運動をすると頭の働きがよくなる、ということがいわれるようになり、科学的にも裏付けがされています。運動することで、健康で元気になり、頭の働きもよくなるとしたら、まさに一石二鳥。スポーツの秋、子どもが楽しく身体を動かし、運動能力と脳の発達を同時に促していける動きをご紹介します。
運動は健康で丈夫な身体をつくりますが、それだけではありません。子どもたちが夢中で身体を動かしている時、脳ではシナプス同士がパチパチと光を放ちながら「興奮」状態に入ります。楽しい!と「正しく興奮」できると、同時に考える力や行動をコントロールする脳の「抑制機能」も発達し、集中力を高めるのです。鬼ごっこやしっぽ取りのような遊びも、目的を持って活動することで脳の「実行機能」を育てます。
また、人間の脳はバランスよく全体的に発達するのではなく、順を追って発達していきます。脳は、「脳幹(生命維持の脳)」「大脳辺縁系(動物の脳=感情・本能の脳)」「大脳皮質(ヒトの脳=認知・知性の脳)」という3層構造になっていて、脳の発達には順序が大切といわれています。
「運動野」は大脳皮質にあり、幼児期にまず発達するところなので、運動することによって脳の発達が進むといえるでしょう。
出典:『5歳からの最新! キッズ・トレーニング』(KADOKAWA)
運動能力を高めるために、次の5ステップに分けて考えています。
身体を動かす力をつける9つのパーツ体操で、身体のつくりを認識し、上手に身体を操る感覚を育てる |
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身体の使い方を知る6つの運動感覚を通して、全身を協調して動かす感覚を高める |
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運動パターンを経験する12の運動機会を知り、いろいろな運動体験を重ねて身体の使い方を覚える |
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運動学習スキルを高めるスポーツで自分のフォームを知る |
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目的を持って運動に取り組むスポーツや芸術活動に取り組む |
以下では、このうち基本となるステップ1~3のカテゴリーから、「ワーク(動き)」をいくつかご紹介します。
身体を上手に動かすために、まずは関節やパーツの特徴を知ることが大事です。トレーニングのウォーミングアップでは、手、ひじ、肩、胸、お腹、背中、ひざ、足首、足指の9つのパーツそれぞれで体操を行っています。自分の身体のつくりを認識し、場所ごとに動かせるようになることが目標です。
ここでは、「手」と「足」から一つずつワークを取り上げます。全身には200ほどの骨がありますが、片手には27個の骨があり、足(くるぶしから下)もほぼ同様なので、両手両足を動かすことで、身体の骨格のおよそ半分を動かすことになります。
【手】グーパーワーク
手を「グー」で握って、「パー」で開く、を繰り返す。親指と薬指をできるだけ広げるように意識する。
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指や手をしっかりと丁寧に動かすことで、脳の血流が上がります。同時に腕の曲げ伸ばしもすると、背骨がしっかり立つので、机に向かっている時に姿勢が悪い子どもにも効果あり。
【足】足指にぎにぎ
座った状態で、足の指を1本ずつ握る。足の指の根元から動かすことを意識し、気持ちよくほぐれるまで行う。
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足裏には「固有受容器」というセンサーが数多くあり、足裏から受け取った情報を脳にフィードバックして、身体全体のバランスを取っています。
次に、全身を協調して動かすために、6つの運動感覚を知りましょう。トレーニングでは、ゆする、振る、通す、回す、ノる、続ける、を意識していますが、最初の4つで走る動作やボールを投げる動作になります。そしてリズムに「ノる」、同じ動作を「続ける」ことで、記憶の保持力や心肺持久力を高めることにつながります。
ここでは、基本の「ゆする」と「振る」から、運動会の徒競走にも役立つワークを紹介します。
【ゆする】全身をゆする
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子どもに「力を抜いて」と言ってもできませんが、身体をゆすることで、力を抜く感覚を覚えることができます。力を抜くことができて初めて、力を入れることが可能になるのです。また、緊張をほぐし、集中力を高める効果があります。
【握る】バイバイワーク
腕を伸ばして手をバイバイのように振る→ひじを曲げてバイバイ→走る時の腕振りを行う。
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「振る」は、遠心力を使う動きです。遠心力を使う感覚を覚えることで、腕をしっかりと振ることができ、走る、ボールを投げる、といった動きが格段によくなります。
コロナ禍もあり、運動機会の減少がいわれています。人間は、いろいろな動きを身体で記憶していないとできないので、ケガを防ぐためにも、小さいころからさまざまな運動パターンを経験させておきたいところです。
12の運動機会として、転ぶ、倒れる、支える、逃げる・追いかける、駆け上がる・下りる、押す・引く、よける、切り返す、触る、投げる、捕る、打つ、と整理していますが、パターンを意識することで、「駆け上がる動きを最近していないな」と思ったら階段や坂を駆け上がってみるなど、日常の中で意図的に機会をつくっていくとよいでしょう。
ここでは「転ぶ」と「支える」のワークをご紹介します。
【転ぶ】だるまさんワーク
足裏を合わせて両手でつかみ、そのまま後ろに転がる。背骨を丸めて転がった勢いでまたもとに戻す。真後ろに転がることができるようになったら、ななめ後ろ左右にも。
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背中の感覚は、実際に使わないと育たないので、転がることで広い背中の面を感じ取ることができます。上手に「転ぶ」ことは、ケガ予防にもつながります。
【よける】人混みスルスル
街中で、人をよけながら歩く。よける対象と的確な距離を取り、タイミングをつかんで動くことを意識する。
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「何かを見ながら身体を操作する」ことも、意識的に訓練する必要があります。何かが向かってきたり、落ちてきたりした時に、見ることだけにとらわれて足が止まってしまうことがないよう、「見る」と「動く」を連動させましょう。