AIなんてよくわからない…そんな保護者こそ、まずはAIを使ってみよう!

次々と新しいAIツールが世に出る昨今の状況に追いつけず、AIに対して「よくわからない」などの苦手意識をもっている方も少なくないと思います。
とはいえ、これからの時代はAIを利用しながら生きていく時代であり、AIに触れることなく生活を送ることは難しいと感じています。
特に子どもたちには、AIのメリット・デメリットを理解したうえで、正しくかつ有効に活用してもらいたいもの。
AIなんてよくわからない…という親が子どもに何を伝えるべきか、情報モラルやAIリテラシーに詳しい石川千明さんにお話を伺いました。

とにかくまずは使ってみよう

AIに苦手意識があるという方の多くが、「一度もAIを使ったことがない」とおっしゃっています。
何はともあれ、まずは使ってみて、メリット・デメリットを体感してください。
ChatGPTに代表されるAIツールは、無料で使えるものがほとんどですので、最初のハードルは決して高くはありません。

また、「使ってみたけど有益な回答が得られなかった」という方も一定数おられます。
そういう方の多くが、「〜について教えて」というシンプルな問いかけ方をしています。
これだけではなかなか的を射た回答が得られず、「使えないな」という感想になってしまいます。
ChatGPT のようなAIの最大の特徴が、人と会話のキャッチボールができるということ。
会話を楽しむような気持ちで、気軽に問いかけてみてください。
AIを活用する際に大事なのが、「問いかけ方」です。
誰に・何を・どのようにといった条件付けが重要になります。


「気候変動について、理科が苦手な小学生にもわかるように、やさしいことばで100字で教えて」
「中学生におすすめの、感動する本を、理由といっしょに10冊教えて」

※くわしくは「勉強にAIを使うコツとは?」の記事でご紹介しています

この条件付けにより、より自分が求める情報を得られやすくなるのです。
そして、何かについての「答え(情報)」を求めるだけが、AIの活用法ではありません。

特に海外では、AIはブレストなどのアイデア出しなどで積極的に活用されています。
「〜について、ユニークなアイデアを5つ出して」「〜について、10代ではどのような意見があるか教えて」といった問いかけをすることで、自分では思いつかなかったような独創性あるアイデアや、自分とは異なる立場からの意見を得ることができるのです。
ぜひ、こうした視点を意識しながら、まずはAIを使ってみてください。

子どもに伝えるべきはコレ!

実際に使ってみると、具体的なメリットやデメリットが見えてくるはずです。

使った感想を踏まえたうえで、お子さんにもAIを使う際の注意点を伝えてみましょう。
最大のデメリットは、AIは誤った情報を提示することがある、ということ。
AIの回答はそれっぽい文章できれいにまとめられていますが、よく読むと事実と異なる点があることがあります。
AIは平気でウソを書き出すので、回答の事実確認(ファクトチェック)は必須です。
ファクトチェックをはじめ、以下のようなことを伝えて親子で情報モラルを高めましょう。

  • ◆必ず事実確認をする
    AIが出してくる回答には、ウソ(事実とは異なる内容)が混じることもあります。
    特に子どもは提示された情報を鵜呑みにしがち。
    「これって本当?」という視点をもち、正しい情報なのかを必ずチェックするよう伝えましょう。
  • ◆引用したら出典を明記する
    著作権の観点から、何かをコピペ(丸写し)して自分の制作物として提示することはNGであることを伝えましょう。
    引用する場合は、どこからどこまでが引用なのか、出典は何なのかを明記する必要があります。
    「コピペ」と「参考資料・情報として使用する」ことの違いも、きちんと伝えましょう。
  • ◆問いには条件を付ける
    誰に・何を・どのよう(どのくらい)など、問いかけ方を工夫することでより自分が欲しい情報が得られることを伝えましょう。
    例:「織田信長はどんな人だったか、小学生でもわかるように、やさしいことばで200字で教えて」など、具体的な例文もいっしょに伝えてあげるとよいでしょう。
  • ◆ヒントを得るために使う
    子どもはすぐ「〜について教えて」とAIに尋ねがち。
    AIは「答えを得る」ためではなく、「自分にはないアイデアや意見を知る」ために使うと有効であることを伝えましょう。
    例:「気候変動についての自由研究をしたいので、調べるためのポイントを5項目にわけて、小学生でもわかるように、やさしいことばで200字で説明して」

使うときは、大人といっしょに

個人情報の扱いなどの観点から、AIサービスによっては利用年齢に制限があるケースもあります。
年齢制限などの注意事項は利用規約(ガイドライン)に明記されており、事前にしっかりと読み込んでおくことが大事です。
少しハードルが高いかもしれませんが、お子さんといっしょに目を通せば、会話のきっかけにもなるのではないでしょうか。
そのうえで、子どもが勝手に使ってはいけないもの、それだけの(だから、一人でリスクのあるものは使わないでおこうね)ということも、親子で確認しておきましょう。

また、学校からAI利用に関する指示があった場合は、その指示に従ってください。

なお、AIの教育や学習における扱いについては、文部科学省からも 方針が出されています。
ただそれに従うのではなく、なぜそういった方針が出されるのかを理解し、その方針に基づいて家庭ではどのように対応すれば良いのかを考えるためにも、まずは保護者が、AIがどのようなものなのかを知り、体感することが大事です。
そしてそれが、AI時代を生きる我が子の可能性を広げることにつながるのです。

まとめ & 実践 TIPS

あらゆるところでAI技術が活用されている現在。この状況をポジティブに捉えて、まずは保護者の方自身がお試しでAIを使ってみてはいかがでしょうか
私自身もよくAIを使いますが、こちらからの問いかけに対してすぐに答えを出してくれ、まるで人と会話をしているような感覚です。

ぜひ、新しいツールとのふれあいを親子でいっしょに楽しんでください。

プロフィール


石川千明

NPO法人 奈良地域の学び推進機構理事、テックコーチ
2008年より自治体や学校等でICT支援活動を行う。2011年より情報モラル教育を推進。「どなたにもわかりやすく」をモットーに、子どもたちがインターネットで被害者にも加害者にもならないための情報モラル講座を開講している。
公式サイト:https://www.j-moral.com/