2013/09/25
シリーズ 未来の学校 第1回 | 国際バカロレア校を取り巻く動きから、教育のグローバル化を俯瞰する【後編】[1/4]
未来を生きる子どもたちは何をどう学ぶべきなのか
そこで大きな役割を果たす学校はどうあるべきなのか
「未来」といっても決して空想や夢物語ではない、実は
もう始まっている先端的な意味での未来の学校を探訪します。
そこで大きな役割を果たす学校はどうあるべきなのか
「未来」といっても決して空想や夢物語ではない、実は
もう始まっている先端的な意味での未来の学校を探訪します。
【後編】 国際バカロレア校を取り巻く動きから、教育のグローバル化を俯瞰する[1/4]
7:22
今回、ベネッセ教育総合研究所取材班は、ISAKのサマースクールの1日を密着取材(前編)したほかに、関係者にインタビューを試みている。
後編では、ISAKの代表ならびに教員、さらに、文部科学省など行政関係者へのインタビューを通して、日本のグローバル教育の今と未来を俯瞰する。
国際バカロレアを巡る、日本政府の動き
今回の取材では、あるキーワードが存在している。それが「国際バカロレア」だ。国際バカロレアとは、スイス(ジュネーブ)に本部を置く国際バカロレア機構が実施する教育プログラムであり、2013年9月の段階で146カ国、3,664校が実施している。なかでも「ディプロマプログラム(以下、DP)」は、16歳から19歳までを対象としたカリキュラムと試験で、最終試験に合格すると、オックスフォード大学やハーバード大学など世界トップレベルの大学をはじめ、世界中の多くの大学の受験資格や入学資格が得られる。
一方、日本でDPを導入している学校は現在16校。さらに、そのうち学校教育法第一条に規定され、日本の高校卒業資格が得られる、いわゆる一条校は5校に過ぎない。このような現状を、日本政府はどのように見ているのだろうか。
国際バカロレアの普及推進を所管する文部科学省の国際協力企画室長の永井雅規氏は次のように語る。
永井氏 「現在、政府全体で、国際バカロレアを普及すべく取り組んでいます。先だって教育再生会議の第三次提言は、主にグローバル人材の育成に焦点を当て、今年5月にとりまとめました。また、アベノミクス第3の矢である、今年6月に閣議決定された日本再興戦略では、2018年には国際バカロレアDP認定校を200校まで認定させるという目標を明記しています」
日本政府として、国際バカロレアDP認定校を200校まで増やすという目標を明確にしたのはとても意欲的で評価できる。ただし、学校現場でDPを導入するには依然高いハードルがある。まず挙げられるのが、教員の確保だ。DPは基本的に英語で授業を行う必要があるので、インターナショナルスクール以外の学校では授業を行える教員が限られる。この点について永井氏はこう語る。
永井氏 「文科省としては、このハードルを少しでも下げるために、日本語でもカリキュラムの一部を実施できるようなプログラムをつくりました。これを日本語DPと呼び、国際バカロレア機構との交渉を経て今年から正式に教材の開発などをはじめています」
従来、英語をはじめ数カ国語にしか対応していなかったDPが、一部の科目ではあるが、日本語でも学べるようになったことでその普及に弾みはつきそうだ。ただ、もうひとつ気になるのが、日本の学習指導要領との兼ね合いだ。永井氏は、バカロレアと学習指導要領との整合性について、次のように語った。
永井氏 「国際バカロレアのカリキュラム内容は柔軟性が高いものです。世界各国で導入されているプログラムなので、学習指導要領との整合性は十分とれると考えています。ただし、バカロレアの取り入れ方は学校によって工夫の仕方があるので、東京学芸大学を中心とした連絡協議会において学校間で情報を共有しながら切磋琢磨していければ良いと考えます」
小林 氏
一方、この点についてISAK代表の小林りん氏は次のように語る。
小林氏 「ISAKは、文部科学大臣から教育課程特例校として指定を受けています。この指定によって、国語以外の教科を英語で教えることが認められています」
このように「教育課程特例校」として指定を受ければ、学習指導要領を弾力的に運用し、カリキュラムを実施することが可能になる。