EdTechが導入される理由とは 導入によって日本の教育へ期待できる変化

今、教育領域はEdTechの導入によって、大きな変化を遂げようとしています。この記事では、EdTechが導入される理由や期待できる変化についてご紹介します。今後大きく変わる教育領域について知りたい方はぜひ読んでみてください。

この記事のポイント

EdTechとは?

EdTechとは、Education(教育)とTechnology(テクノロジー)をかけた造語です。

文部科学省は、EdTechを「教育におけるAI、ビッグデータなどの様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取組」としています。

現在に至るまで、様々な領域でテクノロジーが取り入れられてきましたが、ついに教育領域にもテクノロジーを取り入れることで、教育領域のイノベーションが期待されています。また、教育格差を解消するための手段としても注目を集めています。

e-Learningとの違い

e-Learningは、EdTechの前から教育領域において話題になっており、皆さんも耳なじみがあるでしょう。e-Learningとは、インターネットを使った学習形態の1つで、パソコンやタブレット、スマートフォンを活用し、時間や場所にとらわれず学習する方法です。

このように、e-Learningは学習システムのことを指し、EdTechはe-Learningをも含めた、テクノロジーの力で教育領域にイノベーションを起こす取り組み全体のことを指しています。

MOOCとの関係

MOOCとは、インターネットを活用して行われる大規模公開のオンライン講座のことで、世界中の大学の講義が無料で視聴可能です。

MOOCは、EdTechの代表的な存在と言われています。日本でも、JMOOCが2013年に設立され、無料のオンライン講座が提供されています。

出典:JMOOC組織概要|日本オープンオンライン教育推進協議会
参照:https://www.jmooc.jp/about-us-2/

EdTechのメリット

今注目を浴びているEdTechですが、EdTechのメリットはどういったものがあるでしょうか。EdTechのメリットについて、5つご紹介しますので参考にしてみてください。

端末があればいつでも学べる

EdTechは、世界のどこに住んでいても、端末さえあればいつでも自由に学ぶことができます。

これは、住んでいる場所による教育格差を生まないことにつながります。よって、政府は子どもの頃からインターネット環境になじませるため、1人1台の端末を備えた学校の在り方を推進しています。

災害対策になる

新型コロナウイルスによる休校や、地震による休校など、今までは災害による教育の遅延や学習量の差という問題が度々起きていました。

しかし、EdTechを活用すれば、ウイルスの終息や交通機関の復旧を待たずに、子どもに学習をさせることができます。そのため、EdTechは、災害対策にもなるといえます。

個人ごとにカスタマイズされたカリキュラム提供ができる

今までの教育は、画一的なカリキュラムに基づき、一律の内容を一律のペースで、一斉に学ぶものでした。しかし、子どもによって、能力や特性、興味があるものは様々です。

これからの教育は、個人の学習データを蓄積・解析し、個人ごとにカスタマイズされたカリキュラムで学習することを目指し、動いています。

教師と生徒間の交流が気軽にできるようになる

EdTechの活用によって構築される学習環境は、質問やディスカッションなどもプラットフォーム上で実現するため、教師と生徒の間で双方向の交流が気軽にできるようになります。

また、授業準備や採点・評価、報告書の作成、保護者対応など、EdTechによって自動化やデジタル化が促進されるため、教師が生徒と交流する時間を今まで以上に獲得できるようになることもまた、教師と生徒間の交流が気軽になる一要因と言えるでしょう。

場所や時間に拘束されずに学べる

場所や時間に拘束されずに、自分が好きなときに学ぶことができます。途中で中断されてしまっても、そこから改めて見直すことも可能です。

また、場所を拘束されないことで、今まで学習機会をどう提供していくかが課題であった不登校の子どもたちも、自宅で学習が続けられるようになります。

EdTechが導入される理由8つ

では、日本でEdTechの導入が注目され、促進されている理由は何でしょうか。政府がEdTech導入により実現したいことをもとに、その理由を8つご紹介していきます。

【1】経済産業省による「未来の教室プロジェクト」の実現のため

時代の変化とともに、求められる能力が変化したり、新しい教育を可能にする技術が登場したりしています。

経済産業省による「未来の教室プロジェクト」では、子どもたちが未来を創る当事者になるための教育環境づくりを計画しています。

未来の教室プロジェクトでは、学びのSTEAM化、学びの自立化・個別最適化、新しい学習基盤づくりの3つを柱としています。これらの実現に、EdTechは切っても切り離せないものなのです。

出典:未来の教室|経済産業省
参照:https://www.learning-innovation.go.jp/

【2】文部科学省による「GIGAスクール構想」の実現のため

GIGAスクール構想とは、子どもたちが公正に個別最適化され、資質・能力を育成できる教育環境を実現する、というものです。

そのために、ICT環境の整備、ソフトの充実、指導体制の強化の3つを柱としています。よって、GIGAスクール構想の実現もまた、EdTechと密接につながっているのです。

出典:GIGAスクール構想の実現について|文部科学省
参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

【3】アダプティブ・ラーニングへの関心向上のため

アダプティブ・ラーニングとは、子どもの能力や特性、興味に合わせた最適な教材を届けることです。

従来の、一律の内容を同じ順番で学んでいく学習方法は非効率で、子どもの得意不得意が可視化できないため、指導も教師の能力に頼っていました。アダプティブ・ラーニングでは、子どもたち一人一人に応じた効率のよい学習指導が可能になります。

このアダプティブ・ラーニングを可能にしているのが、AIなどのテクノロジーの発展です。子どもたちの膨大な学習データを分析し、学習傾向や学習姿勢を明らかにすることで、一人一人に適した教材を届けることができるのです。

【4】プログラミング教育が必修化されたため

小学校では2020年から、中学校では2021年から、プログラミング教育が必修化されました。小学校では、専門科目として独立しているわけではありませんが、情報活用能力が言語能力と同様に学習の基盤となる能力として位置付けられたのです。

テクノロジーが急速に発展する時代を生きている子どもたちには、その時代に合った教育を提供していく必要があります。

出典:新学習指導要領のポイント(情報活用能力の育成・ICT活用)|文部科学省
参照:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf

【5】教師の長時間労働を改善するため

EdTechの導入は、教師の長時間労働の改善にもつながります。なぜなら、今まで属人化していた様々な教務・校務がテクノロジーによって削減できるからです。

たとえば、授業準備や採点・評価は自動化が可能です。また、他教師や教育委員会、保護者とのやり取りのデジタル化、報告書の電子化や業務量の平準化など、削減できる業務は多岐にわたります。

【6】都心と地方の格差をなくすため

従来の学習スタイルでは、受けられる教育は自宅から通える範囲によって制限を受けていました。教育レベルの高い学校や教師は、都心に集まる傾向にあり、地方では高いレベルの教育や子どもに合った教育は受けづらかったのです。

しかし、EdTechの活用で、住んでいる場所による教育の制限はなくなり、都心と地方の教育格差が改善します。

【7】受動的な一斉授業からの脱却のため

教師が説明する一律の内容を、一斉に受ける授業では、創造性や積極性はなかなか育たず、子どもたちは受動的な態度になってしまいます。

しかし、EdTechの活用は、子どもたち一人一人に適した学習が提供できるため、能動的に学ぶことができ、受動的な一斉授業からの脱却につながります。

【8】個性を認め合う学習スタイルの確立のため

従来の学習スタイルは、「集団」や「みんな一緒」、「チームワーク」が大きな意味を持ち、一律・一斉・一方向型の学習でした。これには、個性をつぶしてしまうというデメリットがあります。

EdTechの導入により、子どもたちの能力や特性、興味に応じた学習ができるようになることで、個性を認め合う学習スタイルが確立できます。

EdTech導入による日本の教育へ期待できる変化3つ

日本政府は、EdTech導入に力を注いでいますが、この導入に伴い、日本の教育はどのような変化が期待できるのでしょうか。EdTechによる期待できる変化を3つ見ていきましょう。

【1】タブレットやノートPCが学習基盤になる

文部科学省のGIGAスクール構想では、3つの柱のうちの1つとしてICT環境の整備を掲げ、1人1台の端末の整備を進めています。

これは、主体的な学習や学習データの蓄積、教師や子どもたち同士のコミュニケーションなど、今後のEdTechの環境に対応していくためです。よって、タブレットやノートPCが今後の学習基盤になるでしょう。

【2】個別最適化の学習法が確立される

EdTechの導入によって、子どもたちの学習データを蓄積・解析できるようになります。そして、そのデータをもとにすることで、個人の能力や特性に応じた、個別最適化の学習法が確立可能になるのです。

【3】STEAM教育が進む

STEAM教育とは、科学(Science)、 技術(Technology)、 工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)を統合し、各教科での学習を実社会の課題解決に活かしていくための教育のことです。

このSTEAM教育は、論理的思考力や問題解決能力を身につけることを目的としています。

EdTechは、STEAM教育を促進します。学びをSTEAM化し、その学びを蓄積・解析、そして個別最適化した学習を提供するというサイクルが、経済産業省が提言する「未来の教室」の姿です。

出典:LEANING INNOVATION|経済産業省
参照:https://www.learning-innovation.go.jp/

EdTechの考え方を理解して教育環境の変化を読み解きましょう

今後、教育環境も、テクノロジーの活用によって、大きな変化を遂げていくでしょう。その変化を読み解くためには、EdTechの考え方の理解がまず必要です。新たな教育環境の到来に向けて、知識を蓄えましょう。

[参照元]

『Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性』(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/06/20/1406021_18.pdf

『「GIGAスクール構想」の上で描く「未来の教室」の姿』(経済産業省)

https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

『未来の教室』(経済産業省)

https://www.learning-innovation.go.jp/

『新学習指導要領のポイント(情報活用能力の育成・ICT活用)』(文部科学省)

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000022.html

『「未来の教室」ビジョン』(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mirai_kyoshitsu/pdf/20190625_report.pdf

『新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育についてー「総合的な探究の時間」と「理数探究」を中心にー』(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf

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