「子どものため」と親の希望・都合を押し付けていませんか?
今まではうまくいっていた言葉かけや関わり方が、最近子どもに響かなくなったな、と感じることはありませんか? それはもしかしたら、「子どものため」と言いながら、親の希望・都合を無自覚に押し付けていることが原因かもしれません。
子どもは成長と共に自分で考えて判断するようになり、親の手を離れていきます。親からしてみれば、その姿が反抗的に感じられたり、要領が悪いと感じられたり、だらしなく見えたりすることもあるかもしれません。でも、それが当たり前の成長なのです。親の手から離れようとする子どもの手を引き止めるのではなく、離して見守れるようになりましょう。この特集では、そのヒントとなる子どもの心に届く関わり方について、解説します。
小学校中学年は、自分の考えを言い始める時期
親の価値観・考えの中に子ども自身を同居させてもらっていた状態、「私」が育ちきっていない状態から、自分の言いたいことを言い始め、自分で考え始める時期です。親の言うとおりにさせたほうが、時間もかからず、スムーズで楽だと思うかもしれませんが、そうすると、いつまでも自分で考えたり、意見を持てたりしないまま思春期に突入してしまいます。この時期に、自分で考え、自分の意見を持ち、言葉に出せるような環境を意識しましょう。
小学校高学年は、自分の考えで行動し始める時期
「私の考え」が出てきて、1人の人間として、「私はこうである」という認識が育っていく時期です。宿題をいつするのか、どのタイミングでお手伝いをするのかなど、あらゆることに対して自分の意見を持ち、自分が考えたペースでするようになりますから、親は任せていきましょう。ただし、任せ始めると、子どもが忘れることもあります。そんな時は、「洗濯物、まだ畳めていないよ」など、忘れていることだけを思い出させる声かけをするのがポイントです。行動を押し付けるのではなく、自分で判断ができるようなサポートを心がけましょう。
親が子どもに対して、ついやってしまいがちな、NG行動・言動は何か、どのように改善すればいいのかを紹介します。
子どもが興味を持ったことに先回りしてしまう
子どもが何に興味を持っているかを観察することはとても大切ですが、親が先回りしすぎるのはNG。「興味を持って試してみたけれど、ちょっと違った」という経験は、おうちのかたもあるはず。すぐに教室に入れようとしたり、情報や物を過剰供給したりしてしまうと、もし子どもが「やっぱりやりたくない」と言った時に、過剰に「どうして?」と反応して、子どもが興味・意欲を失ってしまう恐れがあります。
子どもが興味を持ったことを、親も興味を持って一緒にやってみましょう。たとえば、サッカーに興味があるのなら、すぐに習い事の教室に入れるのではなく、親子で一緒に本や動画を見たり、ボールを蹴ったり試合を観戦するなど、興味の入り口で十分に体験させること、想像をいっぱいさせることが大切です。
うちの子はゲームばかりしていて、他に好きなことがなさそうに見える、という場合も、そのゲームの何が好きかはいろいろあるはずです。子どもを観察して、「こういうところが好きなんだね」とコミュニケーションが取れれば、コツコツと建造物などを作り上げるのが好きそう、ストーリー性のあるものが好きそう、などわかってくるでしょう。その好きの傾向から、新しいことに興味が広がることもあるのではないでしょうか。どんなジャンルでも、子どもが興味を持っていることに対して、夢中になれるよう、サポートができるといいですね。
親の言うことを聞かせようとする・つい口を出してしまう
子どもについ「宿題をやりなさい」「早くおふろに入りなさい」などと言ってしまいがちですよね。けれど、子どもは成長と共に、自分で考えて行動するようになりますから、親の希望するタイミングでやらなくなることも当たり前のことなのです。また、「叱られたからやる」で済んでいたものは、いずれ「叱られたからもっとやらない」に悪化してしまう可能性があります。そして、親から指示されて動くことに慣れてしまうと、子どもは自分で考えて判断・行動することができなくなってしまう恐れがあります。
親が子どもの意見を聞く努力、子どもの行動を待つ努力をすることが大切です。親からしてみれば、未熟な考えだと思うこともあるかもしれませんが、自分の意見を言わせることは、子どもの思考力を育てることにつながります。思考力が育ってくれば、「もうちょっとテレビを見たいけれど、それだと宿題をする時間がないな」など、自分のしたいことと、自分がしなければいけないことの間で葛藤できるようになり、自分で行動するようになります。いざ任せてみたら、失敗することだってあるかもしれませんが、その経験も糧になります。つい何か言いたくなる気持ちをグッとこらえて、子どもに任せていくよう心がけましょう。
親が悩みがちな子どもの言動・行動について、どうすればいいのかをアドバイスします。
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宿題など、今まではすぐに済ませていたものを「あとで」と言われるようになった。
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いったん、信じて子どもに任せましょう。それまでに宿題をすることが習慣づいているのであれば、「後でやる」と言ったらあとでちゃんとやる子の場合が多いからです。「後で」は必ずしも親に反発しているわけではなく、自分の中で見通しを立てて動けるようになった証拠です。
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親に頼まれたことをせず、親が怒ってしまう・結局やってしまう。
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親がやってほしいタイミングと、子どもがやろうとしているタイミングが違うことから起こる状況といえます。だからといって結局親がやってしまうことが続くと、いつまでも状況は変わりません。たとえば、自分の洗濯物を畳んでいないのであれば、「洗濯物を畳んでしまいなさい」ではなく、「畳んだ?」と思い出させる・子どもが自分で動こうとするような声かけをしましょう。
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行動がのんびりすぎて、いつもせかしているのに直らない。
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子どもによっては、のんびり屋さんもいます。その子はその子なりにがんばって急いでいるので、「早くしなさい」と言っても効果はありません。子どもの気質を理解して、我が子の「取り扱い説明書」を親が持つようにすれば、親子ゲンカも起きずお互いが気持ちよく過ごせます。
たとえば外出の際は「今日は7時25分出発の電車に乗るから、玄関に7時15分にフル装備で集合ね」など、最終地点はどこなのかを示してあげると、各自のペースに合わせ行動・準備ができ、スムーズに進むことが多いです。最初は何かを忘れた、というような失敗もあるかもしれませんが、忘れ物を取りに行く時間も含めて計画するなどして、訓練していくとよいと思います。
親が子どもについて悩んでいることの半分は、実は親自身の悩みです。子どもは、いいものに育っていこうという力・傾向があるので、その環境の中でいちばんいいように育ち、何とか自分で学んでいこうとするものです。あまり子育てをしようと思いすぎず、手を離すことを恐れずに、子どもに任せましょう。親が人生を楽しんでいれば、子どもは子ども自身で、大変な目に遭いながらも、人生を生きていくために自分で学んでいきます。あなたも子どもも、「十分すばらしい」のです。子どもだけに意識を向けすぎず、自分の人生を楽しんでくださいね。
イラスト/ヤマサキミノリ 取材・文/本間勇気