AI」といつからつきあうかを、各ご家庭での判断が必要になりそうとのこと。保護者に頼ってくれる思春期前の段階(小学校中高学年)のうちに、お子さまの性格・能力に合わせて、保護者が関与して、有効な使い方を教えてあげるのが、安藤先生のおすすめ。「生成AI」に何をどう問いかけるのか見ていくと、思考のプロセスやものの考え方を見る機会となり、問いを整理するトレーニングになります。さらに、好きなことについてより広く深く知ることができ、新たな体験をすることも可能です。一方で、生成AIの回答は必ずしも正しいとは限らず、複数の情報源を調べる必要性も知っておくべきです。また、ゲームは時間を奪うだけでしたが、「生成AI」は、考えるという知的な行為自体を奪う可能性もあるのだそうです。

■知りたいことを言語化して問うトレーニングに =学びが深まる。
■思考停止しても、答えを導けてしまう     =考えない子・学ばない子に育つ。

向き合い方により、「生成AI」は学びを深めるツールにも、思考を奪う道具にもなりえます。
最初はご家庭で一緒に使ってみるのがよいとアドバイスをいただきました。

「イライザ効果」って知ってますか?

「イライザ効果」という言葉を聞いたことがありますか? AIが人間と自然な会話を行うことで、あたかも本物の人間と会話しているように錯覚してしまう心理現象です。この効果により、誤情報を信じ込んだり、AIに恋愛感情を抱き依存してしまったりする可能性があります。やりとりの中で、子どもが自分自身の悩みや個人情報を、不用意に流出してしまうリスクもあります。AIのしくみや特性を知っておくことは、のめり込む前の小学生にとって特に重要です。知識の有無が、AIとの関わり方や依存度を大きく左右するとのことでした。

小学生のうちに、情報とどう向き合うのか、どういうリスクがあるのかを、自分のこととして、学ぶことは大切。「進研ゼミ プログラミング講座」でも、プログラミングを学ぶだけでなく、情報モラル・セキュリティについても、身近なテーマで学ぶカリキュラムをご用意しています。

まとめ

「生成AI」は、知る楽しさ、学ぶ楽しさ、そして自らの思考と向き合う楽しさを通じて、自己成長を促す可能性を秘めています。しかし、その一方で、しくみを知らずに安易に頼りきってしまう危険性も理解しておく必要があります。 今後の社会において、新しいデジタル技術を「知って使いこなす」人材は一層求められます。危険があるからと安易に避けるのではなく、早い段階で生成AIの特性を深く理解し、将来、適切かつ効果的に使いこなせるよう、学習していくことが重要です。

プロフィール



中学校の技術科教員、宮城教育大学での勤務を経て、広島工業大学の情報学部 情報システム学科 教授に着任。中央教育審議会の情報ワーキンググループ委員、文部科学省のプログラミング教育に関する手引の作成委員などの経験もあり。学校現場におけるプログラミング教育の重要性を唱え、プログラミング教育やSTEAM教育に関するテキストの執筆や監修も多数。

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