小学校入学準備 好き嫌いを直すには?[食育につながるワンポイント]
- 教育
「家庭でできる食育」とはなんでしょうか。管理栄養士・医学博士であり、テレビや雑誌などで広く活躍されている本多京子先生にお話を伺います。
好き嫌いを急に直すのは無理!?
この時期、子どもの小学校入学の準備を始めたご家庭から、「給食」に関する不安や悩みの声をよくいただきます。「好き嫌いなく食べられるか」「時間内に残さず食べることができるか」「こぼさず、行儀よく食事ができるか」など、給食に関する心配事はさまざまです。そういった声の中から選んだ今回のテーマは、「給食で出されるいろんな食材や料理を、好き嫌いなく食べられるか」について。果たして、この入学準備の時期に、できることはあるのでしょうか。
「好き嫌いが多いほど、給食で出されたものをちゃんと食べられるか心配になるでしょうね。本来は、離乳食のころからいろいろな食材を与えていれば、子どもは好き嫌いしないはず。だから、この時期になって急いで好き嫌いをなくそうというのは簡単なことではありませんよね」(本多先生)
離乳食は、乳児が初めての味を体験し、受け入れていく貴重な機会。栄養を摂取することよりも、「いろいろな味を体験する」ことにウエートが置かれているのです。だから「好き嫌いを直すのであれば、本来は離乳食からやり直すべき」というくらい、大切なものなのです。
そのうえ、何年も好き嫌いが許されていたのに、入学が間近に迫ったからといって急にあれを食べなさい、これも食べなさいというのは、子どもの立場からすればかわいそうなことかもしれません。では、もはやできることはないのでしょうか?
家族全員の食を見直すことが第一歩
「確かに、子どもに『好き嫌いしてはいけません』というだけでは、好き嫌いはなかなか直らないでしょう。でも、だからといってそのままにしていれば、子どもにとって給食がつらい時間になってしまう。それでは、子どもがかわいそうですよ。子どもに好き嫌いをさせてきたのは親の責任なのだから、小学校入学を契機にじっくり子どもの食に向き合って、時間をかけて子どもの好き嫌いをなくしていくのも親の責任です」(本多先生)
そのためには、まず家の食事を見直していくことしかありません。朝ご飯に菓子パンとジュースを与えていて「好き嫌いを直しなさい」と言ってもそれは無理というもの。家の食事も、いろいろな食材や味が盛り込まれたバランスの良いものでなければなりません。
「特に、大切なのは朝ご飯です。時間がないからと手抜きをしたくなるところですが、朝ご飯をきちんと作り、食べるため、家族全員が早起きするようになると、生活が一気に規則正しくなります。子どもも夜は眠くなって夜更かししなくなるから良いことずくめです」
言葉で言うだけでは簡単に直らない子どもの好き嫌いも、家族みんなで食事の内容や生活のリズムを見直すことで、短時間で直ってしまう可能性がある、と本多先生は言います。
「子どもの味覚はまだまだ発達の途上です。いろいろな味を受け入れる力はあります。しかも、学校で友達や先生と食事をすることで、新しい味に挑戦する気持ちも生まれてくる。保護者のかたには、学校の給食表を見ながら、初めて食べたけどおいしかったものを家で再現してあげるなど、食に対する興味を広げてあげていただきたいですね」
心配する保護者をよそに、子どもは給食でいろんな味に出会い、食の世界を広げようとしているかもしれません。それなのに、家で与える食事が偏ったものだとしたら……? 小学校入学を前にした今、最も大切なのは、保護者自身の食の見直しなのです。
プロフィール
- 本多京子
- 本多ダイエットリサーチ主宰。医学博士・管理栄養士。日本体育大学女子短期大学で講師として小児栄養を担当。著作は『あなたのカラダは食で変わる』『1600キロカロリーの献立–生活習慣病のメニュー』 など多数。