子ども向けコンピューターサイエンス絵本の定番シリーズ

本書は、『ルビィのぼうけん』シリーズの2冊目の本です。

この『ルビィのぼうけん』シリーズは、これまでに日本では3冊出版されています。
2016年に発売された『こんにちは!プログラミング』に続き、2017年に発売されたのがこの『コンピューターの国のルビィ』です。さらにその後、2018年末に3冊目の『インターネットたんけん隊』が発売されました。
どの本も、好奇心旺盛なルビィという女の子が不思議な世界を旅する物語と、その物語に関連する練習問題で構成されており、世界20カ国以上で親しまれているとのことです。日本では、子どものプログラミング教育について情報収集していると必ずどこかで見かける本と言っても過言ではありません。1冊目の『こんにちは!プログラミング』については、それを活用した授業案の本など、関連書籍も出版されています。プログラミングやコンピュータサイエンス絵本の定番と言えるでしょう。

『コンピューターの国のルビィ』では、ルビィはコンピュータの中に迷い込みます。
いなくなったマウスポインタをねずみのマウスと一緒に探しに行き、オペレーティング・システムになぞらえられた雪ひょうや、ビットたち、論理ゲート、ラムなどの登場人物と出会いながら冒険するという物語です。

対象年齢は5歳以上と設定されていますが、かわいらしい見た目の割に内容は比較的硬派ですので、理解しにくい子どももいるでしょう。そんなときは、大人と一緒に読み解いてみてください。
著者も翻訳者もエンジニアとのことで、語句の意味や表現の正確性への気配りが感じられます。すでに基本的な知識を持っている大人は、この物語を子どもに読み聞かせながら、「そうそう、本当にラムとディスクはこういう機能なんだよな」と思わず笑ってしまうかも知れません。

豊富なアンプラグド練習問題

このシリーズの一番大きな特徴は、前半の物語だけでなく、後半にそれらの内容に沿った練習問題が用意されていることです。

『コンピューターの国のルビィ』には、26個もの練習問題が掲載されています。いずれも紙工作や自分の日常生活にあるコンピュータ探しをしながら考えるアンプラグドな(実際に動くコンピュータを必要としない)教材です。
本シリーズの特設サイトには、「あそぼう」のコーナーがあり、本書の一部の練習問題や、前作『こんにちは!プログラミング』の練習問題の素材をダウンロードすることができます。
プリンタで印刷するだけで、本のイラストとそっくり同じワークシートや紙工作のシートが手に入るのです。本を切り取って部品を失くす心配もありませんし、刷り増しができるので何度でも使えます。

授業を超え、発展的な学習への足がかり

本書に掲載されている練習課題は、2020年度より小学校で実施される教科の学びの中で行うプログラミング教育に向けた教材としてすぐに使うにはひと工夫が必要かもしれません。
しかし、それらの授業を通じてコンピュータそのものの働きに興味を持った子どもに向けて、クラブ活動や、発展的な授業での説明などでは、この鮮やかで親しみやすいイラストと練習問題は、子どもたちの学びを深める大きな助けになることでしょう。
もちろん、学校の授業で意欲を高めた子どもへの、家庭学習の読本としても適しています。親子で楽しめる一冊となるに違いありません。

出版社 翔泳社
著者 リンダ・リウカス作 鳥井雪訳
発売日 2017/4/10
ISBN 9784798138770
価格 1,944円 (税込)
仕様 B5/88P

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