【うちの子奮闘記】感情をほとんど現さない息子が号泣する姿に、「こんなに成長したんだ」と胸を打たれた 【うちの子奮闘記】感情をほとんど現さない息子が号泣する姿に、「こんなに成長したんだ」と胸を打たれた

2024.10.23

【うちの子奮闘記】子どもは私ではない別の人。特性に気づいたら、子どもへの理解が深まった。

言葉の理解が得意な第一子の長女、彼女を育てながら「子どもはみんなそうなのだ」と思っていました。しかし、次女との違いがわかるにつれて、それが長女ならではの個性であることに気がつきました。個性を理解し、彼女とより良い人間関係を築き、お互いに気持ちよく暮らしていくために、私が心掛けていることをお話します。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

話せば分かる。子どもはみんなそういうものだと思っていた

小学6年生の長女は、幼い頃から言葉に対する理解が優れており、話がよく通じる子でした。

たとえば3~4歳の頃のこと。普段は、夫婦で交代に子どもを見ていますが、その日はお互いの出張が重なってしまいました。預け先が見つからなかったため、出張先へ向かう途中で実家に長女を預けて、その日はお泊りをして翌朝に長女をお迎えすることに。さらに、その足で保育園に登園をしてもらう…という大人でも混乱しそうなスケジュールのことがありました。このスケジュールを彼女がどれくらい理解できるのか分かりませんでした。しかし、こういう理由でこのように行動するよ、ということをしっかり説明したところ、ぐずることも不安がることなく、つつがなく完遂することができました。

私は「こんな無理は二度とさせたくない」と思いましたが、同時に、「子どもでも、説明をすれば複雑な事情でも納得して行動できるんだ」という成功体験にもなり、子育てに対して自信がついたことを覚えています。
苦いお薬を飲む必要ができたときも、飲む理由や、「この薬は苦いけど、それは治すための成分で、本当は甘くしようとしたけど、できなかったのかもしれないね」などと話せばスムーズに服薬してくれました。ほかのことについても、言葉で説明し、理屈が納得できれば、行動につなげられるということがわかりました。

うちは長女が第一子のため、「子どもはみんなそういうものだろう」と思っていましたが、その考えは次女が誕生したことで一変します。お薬の例でいうと、当時の次女は、言葉で説明しても、納得したからお薬を飲む、ということはできませんでした。
次女の場合は、スポーツを応援するときのような掛け声で気分を盛り上げると飲む、という感じ。長女とは異なり、言葉よりも応援や励まされることで動くタイプでした。長女のときに得た「子どもでも、説明をすれば納得して行動できる」という経験則は、あまり当てはまりませんでした。

そんな次女との違いが分かったことで、当たり前だと思っていた「言葉への理解度が高いところ」が長女の資質だったことに気がつきました。

言葉に関して、苦手なことがあるのがわかってきた

長女の成長に伴い、言葉の理解に関して苦手な部分があることもわかってきました。比喩や暗示のような表現の意図をくみ取ることが難しいらしく、歌の歌詞などは「これ、どういうこと?」とよく聞かれます。

たとえば“二人の海が色あせて見える”という歌詞があったとしたら、私はその歌詞を見て「関係が終わろうとしている二人の悲しみや虚しさの表現」だと捉えますが、彼女は文字通りに受け取ります。海の色がなぜあせるの?と。説明すれば「あ、そういうことか」とわかるので、聞かれたときには、できるだけ丁寧に解説するようにしています。

でもそれは、仕方なく解説しているという感じではありません。自分ひとりなら聞き流す表現で立ち止まり、ああかな、こうかなと考えるのも楽しいし、長女の受け取り方が新鮮でおもしろいとも感じます。そうしたやりとり自体が、長女とのコミュニケーションにもなっています。

また、長女は冗談や建前のような言葉も真に受けてしまいがちです。長女に何か頼まれたときに「じゃあ100円ね」などと冗談で返すと、「本当に払うのか払わなくていいのかわからない。払わなくていいなら、お金の冗談はやめて!」と、すごく叱られます。ごめん!と謝りますが、忘れてまた同じことを言ってしまう私です……。

言葉の意味にしても、冗談にしても、私は絶対に「なんでそんなことがわからないの?」とは言いません。彼女は私から生まれてはいるけれど、私とは別の一個人。別人なのだから、わからないことや受け取り方は違って当然です。そう考えるようになったら、失礼なことや無理解な言葉をぶつけることは自然となくなりました。

子どもの様子をよく見て、少し前の出来事を頭の中でリプレイしてみる

言葉には長けている長女ですが、自分の感情はめったに言葉で表現しません。特にマイナスの感情を表に出しにくいようで、怒りを感じていても、イライラした態度を取るくらい。一見そのように見えないのに、実は怒っていることに気づいてあげられないことも多々ありました。

いつもはそんな言い方をしないのに妙に言葉がきつかったり、次女に対していじわるな感じのことを言ったりするときは、本当は何かに怒っているサイン。最近は、よく観察することで小さな違和感にピンとくるようになりました。

そんなときは、頭の中でビデオテープを巻き戻すようにして少し前の出来事をリプレイし、原因を考えてみます。赤ちゃんの頃は、泣いていると、おむつなのか眠いのか、お腹がすいたのか、一生懸命少し前の状況を思い出して推察します。それと同じことを今でもしているようなものかもしれません。

私がそうやって彼女と向き合う限り、ふたりの関係性においては大きな困りごとは生じないと思っています。でも、私以外との関係や家庭以外のコミュニティーには、同じやり方を持ち込めません。その点は少し心配しています。

心配なことを小学校の校長先生に相談したら、安心の答えが返ってきた

言葉に長けている長女だからこそ、周りのお友だちとの関係性が少し心配だったので、小学校へ入学した頃、校長先生に相談したことがあります。

長女は言葉をよく知っていることもあり、まったく悪意なく、思ったことを率直に人にスパッと言ってしまうところがあるのです。相手が傷ついたそぶりをしても、それを読み取ることが得意ではなく、人の態度をあまり気にしないため発言を悔いる様子もありません。そうした態度がお友達とのトラブルを招くのではないかと心配だったのです。

先生は「彼女のような子が素敵な上級生に育っていくケースを何度も見てきましたから、全然心配ありません」と言い切ってくれました。それを聞いてすごく安心して、学校でのことは、信頼してお任せしようという気持ちになれました。

小学校では、先生にほめてもらいながら、感情を表に出すことや、人との関係性の築き方を、少しずつ学んでいるところです。私も先生方のアドバイスをもらいながら、子どもたちとはできるだけポジティブな言葉でやりとりするように心がけています……が、これがなかなか難しい。

朝の支度の声かけは「早くして!」よりも、「家にまだいたいよね、楽しいもんね」などと言ったほうが、結果、張り切って支度が進むと知識では分かっているけれど、100回のうち99回は「早く!」と言ってしまいます。わかっているのに、ついマイナスの指摘をしたくなってしまう日々です。

まとめ&実践TIPS

今、私は長女の個性を大切にして、良い関係を築くことができています。100%はできていませんが、理解しようとすることを忘れない限り、長女と私の関係性はうまくいくと思っています。もちろん自分との違いにストレスを感じることもありますが、一個人同士ですから違って当然、ストレスを感じて当然だと前向きに考えていきたいです。

今の小学校では長女の個性を理解し、ポジティブに見守ってくれています。ですが小学校を卒業した後までそうとは限りません。そこは悩ましいところです。進学先などを選ぶときには、彼女の希望や胸の内をできるだけ言語化してもらって、叶うところを探してあげたら、あとは本人に任せるしかないと思っています。

個性のためでもそうでなくても、この先も、うまくいかない経験や失敗をたくさんするでしょう。そういう苦い出来事が、何があってもへこたれない力を育ててくれると思っています。

私はこの先もずっと長女と次女の理解者でありたいし、ポジティブな言葉をかけつづけることで、彼女らしく生きられるよう応援したいと思っています。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。