【うちの子奮闘記】感情をほとんど現さない息子が号泣する姿に、「こんなに成長したんだ」と胸を打たれた 【うちの子奮闘記】感情をほとんど現さない息子が号泣する姿に、「こんなに成長したんだ」と胸を打たれた

2024.10.17

【うちの子奮闘記】「うちの子のいいところはどこですか?」と、先生にうかがったことが自信を持たせるきっかけになった

来年、社会人になる息子を持つ母です。小学生の頃、授業に出られなかった息子が、中学に進学してからは授業に参加するようになり、友達も増え、もうすぐ社会人として新しい一歩を踏み出します。

うまく自分の心をことばにできない息子が、居場所を見つけ、少しずつ自信をもって、どのようなきっかけで変わっていったのか、いち保護者として、きっかけと当時の葛藤を振り返ってみたいと思います。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

小さい頃から、はしゃぎすぎたり、こだわりが強かったりすることは分かっていた

息子は就学前から、友達とのトラブルが多かったり、時間通りに行動したりすることが苦手なタイプでした。

実は私も少なからず似たようなところのある子どもだったので、「あ、私と似ちゃったのね」という認識でした。

育児書に載っていた対処法を試したりもしましたが、なかなかうまくいかないとすぐ諦めてしまって続かず……。

発達に関する本も何冊か読んでみましたが、当てはまるところも当てはまらないところもあり、本を読んだだけではわからないと感じていました。

小学校の入学式の日、いきなり担任の先生に怒られてしまったことをはじめに、予想以上に小学校でうまくいかないことがたくさん出てきました。連絡帳を書いてこないので、今日の宿題も明日持っていくものもわかりませんでした。プリントに取り組むときに付き添っても、1時間ずっと消しゴムで遊んでしまい、まったく進まないこともありました。

自分が思ったことを通そうとするあまり、トラブルになることも。友達の手を振り払った拍子に、自分の手が友達に当たってしまったこともありました。

1年生の頃の面談で、担任の先生から学校でのトラブルばかり聞かされたことがあり、家に帰ってから先生に指摘されたことをそのまま伝え、叱ってしまいました。でも息子にしてみれば、ずっと前に学校で起こしたことを、だいぶ後になってまた叱られても何のことかわかりません。雰囲気が悪くなるばかりで、良いことは何もないなと、叱ったあとに反省することもありました。

不登校になる前に校長先生が居場所を作ってくれた

先生から怒られることの多い息子でしたが、それでも学校を休むことはありませんでした。しかしそんな中、3年生のときに授業から抜け出すことが増えました。

3年生から担任になった先生のことを家で話す息子の様子を見ていると、先生が嫌いなわけではないようでした。また、クラスに苦手な子がいるような話も聞いたことがありませんでした。授業に出ない理由を聞いても、本人もうまく言葉にできない様子でした。

この状況に助け船を出してくれたのは、当時の校長先生でした。「授業に出ないなら校長室においで」と言ってくれて、授業が嫌になると、校長室に行くようになりました。

おおらかに見守ってくださる中、息子は校長室の掃除をしてみたり、パズルをしたりして、落ちついて過ごしていたようです。一時期は学校にいる時間の半分以上は校長室にいたと思います。

担任の先生・校長先生だけでなく、学校の先生方は、親身になって息子のことを考えてくれました。何回か、校長、副校長、担任、カウンセラーの先生が同席する面談の機会を設けてくれて、「いちど発達の検査を受けてみますか?」と、提案を受けたのもその席でした。4年生のときです。

自治体の発達支援センターで当時のWISC-Ⅲ検査 ※を受けた結果、診断名は出ませんでしたが、「注意記憶」の点数が平均点よりも低く、聞いたことを記憶するのが苦手なようでした。ただ、授業に出られないのが、そのせいかどうかはわかりませんでした。
※5歳0ヶ月~16歳11ヶ月の児童・生徒を対象とした代表的な知能検査

うちの子のいいところは? 得意なことは? 好きなことは?

1年生のときのように、できていないことばかり本人に言っても、良いことは全くないことがわかったので、検査結果も「よくできていること・ほめられたこと」を中心に読んで聞かせました。

それからは、学校の個人面談でも意識して「うちの子のいいところはどこですか?」と聞くようにしました。担任の先生は、授業で息子が出したアイデアや夏休みの旅行記がおもしろかったこと、うまくできたことや、友達の役に立ったことなども具体的なエピソードを交えて、いくつも教えてくれました。そうすると、私もうれしいし、家に帰ってから「先生がこういうふうにほめてたよ」と報告すると、息子もうれしそうでした。

また、校長室のパズルも、最初はうまくできませんでしたが、先生に解き方を教えてもらったら、すぐにできるようになったそうです。先生や友達から「すごい!」とほめられたそうで、家でも同じパズルを買って繰り返しやるようになりました。

忘れ物もあいかわずでしたが、忘れてもなんとかする方法が身についてきたようでした。工作の材料を忘れたときも、友達から少しずつわけてもらって、かえって豪華な作品をつくっていました。だんだんと教室にいることも増え、自分が考えたクイズがクラスのお楽しみ会で採用され、ウケたことなども話してくれるようになりました。

中学からは部活や授業に参加するように

中学からは運動部に入って、毎日の練習や地域の大会にも参加するようになりました。
また、中学校では授業にも出るようになりました。小学校で身についていない内容も多く、大変だったと思いますが、自分から「この学校に行きたい」と決めた高校に進学することができました。

大人になった今も、運動部で培った走力を生かして、小学生の子と走り回って遊ぶボランティアに参加したり、中学校の部活を手伝ったりもしています。人の役に立ったり、喜んでもらえたりすることがうれしいようです。

同じ悩みをもつ人と話すことで、子どもの成長を信じることができた

振り返って、私がよかったと思うのは、職場の同僚など周りの人に息子のことを聞いてもらったことです。愚痴のときもあれば、こんなことがあったと笑いを交えて話すこともあり、気軽に聞いてもらうことで抱え込まずに済みました。

今でも覚えているのは、息子と似たタイプのお子さんがいる先輩ママに「小さいころは、自分の思っていることをうまく言葉にできなくて、イライラしたり、手を出したりしがちかもしれないけど、成長すると、自分の気持ちを言葉で言えるようになるから行動も落ち着くよ」と言われたことです。「焦らないで、言葉で言えるようになるのを待とう」という前向きな気持ちになれました。

まとめ & 実践 TIPS

成長して、ときにはうるさいぐらいに言いたいことが言えるようになった一方で、相変わらずできないこともたくさんあります。早寝早起きや、行動にかかる時間を見極めることはまだ苦手なようです。親子喧嘩も今でもします。

私も言いすぎたり、失敗したなと思ったりすることがたくさんありました。それでも、いろんな人に助けられながら、成長を見届けることができました。これからも自分のできることを生かして、社会人としてなんとかやってくれれば良いなと願っています。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。