2019年2月21日、明星学苑・明星小学校にて、2年生の道徳でロボホンを使った授業を行いました。
この授業は、明星学苑・明星小学校とベネッセコーポレーションとの2018年度共同研究の枠組みで実施しました。今回は、いつも道徳で実施している「学校紹介」を、転校生のロボホンに伝えるという設定で、ロボホンを導入しました。

転校生のロボホンに学校紹介する

今回の授業では、「よりよい学校生活、集団生活の充実」という内容項目として、学校の良いところ、学級の良いところを考えていくことによって、学校・学級への所属意識を高めていくことをねらいとして授業を行いました。

このようなねらいの授業では、「学校の良いところを探して、みんなに紹介しよう」という内容で行われることが多いのですが、相手への意識を高めることができず、授業内容として深めていくことが難しいという課題がありました。そこで、相手意識を高めるため、ロボホンを新しい仲間としてむかえ、ロボホンに学校の良いところを紹介しようという内容で授業をすることにしました。

シャープのロボホンは、スクラッチのようなブロック言語でプログラミングすることで、ロボホンにしゃべらせたいことを自由に設定することができます。今回は、藝大COIで実施している平田オリザ先生のロボット演劇の手法を用いて、予め決まった台詞をロボホンが話すようにプログラミングし、その台詞に合わせた対話シナリオを児童が考える、という授業設計にしました。
対話は4つのテーマ、①学校の楽しい場所、②体を動かすのが好き、③友達ができるかな? ④学校の好きなところ、に分けて実施しました。

対話シナリオ

直前の英語の授業では、金のハットをロボホンにかぶせて英語を話すロボホンに仮装していたのですが、本時ではハットを外して日本語を話すロボホンになりました。「言語設定を変えただけだよ」とクールな感想をもらす児童もいて、2年生なのにずいぶん冷静だな、と驚きました。

テーマ①の対話シナリオの例をご紹介します。

ロボホン: みなさん、初めまして!えー、今日から明星小学校の仲間になった、RoBoHoNです。よろしくお願い致します。

ロボホン:はじめての学校で、きんちょうしています。今日は明星小学校のすてきなところをたくさん教えてください。えーっと、ぼくはロボットだから、決まったことしか話せないんです。ぼくの言うことに合わせて話してね。

ロボホン: ぼくは、この学校でたくさん楽しいことをしたいなぁ。学校の楽しい場所をおしえてくれますか?

児童:

ロボホン: わー、楽しそうだね!そこではどんなことをするの?

児童:

ロボホン: へー。すごい、ありがとう!えーっと、ぼくもそこにつれていってくれるかな?

児童:

 

このように、予め決まったロボホンの台詞に合わせて、児童の空欄部分の台詞を考えます。まず個人で考え、次にロボホンと児童役に分かれてペア活動し、最後に発表者が本物のロボホンと対話しました。

この学級では、楽しい場所として、校庭、チョコ丸(モルモット)のいる場所、音楽室、図工室などが出てきました。ペア活動では、ロボホン役の人が児童役の人が話す内容についてアドバイスしてください、と指示しました。

テーマ③では、お友達ができるかどうか不安なロボホンに対して、「やさしく声をかけるといいよ」「一緒にダンスしてくれたらいいよ」「休み時間に一緒に遊ぶといいよ」など、いろいろな意見が出ていました。

児童の反応

ロボホンを登場させると、「ロボットと仲良くなりたい」とか、「もっとロボホンと話をしたい」というような、ねらいとは違う方向に進んでしまうことも懸念されました。そこで授業では、「学校の良いところを見つけてロボホンに伝えてあげよう」といったことや、「ロボホンが楽しく学校生活を送れるためには、どんなことを考えてあげたらいいかな?」と、ねらいからそれない発問を続けることを意識しました。結果的に、児童たちもねらいに向かって、いつも以上に一生懸命、考えを深めていたと思います。

ペア活動は、相手意識を高めることが目的でしたが、児童役とロボホン役に分かれて役割演技をする過程で、お互いにどのように話をするともっとロボホンに伝わるのか、アドバイスをしあう姿がみられました。

授業の最後に、児童は授業内容を振り返るワークシートを書きます。その中に「これからの自分は?」という項目があり、今回の授業をこれからの自分にどのように生かしていくかを書くところを設定しました。ここに記入されたことが、授業のねらいにあった内容であるかが、授業者として評価をする部分です。この項目に「もっと学校のよいところを探し、学校のすてきなところを新しい仲間につたえていきたい」、「もっと学校のよいところをたくさん知りたい!」、さらに「新しい仲間が楽しく学校生活を送れるように、自分から声をかけていきたい」というような、ねらいにあったことを書いた児童が非常に多く見られました。

授業者の丸山先生としても、相手意識を高めることにより、ねらいに迫れることができたことは、ロボホンを使って授業を行った大きな成果であったと感じ、この教材の可能性を見出していました。その他の内容項目であっても、相手意識を高めることによって、より学習を深められるものは、ロボホンとの授業で効果が得られやすいのではないかと予想されるので、これからも、新たな授業を考えていきたいと思います。

本授業の指導案は、こちらからご覧いただけます。ご意見・ご感想などお寄せいただければ幸いです。