2017/04/21

[特別編:2] アクティブ・ラーニングの実践から授業改善のためのポイントを探る(座談会 後編) [1/4]

 アクティブ・ラーニングの視点を活用して授業改善を図る上でのポイントは何か。後編では、授業改善を推進している2校の先生方が、実践を積み重ねる中で見えてきた授業づくりのポイントについて語り合った。
参加者:
清水和弘先生 福岡大学附属大濠中学校・高校 副校長
工藤俊玄先生 福岡大学附属大濠中学校・高校 教諭(国語科)
藤井泉浩先生 明星中学校・高等学校 教諭(国語科)進路主任

アクティブ・ラーニングと学校の教育目標を直結させる

 清水:アクティブ・ラーニングを効果的なものにするためにまず必要なのは、学校の教育目標を、各教科の目標と直結させることではないでしょうか。例えば、現状の大学入試において合格者数を増やすことだけが学校の目標であれば、アクティブ・ラーニングを行うよりも、暗記一辺倒の授業を徹底させる方が効果的かもしれません。しかし、生徒が社会に出るときの姿を考え、どのような力を育むべきなのかを考えれば、ただ知識を詰め込むだけでよいと考える教師はいないでしょう。校長などが中心になり、「こんな生徒を育てたい」という目標を十分に検討し、学校全体で共有することが大切だと考えます。
 藤井:本校では、意欲的な教師を中心に、アクティブ・ラーニングを授業に取り入れています。今後は個人での取り組みにとどまらず、まとめ役の教師がしっかりと取り組みを共有し、教科単位や学校全体の動きにすることを目指しています。
 清水:本校は、学校全体でアクティブ・ラーニングの研究を始めてからまだ2年です。1年目は、教科ごとに大学入試がどう変わるかを研究してきましたが、どの先生も忙しく、なかなか手をつけられませんでした。そこで、2年目から各教科に「研究員」を任命して、研究を本格化させています。このような取り組みは、これからの時代を生きる子どもたちに必要な能力を育むという視点から、数年後には大学入試も大きく変わることを先生方に意識してもらい、授業の改善を促すという意味があります。
 工藤:それを受けて、国語科ではコンピテンシー(資質・能力)の育成を目指す授業の実践と並行して、思考力などを問う問題を作成し、定期考査や中学校・高校の入試で出題しています。また、ある授業ではセンター試験の過去問題を題材に生徒に議論をさせました。もともと5つだった選択肢の中から最後に迷いそうな2つの選択肢に絞って生徒に提示して、最初に個人で考えた後、4人グループで答えを1つにまとめさせ、異なる解答をしたグループ同士で理由について主張し合わせたのです。議論のポイントが明確だったので、生徒個々の考えが深まる授業になったと思います。