2023.11.22
【専門家・体験談】「手がつけられない」「しんどい」…子どもの癇癪(かんしゃく)、どうすればいい? つらいときの対処法も
大声で泣き叫んだり、手足をばたつかせて暴れたりする子どもの癇癪(かんしゃく)。
街中や公共の場でお子さまが癇癪を起こすと、「お子さまの気持ちに寄り添いたい、でも早く鎮めたい、どうしよう……」
など、さまざまな感情が混ざり、慌ててしまうこともあるかもしれません。
お子さまが癇癪を起こしたとき、どのように対応するのがよいのでしょうか。
ほかの保護者のかたの「つらいときの対処法」もあわせて、ご紹介します。
目次
監修者
![山﨑 衛](/kosodate/hattatsu/230919/img/yamazaki.png)
山﨑衛やまざきまもる
マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。
癇癪を起こすのは何が原因? 多くは成長の過程によるもの
![身振り手振りや大声で怒りを爆発させる子どもと、本を読みながら気持ちを落ち着かせる親](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_02.jpg)
癇癪とは、自分の要求が満たされないときや、不本意な結果が受け入れられないとき、衝動的に怒りの感情が爆発してしまうことをいいます。
感情を爆発させる原因はひとつではありません。
お子さまの癇癪には、脳の成熟度や社会性の発達、さらに体調の変動や生理的な不快感、環境の変化など、様々な要因が影響しています。
さまざまな要因が絡み合い、自分の感情をコントロールすることができなくなり、癇癪を起こすのです。
癇癪につながる要因の例
![友達とゲームをしていて怒りをあらわにする子ども](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_03.jpg)
癇癪は、乳幼児期によく見られますが、以下のような要因で、幼稚園や保育園、小学校に進学した後にも、まだまだ癇癪を起こすお子さんもいます。
・疲れや眠気、空腹
疲れがたまったり、眠くなったりすると、感情をうまくコントロールできなくなります。
また、お腹が減ると不快感を覚えやすくなり、ちょっとしたことで怒りっぽくなります。
・環境変化への不安、ルーチンの変更
初めての経験や知らない場所、騒がしい場所や人が多い場所、初対面の人との接触などで緊張や恐怖を感じると、感情が不安定になります。
また、生活環境やリズム、ルーチンが急に変わると不安を感じ、混乱することから感情的になりやすくなります。
・欲求不満
遊ぼうと思っていたおもちゃを誰かにとられてしまうなど、望むものが手に入らなかったり、遊びたい場所で遊べないなど行動が制限されたりするとフラストレーションが生じ、感情をうまくコントロールできなくなります。
・注意を引きたい
大人の注意を引きたい、かまってほしいと思うと、より大きな声で注目させようとしたり、感情的になったりしてしまうことがあります。
・言葉で表しにくい
自分の気持ちや要求を言葉で十分に表現できない・伝えられないとフラストレーションが生じ、感情が爆発することがあります。
癇癪につながる要因は実に様々です。
お子さまが癇癪を起こしやすいと、自身の接し方や育て方などで悩まれる保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。
ただ、そもそも癇癪は、育て方にかかわらず成長の過程で多くのお子さまが経験するものです。
お子さま自身も自分を抑えられず困っていることもありますので、対応の仕方を工夫してみるのはいかがでしょう。
癇癪を起こさないためには? 起こしたときはどうしたらいい?
![身振り手振りや大声で怒りを爆発させる子どもと困っている親](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_13.jpg)
癇癪は成長段階でよく見られるものとはいえ…。
あまりにたびたびだったり、手がつけられないほどの爆発力だったりすると、どう対応すればよいか困惑してしまうかもしれません。
適切なサポートにより、お子さま自身が少しずつ感情をコントロールできるようになり、やがて爆発せずに済むスキルを身につけられたら理想的です。
保護者のかたが日常でできるサポートをご紹介します。
癇癪を収められたらほめる
癇癪が収まったら、あるいは起こしそうになってもがまんできたら「泣き止んでえらいね」などと大いにほめましょう。
怒りの爆発を逃がす方法を一緒に探す
カッとなったときに数を数える、深呼吸をする、「大丈夫」などの落ち着ける言葉をつぶやくといった、クールダウンできる方法を一緒に考えて試してみましょう。
注意をそらす
![ぬいぐるみを抱えながら涙を拭う子どもと、落ち着いて話す親](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_04.jpg)
お子さまが気になっているものから注意をそらしてみましょう。
たとえば何かのおもちゃにこだわっていたら、興味を持ちそうな別のおもちゃや遊びのほうに誘導してみましょう。
お子さまの気持ちを代弁する
自分の気持ちがうまく言葉にできないと、その不快感が癇癪につながることがあります。
そのため「悔しかったね」「これが嫌だったんだね」など、感情を表す言葉を使って代弁してあげることも大切です。
その経験を重ねることによって、癇癪を起こさずに自分の気持ちを言葉で伝えられるようになっていきます。
言葉や身ぶりで要求を伝えることが苦手なお子さまには、絵カードやアプリなどの支援ツールを使って、気持ちを伝えられる環境を整えてあげましょう。
別の場所に移動してクールダウン
![子どもが外出先で癇癪を起こし、ひと気が無い場所で冷静に対応する親](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_05.jpg)
お子さまが癇癪を起こしたら、静かで安全な場所に移動してクールダウンさせましょう。
安易に欲求を満たさない
落ち着かせるためにおもちゃを買うなど、お子さまの欲求をかなえてしまうと「癇癪を起こせば思い通りにできる」というメッセージを伝えてしまうことになるので要注意。
そのため、まずは注意をそらす、クールダウンさせるなどの方法を試しましょう。
少し譲ってあげても大丈夫な範囲は、慎重に見極めていきましょう。
発達障害の子どもの癇癪はどう違う?
![親が今日の予定を紙にまとめ、指さし確認をする子ども](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_14.jpg)
お子さまの癇癪を目の当たりにするうちに、「もしかしたら発達障害とかかわりがあるかもしれない」と感じるかたもいらっしゃるかもしれません。
たびたび癇癪を起こすから発達障害がある、とは言えません。
ただし癇癪の背景には、こだわりや感覚過敏、コミュニケーションが苦手といった発達障害の特性が関わっていることがあります。
先に挙げたサポートの例は、発達のかたちに関わらず、効果が期待できるものですが、発達障害の特性を理解することで、よりお子さまにあったサポートが可能になります。
感覚の負荷を軽くする
![イヤホンをして外からの音を遮断しながら本を読む子ども](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_07.jpg)
光や音、触感などに対する感覚過敏がある場合は、過度な刺激を避けることで、癇癪につながるイライラを軽減することができます。
環境変化は事前に伝える
![紙に書いた内容を指さし確認しながら読み上げる親と、聞いている子ども](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_08.jpg)
いつもやっていることとやり方が変わったり、突然何かの作業を止めなければいけなかったりする場合。
環境変化が苦手なお子さまにとっては、つらく、混乱しやすい状況になります。
変化の際にはできる限り事前に見通しを伝えて、安心させてあげましょう。
こだわりを可能な範囲で尊重する
![タブレットで遊んでいた子供に「時計の長い針が10のところに行ったら片付けてね」と声をかける親](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_03_06.jpg)
お子さまが何かに強いこだわりをもっている場合には、可能な範囲で寄り添ったり、事前にお子さんが納得する別の方法などを伝えたりしてあげましょう。
たとえば電車を見るのが大好きで、駅からなかなか離れられないお子さまに「●時に特急が来たら帰ろうね」と伝えるなど。
「ここまでなら大丈夫」という範囲を伝えてあげると、次の行動に移る助けとなります。
もし「危ない」と思ったら?
癇癪は、鎮まるまで静かに待つのが理想的です。
ただ、頭を壁や床にぶつけたり、車の往来がある場所で寝転がったり走り出したりするなど、身の危険がある場合や、ものを投げてしまうなど「危ない」と思われる状況では、ためらわずに安全を守る行動をとってください。
また、お子さまが癇癪を起こしたときには、冷静を保ち、落ち着いて対応しましょう。
保護者のかたが感情的になると、お子さんの癇癪が長引いてしまうこともありますので、要注意です。
とはいえ、保護者のかたも人間です。
怒りを感じたり、周囲の視線を感じて焦ったり、慌ててしまったりすることもあるでしょう。
そんなときには、すぐにできる「アンガーマネジメント」が力になるかもしれません。
>子どもにもできる アンガーマネジメント 発達障害との関係や、やり方も紹介
理想は冷静な対応。でも癇癪の対応に疲れたときは…
![保護者と子供が甘いものを食べながら楽しそうに会話をする](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_10.jpg)
癇癪は感情の爆発ですから、とてもエネルギッシュです。
そのエネルギーに向き合う方にも相当のエネルギーが必要になるため、保護者のかたがストレスや疲れを感じるのも当然です。
癇癪の対応で疲れてしまったときは、まずは自分自身の気持ちを大切にして労わってください。
リフレッシュの時間を持ったり、必要なら専門家などに話を聞いてもらったりすることも重要です。
周りのサポートや情報を活用しながら、いっしょに乗り越えていきましょう。
保護者のかたの中には、以下のようなストレス解消法をしているかたもいらっしゃいます。
ぜひ、参考にしてみてください。
![先生に自分の子どもの特徴をまとめた紙を指さしながら説明する親](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_11.jpg)
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
兵庫県
小2保護者 のん
自治体の相談窓口にいつも相談している担当のかたがいます。
困ったときにはそのかたに話を聞いてもらって、気持ちをスッキリさせています。
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
静岡県
小4保護者 ポコ
子どもが学校に行っている間の一人の時間に好きなことをして過ごし、気分をリセットしています。
一人の時間は大切です。
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
小1保護者 しかとも
園から一緒のママ友さんとお話するのが一番のストレス解消法です。
あとは、家の金魚を見ていると癒しになりますし、在宅のお仕事もストレス発散になります。
気疲れしたときは、スーパーでスイーツを買ってきてコーヒーと楽しみます。
![自宅でソファーに座って会話を楽しむ親子](/kosodate/hattatsu/_assets/231024/img/20231024_02_04.jpg)
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
香川県
小3保護者 はなび
疲れたり、ストレスを感じたりしたときは、色々なことをさぼって、子どもと楽しく過ごすことを優先します。
しんどいときは家事も楽をして、できるだけ何もせず、自分の体と心を休めます。
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
福岡県
小5保護者 むっちん
家族が出払ってひとりになったタイミングでトイレにこもり、大声で叫びます。
あとは、ちょっと贅沢なアイスを食べたりしますね。
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
高1保護者 cafekko
同じような悩みを持つ先輩保護者さんと、おいしいものを食べながら交流するのが最高のストレス解消法です。
経験者のアドバイスが、何よりも参考になります。
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
小1保護者 ショーママ
月に2回ほど、実家に息子一人で泊まりにいってもらいます。
その間に息抜きをしたり、夫婦で息子について話したりして気分を入れ換えます。
![](/kosodate/hattatsu/230919/img/icon.png)
滋賀県
中1保護者 mパンダ
ひたすら息子の良いところを探して、毎日日記に書いていました。
できないことだらけで、そこに焦点を当ててしまうと自分が苦しくなるので。
日記を見返すと成長がよくわかる点もオススメです。
まとめ & 実践 TIPS
![親子と友達と先生が中央に集まっている](/kosodate/hattatsu/_assets/231122/img/20231122_05_12.jpg)
癇癪を起こしやすいお子さまに対しては、お子さまの感情を受け止めることが大事です。
また、保護者のかたが自分自身のストレスを解消し、リフレッシュの手段を持っておくことも、お子さまへのサポートと同じくらい大切です。
癇癪は成長の過程でよく見られるもので、原因はとても多様です。
適切なサポートのもと親子で向き合い、ときには周囲の力も借りて、いっしょに乗り越えていきましょう。
監修者
![山﨑 衛](/kosodate/hattatsu/230919/img/yamazaki.png)
山﨑衛やまざきまもる
マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。