勉強にAIを使うコツとは?

ChatGPTをはじめとしたAIツールが次々と登場し、教育や学習における扱いや活用法について議論が進んでいます。

自動翻訳どころか調べ学習や読書感想文などにも使えるとなると湧いてくるのが、「学校の宿題や提出物に取り組む際にAIを使っていいの?」というギモン。

親が気づかないうちに子どもが夏休みの宿題にAIを使っていた…というケースも想定されるなか、そもそも学習時にAIを使っていいのか、使う場合はどのように活用しどのような点に注意すべきなのか、情報モラルやAIリテラシーに詳しい石川千明さんにお話を伺いました。

「AIを使って宿題ができる」って本当?

保護者の方の心配事として、「宿題をするときにAIを使っていいのか?」という声がよく聞かれます。そんな保護者の方に、私は「”AIを使う”のではなく、“AIといっしょに学習をする”といった考え方はいかがでしょう?」「まずは、保護者の方が実際に使ってみることから始めてみませんか?」とお伝えしています。

ChatGPTのようなAIを使う際、日本人は「〜について教えて」と入力し、「答え」を求めがちです。

一方、海外ではブレスト(アイデア出し)でAIが積極的に使われています。通常のブレストでは複数人でしますが、AIを使えば一人で壁打ちのようにブレストをすることができます。
「〜について、実現可能なアイデアを出して」「〜について、どのような視点があるか教えて」といった問いかけをすることで、自分では思いつかなかったようなアイデアや、自分とは異なる視点からの意見を得ることができるのです。

ChatGPT のようなAIは「対話型AI」とも言われますが、まさに「対話」を通して多様な情報や多角的な視点を提供してくれます。しかも相手は人ではありませんので時間を気にすることもありません。

つまり、「AIを使って学習をする」のではなく、「AIと一緒に宿題をやる」というのが適切な捉え方であり、その意味で使っていいか悪いかというと、私は適切な方法と利用のための知識であれば「使ってもいい」と考えています。

なぜならば、これからの時代を生きる子どもたちにとって、AIは生活で利用する場面が多くなり、勉強や仕事において善きパートナーになれる可能性が高いと考えているからです。
少しずつ正しい使い方、有効な使い方を学んでいくことは、決して悪いことではないのです。

AIは情報収集&アイデア出しに活用する

「AIと一緒に学習をする」とお伝えしましたが、具体的には、情報収集アイデア出しに活用するのがおすすめです。
例えば、気候変動について知りたいときにAIを活用すれば、インターネット上にある膨大な情報を整理して伝えてくれます。

ここで注意が必要なのが、「問いかけ方」です。
ただ「気候変動について教えて」と入力するのではなく、誰に・何を・どのようにまで含めて、つまり、細かく条件をつけて、問いかけるようにしましょう。
×「気候変動について教えて」

〇「気候変動について理科が苦手な小学生にも理解できるよう、簡単な言葉で200文字で教えて」
このように入力すれば、よりその子どもに寄り添った有益な情報が得られるはずです。

AIをうまく活用できるか否かは、この「問いかけ方」により決まってきます。
もちろん、出てきた回答の事実確認(ファクトチェック)は必須です。
特に子どもはAIの回答を鵜呑みにしてしまいがちなので、事実確認の重要性は大人がしっかりと伝えてあげましょう。

また、アイデア出しについては、例えば「中学2年生が読書感想文を書くための本を10冊、おすすめの理由を添えて、200字で教えて」などと入力すれば、AIは書名を挙げ、それぞれのおすすめ理由を教えてくれます。
こうして活用すれば、こんな本もあったんだ、おもしろそうだなと、子どもが新しい本と出会うきっかけにもなるでしょう。ただ実際に無い本をあげることもあります。このあたりがファクトチェックが必要な理由です。

より高度な応用編としては、自分が書いたものをAIにチェックしてもらう、という方法があります。
私自身、自分が書いたコラム原稿をAIに読み込ませ、論旨のブレがないか、独りよがりの意見になっていないかなどをチェックに利用しています。

当然、丸ごとコピペはNG! 情報モラルを身につけて

調べ学習で、AIが出した回答をそのまま写して提出してしまう。
「○○という本の読書感想文を書いて」と指示し、上がってきた文章を丸ごとコピペして、まるで自分が書いたかのように提出してしまう。
そんなケースが、今後は増えてくるかもしれません。
こうした行為は、当然「やってはいけないこと」です。著作権の問題もありますから、引用をした場合はそのことを明記する必要があります。

一方、これだけAIが社会や生活に入り込んでいるなか、子どものAI乱用を防止するためにAIの使用を禁止するというのは、現実的ではないでしょう。

これからのAI時代を生き抜く子どもたちにとっても、有益だとは言えません。
大事なのは、情報モラルの浸透です。

「やろうと思えばできるけど、やってはいけないことだからやらない」。
子どもがそういう適切な判断をできるよう、親からの声かけも必要になります。
AIサービスによっては利用規約に年齢制限が記されている場合もあるので子どもが勝手に使ってはいけないもの(だから、一人では使わないでおこうね)ということも、親子で確認しておきたいですね。

まとめ & 実践 TIPS

本記事では「適切な使い方で利用のための知識があれば、使ってもいい」と申し上げましたが、難しいのが「何が適切か」という基準です。
AIツール自体が日々変化するなか、どのような活用方法が適切なのかも変わってきます。
だからこそ、基盤となる情報モラルを身につけることが大事なのです。
こちら(https://benesse.jp/ai/202307/20230725-1.html)の記事では、AIに苦手意識のある保護者が子どもに伝えるべきことについてアドバイスをしています。
ぜひ、参考にしてみてください。

プロフィール


石川千明

NPO法人 奈良地域の学び推進機構理事、テックコーチ
2008年より自治体や学校等でICT支援活動を行う。2011年より情報モラル教育を推進。「どなたにもわかりやすく」をモットーに、子どもたちがインターネットで被害者にも加害者にもならないための情報モラル講座を開講している。
公式サイト:https://www.j-moral.com/