脳科学でわかる!やる気を起こす1アクション 夏休み明けのダラダラ脱却!

脳はだまされやすいので、行動の影響を受けて気分が変わります。ハマる方法は人それぞれ。自分に合った行動が見つかれば、気持ちの切り替えにかかる時間を減らせます。

篠原菊紀先生

篠原先生教えて!休み明けにダラダラしちゃう3つの原因

原因1 生活リズムの乱れで
脳が時差ぼけ状態になる

休み中に夜更かしが続くなどして生活リズムが乱れると、目覚めるときや興奮・集中するときに作用する脳内物質「コルチゾル」などの分泌が高まりにくくなることが知られています。これは時差ぼけと同じメカニズム。そのため、休み明けはだるさが残ったり、気力がわきにくいと感じたりする人が多いのです。同様の状態は、週明けの月曜日でも起こります。加えて、長い休みはモチベーションを高めるときの脳のシステムにも影響を与えます。

原因2 繰り返しが途切れると
やる気が起こりにくくなる

脳の奥には線条体(せんじょうたい)という部分があり、ここが活性化されるとドーパミンの分泌が高まってやる気が起こります。線条体には「予測で活性化する」という特徴があり、学校に行ったら(行動)楽しかった・満足したという体験(報酬)を繰り返すと、登校することを考えるだけで線条体が刺激されてドーパミンが分泌され、行く気がわいてくるようになります。しかし、休みを挟むと予測の効果が途切れ、ドーパミンの分泌が低下して学校に行く気がわきにくくなるのです。

原因3 「今やろうと思ってたとこ!」
は本当だった

子どもの「今やろうと思ってた!」という反論は、子育てのあるある。でも、子どもは実際に「やらなくちゃ」と考えていることも多いのです。それなのに行動に結びつかないのは、脳の言語を司る部分と運動(行動)を司る部分が異なるからです。頭で言葉を何度反復しても、運動野は働かないので物理的に体を動かすことができません。言葉で言い聞かせても行動には結びつきにくいことを知っておくといいでしょう。

線条体を活性化させる2つのルート

行動から 言葉ではなく動きをイメージする ○行動している自分の姿をイメージする ×いい加減やらないと。やるぞやるぞ 快感から 自分で自分をほめる ○ちょっとでもやった自分はエライ! ×思ったほどできなかったな

脳のシステムを利用してやる気を引き出す

方法1 考えるより動く!
落ち込むよりほめる!

「これをやったら、いい結果が出た(行動したら報酬が得られた)」という経験で線条体(※)を活性化させてドーパミンの分泌を高めることが、やる気を起こす近道。初めは面倒でも「とりあえず行動すれば、やる気が出てくる」と考えて動いてみましょう。
そして、思った結果につながらなくても「これだけやったから偉い」「ここはよかった」と、どんな行動も、よい結果(報酬)に結びつけて。行動の先に報酬があると脳に思い込ませましょう。

  • ※線条体:脳の奥にあり、やる気のドーパミンを分泌する

方法2 調子がよかったときを
再現する

行動と報酬の組み合わせは、主観的なものです。友だちと勉強した方が集中できる人も、一人の方がはかどる人もいるので、自分の成功体験を手がかりにするのがおすすめです。いつ、どこで、どんな状況でよい結果が出たのかを振り返って再現してみましょう。ルーティンになると、線条体の予測効果も高まって切り替えがスムーズになっていきます。

方法3 イメージとオノマトペにも
効果あり

運動野(※1)への働きかけにも、行動を促す効果があります。「やらなくちゃ……」と思っても働いているのは脳の言語野(※2)だけ。一方で、自分の行動する姿を映像としてイメージすると運動野に刺激が伝わります。できる人は、自分の視点から見える映像をイメージできれば効果がアップ。オノマトペ(擬音語・擬態語)も線条体の活性化につながるので、頭の中で映像を描きながら「サッと立ち上がってタタタッと歩いてドンと座る」と声に出してみて。

  • ※1運動野(うんどうや):行動を指示する脳の部分
  • ※2言語野(げんごや):言葉で思考する脳の部分

《自分流》を見つけて!やる気を引き出す具体策

うまくいく方法は人それぞれ。「自分にはこれが効果的だ」と信じる気持ちも、報酬としての価値を高めます。ときによって変わったり、続けていくうちに効果が上がらなくなることもありますが、いろいろ試して今一番よい方法を見つけましょう。

報酬でモチベーションを高める期待系

「〇〇すれば〇〇が得られる」のように自分で行動と報酬をセットにすることで、線条体への刺激になり、やる気があがります。自分なりの報酬を見つけましょう。ただし「〇〇しなければ〇〇できない」という否定的な考え方では、報酬にならないので注意。

具体策
・近い未来の小さなイベントなどを設定する(外食、映画、買い物、日帰り旅行など)
・元気が出るおやつを見つける
・目標とそのための行動を具体的に設定する(80点以上とるために、この勉強をするなど)

流れを断ち切って切り替える転換系

活動や思考を一度リセットすることで、脳がリラックスして次の行動に集中しやすくなります。短い眠りも目覚める時に、気分を安定させるセロトニンが分泌されるので活動がスムーズに。ただし、寝過ぎたり、スッキリ起きられないなど、うまくいかないことも。

具体策
・短い昼寝またはボーッとする時間をつくる
・生活時間割を変えてみる(勉強の前にお風呂、夜の勉強を朝に、など)
・濡れタオルなどでさっぱりする

成功体験を活用する環境系

環境や香り、音楽などの効果は主観や経験による影響が大きく、自分に合っているかが重要です。「こうすれば、結果が出る」と思えれば、行動と報酬の関係が成り立って自然とやる気がわいてくるように。

具体策
・学習環境を変えてみる(リビングや図書館など)
・気分が上がる音楽をかけて行動する
・集中できる香りを見つける(ユーカリや柑橘系など)

私はこうしていた!現役大学生おすすめのダラダラ撃退法

現役大学生が小・中・高校生のころ、ダラダラしたい気持ちを切り替えて、どのようにやる気を上げていたのかを聞きました!

  • ・家に帰ったらすぐにお風呂に入る。汗を流してスッキリできる上に、早めにお風呂に入ってしまえばその後の時間を有効活用できるので。
POINT
脳がリラックス状態のときの方が集中しやすい
  • ・新学期の第1週目が終わったら、友達と遊びに行く。1週間あっという間だったな、頑張ってよかったなと感じて、もう1週間頑張ってみようという気持ちになれると思う。
  • ・新学期の時期に合わせて始まる新しいドラマを楽しみにしていました。学校から帰ったら毎日何か番組があるから、今日1日も頑張ろうと思えていました。
POINT
楽しみに思える予定が報酬になってスイッチが入りやすくなる
  • ・部屋を掃除して、きれいな空間で勉強をする。
POINT
「片付いたら勉強」というルーティンがスタートをスムーズに

著者 篠原菊紀先生

しのはら きくのり・諏訪東京理科大学教授。専門は応用健康科学、脳科学。「学習」「運動」「遊び」といった日常的な場面での脳活動を研究。テレビをはじめメディアでの解説、脳トレ提案や、教育・学習に関する発信も多い。「子どもが勉強好きになる子育て」(フォレスト出版)ほか著書多数。