小学生男子のノリそのままで楽しめるプログラミング体感まんが

あの先生の口癖、面白いよなー。うちに帰った瞬間から靴をそろえろ、手を洗え、宿題しろって親はうるさいなー。おこづかいあげて欲しいなー。漢字の書き取りや暗記はめんどくさいなー。
そんな小学生男子の日常的なぼやきを、この本はプログラミングで面白おかしく解決(?)します。

スーパーやコンビニで売っているチョコレート菓子に付属のカードやシール。それが「ぺたスクリプト」だったら……? シールでプログラミングすると、シールを貼った物がプログラムの命令通りに動き出します! まんがの主人公のアキラは、そのシールを活用してうまいことやってやろうと試します。

例えばお母さんや先生を脅かしたり、宿題でズルをしようとしたり、友達がお小遣いを上げてもらったので自分もそうしようとしたり……といった、小学生にありがちなお話です。いくつかはうまく行き、いくつかは失敗してしまうのですが、その時に使う秘密道具が「ぺたスクリプト」なのです。
“お勉強”のにおいはゼロで、小学校中学年くらいの子の日常生活のノリそのままに楽しむことができます。

まんが部分はかなり字も大きいので、まんがを読むのにあまり慣れていない子どもでも楽しめると思います。

シールの動作と連動するScratchの操作

本書の一番の特徴は、まんがの中に登場する「ぺたスクリプト」のシールの扱い方が、Scratchの操作に非常に近いことです。まんがの中でお湯が沸く5分後にガスコンロの火を止めるシーンがありますが、左の図のように表現し、貼ったシールをつつくことでプログラムが動きだします。一方、Scratchでは、画面上で右の図のようにブロックを並べ、このブロックをクリックすることでプログラムが動作します。

マンガの中で主人公たちが遊んでいるグッズの使い方を見ているうちに、ブロックで一つずつ変数を決めて命令を出す、それをループや条件で組み合わせて自分の思ったとおりの動きをつくるというプログラミングの基本を体感することができる、表題通りの「プログラミング体感まんが」なのです。

Scratchを使って「ぺたスクリプト」をやってみよう

まんがだけではなく、Scratchの解説も載っています。主人公の”アキラ”に「ぺたスクリプト」を教えた、いとこの”トキねえ”が、ブロックの連結(複数の命令を順次出す)、繰り返し、条件分岐、変数と乱数、メッセージとイベント、文字列などの基本的なプログラミングの考え方やScratchでの操作方法をまんがのストーリーに合わせて解説します。

解説ページは少し字が小さくなるものの、漢字にはふりがなが振ってあります。内容を読むと多少砕けた説明もあり、小学生にも読みやすく工夫されています。
たとえば、Scratchのキャラクターに好きな言葉をしゃべらせてみようという指示で、下記のような箇所があります。
「好きな言葉をしゃべらせてねって言ったらだいたい『アホ』か『バカ』か『ウンコ』ってしゃべらせるんだよね。それ見あきたから。もっとセンスのある言葉、期待してるからね。」
今まさにそんな言葉を打ち込もうとしていた子どもも素直に手を止めて「センスのある言葉」を考えることでしょう。

不真面目路線を貫くユニークさ

本書は大人が「読みなさい」とか「勉強しなさい」というものに興味を示さない子どもにこそ、適しているように思います。
保護者が「本当にこの子は人の言うこと聞かなくて…」などといつも言っているような、なかなか人の指示通りに動かず、自分の興味が惹かれるものしかやらないタイプの子どもが、図書館の棚や、さりげなく置いた食卓の上などで本書を見つけ、ふと開いてみるようなシーンが目に浮かびます。

その場では実際にプログラミングするに至らなくても、「なんだこれ、ギャハハ」とコミック誌を読むようなノリでまんがを読んでいる中でプログラミングの基本に触れ、後日授業などがきっかけでScratchに出会って「これってぺたスクリプトだ!」と気が付く、という順序になっても面白いのではないでしょうか。

以前は「プログラミングなんかしているヒマがあったら勉強しろ!」と言われていたと、原作者の中谷秀洋さんがあとがきでおっしゃっています。
しかし今や、プログラミングが将来に役立つものと認識され、学校教育でも導入しようという時代です。そんな現代ならではの切り口で、勉強としてのプログラミングに触れる前の子どもたちに「プログラミングって遊びやズル(作業を楽にする)にもピッタリなんだ!」というプログラミングの本当の楽しさを伝えてくれる、あえて不真面目系のノリを持ったユニークな一冊です。

出版社 技術評論社
著者 「ぺたスクリプト」製作委員会
原作:中谷秀洋 まんが:歌工房
発売日 2017/7/27
ISBN 978-4-7741-9128-7
価格 1,166円 (税込)
仕様 大型本112ページ

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