2013/09/25

シリーズ 未来の学校 第1回 | 国際バカロレア校を取り巻く動きから、教育のグローバル化を俯瞰する【後編】[3/4]

【後編】 国際バカロレア校を取り巻く動きから、教育のグローバル化を俯瞰する [3/4]

第三者が感じるISAKへの期待

 それでは、第三者の目には、ISAKはどのように映っているのだろうか。我々取材班と同じ日に視察をしていた、ツイッターのフォロワーが20万人以上いる、フリージャーナリストの林信行氏はこう語る。
 林氏 「良い意味で予想を裏切る授業でした。例えば、すべての授業の前に、生徒たちにその授業の価値を言わせることで、授業へのモチベーションを高めていたことが印象的です。
 また、午前中の授業で、英語が不得意な生徒向けの授業に出席している日本人を見ると、他の授業に出席している外国人の生徒と比べてシャイな様子で、これで大丈夫なのかと心配していました。ところが午後の授業になると、シャイに見えた日本人も外国人に混じって積極的に発言、行動し始めました。1日のなかで、明らかな変化が見られました」
 また、アメリカのコーネル大学ジョンソン経営大学院で市場創造戦略のシニアマネージャーを務める唐川靖弘氏は、次のような印象を語っている。
林 氏
唐川 氏
 唐川氏 「ISAKではチャレンジして失敗し、それを糧にすることを推奨しています。一方、企業としては、新しい市場を開拓する際、失敗を糧に何かを成し遂げた人間を必要としていますので、ISAKへの期待は大きいのではないでしょうか」

グローバルリーダー教育の今後

 教育界以外からも注目を浴び期待を背負っているISAK代表理事の小林りん氏に、課題と今後の展望を語ってもらった。
 小林氏 「4年間のサマースクールの運営を通して、理想として考えていることを授業でどのように具体化していくかについては、1コマ1コマ先生方と検討を重ね、改善してきました。来年の開校時には、私たちを信頼していただいた生徒や親御さんたちをしっかりと受け入れられる態勢が整っていると思っています。
 開校後の課題は3つあります。まずは、持続性を高めることです。生徒募集、教員募集を含めて、永続的に運営できるかどうか、ということですね。
 次に多様性です。現状、全生徒の4割から5割の生徒にしか、全額または半額の奨学金を用意できていません。今後は、さらに奨学金対象枠を広げることで入学できる層を増やし、多様性を担保していきたいです。
 3つ目は社会的なインパクトの追求です。これだけたくさんの方々に関心を持っていただき、支援いただいている現状はもはや、この学校だけの問題ではないと捉えています。新しい教育の風に対する期待に応えるためにも、同じような問題意識を持つ多くの教育関係者の方々と連携していきたいと考えています。
 ISAKは1学年50人という小さな学校なので、卒業生が社会的なインパクトを与えるのはずいぶん先かもしれません。でも10年度、20年後に世界中で卒業生たちがこんな面白いことをやっているよ、というような人材が輩出できると、この学校をつくった意味があると思っています」