学習習慣や生活習慣の確立、キャリア教育や特別支援など、学校種を超えて対応が必要な課題がクローズアップされています。ベネッセ教育総合研究所では、これまでも教育情報誌『VIEW21』などを通じ、「小中接続」「中高接続」等のテーマを特集してきました(小学版2011年Vol.4、中学版2011年Vol.4、高校版2011年6月号、高校版2011年9月号など)。しかし、現状ではなかなか学校種間の接続はうまくいっていないようです。
以下に挙げたのはベネッセ教育総合研究所が実施した調査の結果です。学校段階が上がるにつれ、学習方法や学習意欲に課題を感じる子どもが増えていることが読み取れます。
このような現状に対し、学校現場の先生方はどのように考えているのでしょうか? 『VIEW21』(小・中・高校版)読者の先生方にアンケートをとったところ、現状の小中接続/中高接続の枠組みにとどまらず、12年間を通して子どもを見るべきだとのご意見がいくつも寄せられました。
私は、小、中、高と勤務させていただいた経験があります。その校種に長くいると当り前だと思ってしまうことが、実はそうではないということに気付かされることが多々ありました。短いスパンで子どもを見るのではなく、6-3-3の12年間でどう育てるか、という長期的なビジョンも必要だということを痛感しています。
小・中・高で連携して進路指導について一貫した指導が必要ではないかと思います。平成21年でひきこもりの数は178万人。若年無業者は平成22年で81万人となっている。この中には適正な勤労観が持てず、社会から離脱した者が多い。現行の進路指導の副作用が大きいように感じています。
学力向上と自尊感情やコミュニケーション能力の関係について議論が必要。もっと継続的に指導すれば児童生徒の学力や学習意欲の向上、高い目標設定に効果的であると思う。特に、小・中における指導が重要な項目であるが、小・中・高でのトータルな指導方法の確立が必要であると思う。
着眼点はさまざまですが、いずれも学校種を超えて課題を捉えることと、一貫した指導の大切さを指摘するご意見です。また、以下のようなご意見もいただきました。
それぞれの校種の課題を相互に理解し、困難さを共有することから始まり、のぞむ子ども像とそれにつながる授業や学校づくりについて共同で構想してすりあわせていく。つまり、学校づくりよりも「子どもづくり」がテーマだと思う。
12年間を見通した教育を構想することは、既存の学校区分ではなく「子どもの育ち」に注目した教育を行うきっかけにもなるはずです。
それぞれの学校種を超えて率直に語ってみたい、という先生方の熱い想い。「Teachers’ cafe」はそれを具現化させるプラットフォームをつくりたい、これからの教育を先生方と一緒に考えさせていただきたい、という想いから企画しました。小中接続、中高接続が叫ばれながら、以下のデータからも読み取れるように、現状では必ずしも十分な相互交流の機会があるわけではありません。だからこそ、その壁を超えた本音の語らいの場をつくることで、新しい教育の見方が生まれるのではないか。そんな期待を込めています。
第1回「Teachers’ cafe」は2013年9月28日(土)に東京にて開催します。
本企画に関心を寄せてくださった『VIEW21』の読者モニターの先生方を中心に「12年間を通したより良い学びのために、教師が出来ること」をテーマとしてディスカッション。その結果をもとに、教師発のオピニオンを発信することを目指します。もちろん内容は本ウェブサイトにも公開し、多くの先生方からご意見をいただきながら、今後の企画について考えてまいります。
現在、首相の諮問機関である「教育再生実行会議」では、6-3-3-4制の見直しなども含めた、大きな教育改革の議論が進められています。そんな時だからこそ、学校現場の課題に根差しながら、未来の教育のあり方を、既存の枠を超えて議論することは重要な意味を持つと考えます。これからの社会で求められる主体性を育成するためにも、12年間で子どもを育てる視点はますます重要になるはずです。理想を掲げながら、リアルな教育現場の実態に根差した「半歩未来」のオピニオンを、一緒につくっていきたいと思います。