子どもにもできる アンガーマネジメント 発達障害との関係や、実践法も紹介 子どもにもできる アンガーマネジメント 発達障害との関係や、実践法も紹介

2023.11.8

子どもにもできる アンガーマネジメント 発達障害との関係や、実践法も紹介

お子さまが怒り出したとき、ご家族でどんなふうに対処なさっていますか?

「暴れたり泣いたりするとヒヤヒヤする、外出先だと周りの目が気になる…」
「子どもが怒り出すと、自分までついイラッとしてしまって…」と悩まれることもあるかもしれません。

そこで役立つのが、近年教育分野でも活用されている
「アンガーマネジメント」(怒りをコントロールするための手法)です。

この記事では、大人はもちろん、小学生のお子さまや、こだわりや衝動性等の背景からイライラしてしまう発達障害のお子さまでも実践できるアンガーマネジメントの方法をご紹介します。

怒りは、抑えなくていいんです。
安心して会話をするヒントとして、お子さまといっしょに、少しだけ試してみませんか?

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

アンガーマネジメントとは? 子どもにも役立つ理由

2人の友達と会話をしながら感情をグッと抑える子ども

「アンガーマネジメント」は、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングの方法です。
1970年代のアメリカで生まれ、現在ではビジネスや教育など幅広い分野で活用されています。
「怒り(Anger)をマネジメントする」というと「怒りを抑えなければいけない」と考えがちです。

怒ること自体は決して悪いことではありません。
ただ、急に癇癪かんしゃくを起こしたり、怒りの感情を他人にストレートにぶつけると、周りの人はとまどってしまうこともあります。
怒りを上手にコントロールし、自分の意見や要求を正しく伝える方法を学ぶことがお子さま自身のためになるのです。

短時間で実践できる、お子さま向けのアンガーマネジメントトレーニング方法

図書館でゆっくり深呼吸をする子どもと、ボールを強く握ることで怒りを抑えている子ども

お子さまに向けたアンガーマネジメントでは、「怒りの対象となるモノ・コト・人から意識をそらす」点がポイントになります。
具体的には、次のような方法だと怒りをコントロールしやすくなります。

・落ち着ける場所に移動し、クールダウンする
・公園や校庭など、安全な場所で走ったり飛び跳ねたりするなど、体を動かして発散する
・ボールをギュッと握る。おもちゃ、ぬいぐるみなどを抱きしめる
・トイレに行く
・水を飲む、小さなお菓子を食べる
・ゆっくり深呼吸する、心の中でゆっくり数を数える
・汗をかいていたり、顔が赤かったりするときは、上着を脱いで調節したり、体の一部を冷やしたりする

お子さまによって落ち着く方法は違います。
「癇癪を起こしているときでも、この行動をすれば落ち着くことができる」という方法を、いくつか見つけておくと心強いですね。

保護者のかたがお子さまの近くにいるときなら、例えばこんなふうに声をかけて一緒にやってみましょう。

・「一緒に深呼吸してみよう」
・「〇〇ちゃん(ぬいぐるみの名前)をギュッとしようね」
・「ちょっとお水飲もうか」

繰り返しているうちに、お子さまは「イライラする→ぬいぐるみをギュッとしよう」と、怒りを違う行動へと変えられる場面が増えてきます。
怒りのコントロールが上手にできたら、保護者のかたが「泣き止んだね、えらいね」などとしっかりほめることも大切です。

「このやり方なら怒りをそらすことができる」という方法を学校の先生などに伝えておけば、家庭外でも試せます。

外出先でお子さまが癇癪を起こしたときのおすすめ対応法

子どもが外出先で癇癪を起こし、ひと気が無い場所で冷静に対応する親

外出先でお子さまが癇癪を起こすと、保護者のかたも周りの目が気になって焦ってしまいますよね。

お子さまが自分の要求を押し通すために怒っている場合、保護者のかたはお子さんの癇癪に引っ張られすぎず、冷静に、時にはスルーするくらいの心持ちで接することが大切です。
この経験を重ねることで、お子さまは「癇癪を起こしても欲求は満たされない」と無意識のうちに学びます。
保護者のかたは「深呼吸してみよう」と声をかけ、落ち着いたらそのときはしっかりほめてあげましょう。

ただ、公共の場では、周りの目も気になり、お子さまが泣き止むまで待つのは難しいかもしれません。

例えばデパートのおもちゃ売り場だと、欲しいモノが目の前にあるわけですから、お子さまの感情は収まらない可能性もあります。
そんなときは、保護者のかたもお子さまも、落ち着ける場所に移動するなどした方がよいでしょう。

発達障害のお子さまに、アンガーメンジメントは役立つ

子どもの教材に手を伸ばしたと同時に強く注意される親

電車やお店の列に並んでいて、誰かに割り込まれると「なんで割り込むの!?」と内心怒ってしまいますよね。

特にルールを守ることにこだわりが強かったり、衝動性が高く感情があふれやすいお子さまの場合には、たとえ相手に直接イライラをぶつけなくても、心の中では周りが感じている以上に辛い思いをしていることがあります。

また、おなかがすいている、眠気があるなどするときには誰しもイライラしやすくなりますよね。

ですがADHDや自閉症スペクトラムの診断を受けているお子さまは、次のような条件がいくつか重なったときに、さらにイライラしやすく、癇癪を起こすケースが見られます。

・自分が好きなものや、こだわりを感じているものを馬鹿にされた、邪魔されたと感じたとき
・パターンやルーティンで動いているのに、違う予定が入ったり、邪魔されたりしたとき
・「使いたいおもちゃがすぐに使えない・手に入らない」など、すぐに欲求が満たされないとき

そんなときは、先ほどご紹介した

・落ち着ける場所に移動する
・ボールをギュッと握る
・水を飲む・お菓子を食べる
・深呼吸する

などの方法をまず試してみましょう。

それでもなかなか改善しない場合には、たとえば「今日はこの順序ではなくて、こういう方法でやるからね」など事前に見通しを伝えてあげたり、別のものに目を向けてあげたりするなどの方法もあわせて試してみましょう。

保護者のかたのサポートで怒りをコントロールできれば、周りとコミュニケーションがとりやすくなります。
そして「怒らずに人とうまく関われた」という成功体験を積み重ねることで、お子さまが怒りを爆発させる場面を減らしていくことが期待できます。

イラっとしたらどうする?保護者向けのアンガーマネジメント

子どものイライラが自分にうつってしまい、ゆっくり数を唱えることで冷静になろうとする親

「怒りたくないのに、つい怒ったり、イラっとしたりしてしまう…」

お子さまに怒りを向けられると、保護者のかたも「つられ怒り」を感じることもあるのではないでしょうか?

保護者のかたが、怒りをコントロールして心を少し休められる手法をご紹介します。

●いったんその場を離れる
怒っているお子さまのそばにいると、保護者のかたも感情が昂ぶりやすいかもしれません。 そこで、「後で話そうね」などと声をかけて別室に行くなどしてみましょう。 距離を取ることで、保護者のかたもお子さまもクールダウンできるはずです。

●ゆっくり数を唱える
ぶつけられた怒りを反射的に投げ返しても、お子さまはますます感情的になってしまいます。
そこで、頭の中でゆっくりと数を数えてみてください。
イライラを理性でコントロールできるようになるまでには数秒かかると考えられています。そのため、深呼吸をしながら「1・2・3…」と数えることで心の落ち着きを取り戻せる可能性が高いのです。
そのうえで、「この子はどうして怒っているんだろう?」とお子さまを観察しましょう。

他にも、お子さまと向き合い過ぎて疲れてしまう時には、コーヒーを飲む、好きな映画を見るなど、保護者のかた自身がリラックス、リフレッシュできる時間をとることも大切です。

実はお子さまは、怒って自分を見失っているようでも「保護者がどんなふうに怒りと向き合っているか」を見ています。
お子さまに手本を示すつもりで、落ち着いて対処する姿を見せることで、お子さまも少しずつ落ち着いてくるかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

子どもが怒らなかったこと、我慢できたことに対して褒める親

お子さまが怒ってそれを上手にコントロールできたときだけでなく、お子さまが怒らなかったりがまんできたりした時にほめることも、とても大切です。

「当たり前」と思ってしまってつい忘れてしまいがちですが、「そういえば今日は怒ってない」と気づいたら、「お兄さん・お姉さんになったね」などとほめてあげてください。

怒りをコントロールする手法を身につければ、友達や先生とよりよいコミュニケーションがとれるようになったり、注意される機会が減ってほめられることが増えたりして、自己肯定感を育んでいくことができます。

また保護者のかたも、「こうすれば対処できる」という方法をストックしておけば、安心してお子さまと向き合えるのではないでしょうか。
できそうなものだけでもよいので、この記事でご紹介したアンガーマネジメントの方法をお試しいただければと思います。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。