【うちの子奮闘記】「自分だけで抱え込まず、みんなに一緒に育ててもらおう!」そう思ったら振り切れた 【うちの子奮闘記】「自分だけで抱え込まず、みんなに一緒に育ててもらおう!」そう思ったら振り切れた

2024.1.24

【うちの子奮闘記】「自分だけで抱え込まず、みんなに一緒に育ててもらおう!」そう思ったら振り切れた

ベネッセのほーぷさんです。ベネッセで長年、算数教材の開発を担当しています。 私の子どもは就学時検診後、区の保健センターの検査で発達障害の「グレーゾーン」ではないかと判定を受けました。
当時感じた葛藤、さまざまな悩み、少しずつ吹っ切れるようになったきっかけなど、振り返ってみました。

うちの子がグレーゾーン? 就学前健康診断でわかった「ゆっくりだね」の意味

自宅でソファーに座って会話を楽しむ親子

小学6年生の私の長男が、発達障害が疑われる「グレーゾーン」の判定を受けたのは、就学前のことです。

保育園は7人の少人数クラスでしたので、特に困ったことはありませんでした。
ただ、ときどき先生に「ゆっくりだね」と言われることがあったのですが、私は「そういう性格なんだな」としか思っていませんでした。

就学前の健康診断では、息子はじっと座っていられず、ちょろちょろと動き回っては部屋にあるものに触っていました。
面接してくださった校長先生は「保育園で何か言われていませんか」と遠回しにおっしゃいました。

保育園の先生に尋ねてみると「前からお伝えしていましたよね」と言われ、「えっ、“ゆっくり”って、“成長がゆっくりだから発達障害の可能性がある”っていう意味だったの?」と頭が真っ白に。

今思えば、4つ下の次男は同い年の時、ちゃんと座っていられたし話も通りやすかったのですが、長男は第一子なので「子どもってこんなものだろう」と思っていて気づけなかったんですね。

そこで自治体の児童発達支援センターで、子どもの得意・不得意などの発達のバランスを知るために発達の検査※を 受けたところ、特にワーキングメモリー(短期記憶)が弱く、発達障害が疑われるグレーゾーンとの判定でした。

私の住んでいる自治体では、知的障害のない子どもは基本的に通常学級に所属し、発達障害などで支援が必要な子どもは、週に1~2時間程度、「特別支援教室(通級)」で支援を受けることができます。

特別支援教室はほぼ一対一で、とてもきめ細かに支援してもらえるので希望者が多く、支援が必要と認められるまでに時間がかかります。うちの場合は6月に申請し、特別支援教室に入れたのはその年の冬からでした。

特に入学当初は、クラスの担任の先生が本当によく助けてくださいました。連絡帳や電話で、毎日のように先生とコミュニケーションを取っていましたね。

※WISC(ウィスク)。発達障害が疑われる場合、お子さんの得意不得意や支援方法をつかむため、一般的にも広く使われる検査です。実際の診断はWISCの結果だけではなく、国際的な診断基準に当てはめながら行われます。

子どもが「楽しく学校に行ける」。それだけは守りたい

学校で子どもが学習内容や指示をしっかり受け取れるよう、隣に座って個別に指示を出す先生

息子は入学当初「小学校ってルールがたくさんある」とよく言っていました。

たとえば、ランドセルは教室の後ろに置いて、教科書は引き出しにしまう、授業中ノートは教科書の右側に置くなど。息子なりに、 集団行動に一生懸命慣れようとしていたんだと思います。

息子が 「学校に楽しく行く」ことだけは絶対に守りたい。そのためにどうすればいいか、先生とずっと相談していました。

うちの子は多動傾向が強く、じっと座っていることができません。

ですが先生 は「動いちゃだめ」と押さえつけるのではなく、息子をプリント回収係にして授業中に立っても自然に見えるようにするなど、クラスの中でやっていける工夫をしてくださいました。
ほかにも、引き出しの中のものを見つけることが難しいため、隣の空き机に荷物を広げて置けるようにしたり、ノートを取るのに時間がかかるため、黒板を撮影したタブレットを机に置いてくださったり。本当にありがたかったです。

私には「先生を敵に回したらおしまい」という気持ちがありました。

先生の立場からすると、1クラス30人全員を見なくてはいけないのに、うちの子がほかの子と違うから、よりしっかり見なくてはならない。
だから、先生の困りごとと自分の子どもの困りごとの両方を解決しなくてはいけないと思いました。

最初のうちは、「学校でもっと何とかしてほしい」と思うことも正直ありました。
でも、先生に「この保護者は要求ばかりで話がわからない」と思われたら、子どもについて何も言ってもらえなくなる。
だから先生に「困っていることは何でも言ってください」「私ができることは何でもします」と繰り返し伝えていました。

息子は基本的に楽しそうに通学していましたが、運動会の前後はかなり荒れてしまいました。炎天下の集団行動がつらかったようです。
ストレスで、着慣れたTシャツもチクチクしていやだと言い出し、先生はその様子も逐一共有してくださいました。
今では息子も、ストレスをある程度自覚できるようになり、事前に着心地のよいものを自分で選べるようになったのは、大きな成長だなと感じます。

この子は人類の子。みんなで育ててもらおう!と思えるようになるまで

親子と友達と先生が中央に集まっている

振り返ると、特に1年生の1学期は嵐のようでした。
学校に様子を見に行き、息子が教室で一人だけ立ち歩いているのを見るとやはりショックでした。

人との距離感を保てないため、お友達に抱きついてけがをさせてしまったこともありました。
相手のお子さんの保護者のかたに謝罪の電話をすることが何度か重なり、当時はかなり疲れていたと思います。自分の子を、なぜ自分で何とかできないのだろうと考えて悲しくなることもありました。

気持ちが吹っ切れたのは、同じ悩みをもつママ友のMさんと仲良くなってからです。

お子さんも同学年で、特別支援教室でも一緒でした。
それまでは、「うちの子だけがなぜ他の子と同じようにできないのだろう」と悩んでいたのですが、Mさんに「そうそう」「うちもできないよ」と共感してもらっているうちに、少しずつ楽になっていきました。

一人で抱え込んで謝ってばかりでは、私も息子もつらくなってしまう。

自分だけの子どもじゃない、人類の子どもなのだから、みんなで育ててもらえばいい。
周囲の人たちを巻き込んで「一緒に教えてあげてください」という気持ちでいようと思うようになりました。それからは、さまざまな人に相談できる環境を意識して作っていきましたね。

みんなを仲間にする。相談する場をたくさん持つ

臨床心理士に自分の子供について相談する親

1年生の間は、臨床心理士さんに毎月相談に行っていました。
専門家のアドバイスを聞くと気持ちの整理がしやすくなりました。「最短距離はない、失敗を積み重ねていくしかないんですよ」という言葉が印象に残っていますね。

2年生に進級する前には、スクールカウンセラーのかたに「できれば同じ担任の先生がいいのですが」と相談をしました。
「保護者と学校をつなぐのが私たちの役目です」とおっしゃり、校長先生と交渉してくださって、本当にありがたかったです。

特別支援教室には1年の3学期に入ることができ、週2時間、ゲームを通してコミュニケーションを学ぶSST(ソーシャルスキルトレーニング)など、さまざまな支援をしていただきました
以前はゲームに負けそうになると投げ出したり、ズルしてる!と怒ったりしていたのが、少しずつ皆と仲良くできるように。

息子はスポーツが大好きで、6年生になってから自分の意志でサッカーを始めました。
周囲に比べれば遅いスタートではありました が、そこは気にせず、好きなことはやりたいと言える幼さが良い方に出ていると思います。
今では自分で予定を立て、私が起きないうちから朝練に出かけてしまうことも。息子の中に、「ぼくはちゃんとできるんだ!」という気持ちがきちんと育って いるのは、本当に嬉しいですね 。

まとめ & 実践 TIPS

学校に笑顔で向かう子供と手を振って見送る親

発達障害をもつお子さまにはさまざまな配慮が必要です。
でもそれはもしかしたら、環境が違えば困ることはないのかもしれない。
保護者のかただけで抱え込まず、みんなで解決していけばよいのではないでしょうか。

私はお子さまの発達の特性について、まずは「一人で抱え込まない」ことが大切だと思います。
学校の先生方、行政などの力を借り、仲間を増やしていけるといいですね。