じっとしていられない、どう解消する? 発達障害との関係と対応法 じっとしていられない、どう解消する? 発達障害との関係と対応法

2023.11.8

じっとしていられない、どう解消する? 発達障害との関係と対応法

長時間じっとしていることは、多くのお子さまにとって難しいものです。

中には
「みんなが座っている場所で立ち歩いてしまう」
「話を聞かず手をひらひら動かす」
「静かにしていないといけないときに、突然話し始める」
などの行動が、目立って多いお子さまもいらっしゃるかもしれません。

お子さまと保護者のかたが一緒にできる、落ち着いて過ごすヒントを探ってみましょう。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

「じっとしていられない」理由とは?

授業中に落ち着きがなく周りをきょろきょろ見渡す子ども

部屋で静かに遊んでいると思ったのに、すぐに飽きて動き回ったり、勉強している途中、突然大声を出したり。
子どもらしい姿とも言えますが、授業中や外出先などで落ち着きが見られないと、とまどってしまうことも。

じっとするのがニガテな背景には、以下のような理由が考えられます。

・集中力が続かない
・興味のない授業や話で飽きている
・授業の難易度が合っていない
・興味の移り変わりが激しく、興味のあるものに注意を引かれる
・身体的な不快感がある(例えば腹痛や頭痛、目の疲れ、喉の渇きなど)
・周りの友達が騒いでいるので、つられてしまう
・不安やストレスを抱えている
・暑さや寒さを感じている
・運動不足で体を動かしたくなる
・お腹が空いている
・眠い
・トイレに行きたい

6歳ぐらいになると、社会性や道徳性が育ってきて、公共のルール・マナーを理解し、TPOに応じた行動ができるようになってきます。

しかし、発達障害の傾向があるお子さまの場合、我慢の問題ではなく、特性からじっとしていることが難しい場合があります。

発達障害の子どもはじっとするのが難しい?

授業の内容とは関係の無い絵を描く子どもと、授業中に突然席を立って移動する子ども

発達障害の一つである、ADHD(注意欠如・多動症)の特性として、多動性と衝動性があります。
じっとしていないのは、この2つの行動傾向が関係している場合があります。

多動性とは、落ち着きがなく、行動がコントロールできないことです。
すぐに走り回ってしまう、座っていても体をゆすってしまうなどがあげられます。

衝動性とは、衝動にブレーキがかけられないこと。
行列を並んで待つことができない、思いついたことをすぐ口にしてしまうなどがあげられます。

授業中に立ち歩いてしまう、ルールが守れないなど、行動面で目立ちやすく、先生や大人に注意されることも。
本人も注意される理由はわかっているのですが、「やめられない」状態なのです。

一方的に話す子供と、驚く子供

また、ASD(自閉症スペクトラム)のお子さまも、上記のようなADHDの特性が合わせてみられることもありますが、それに加えてコミュニケーションが苦手であることと、こだわりが強い、という2つの特性が関係しています。

たとえば、他の人が話している途中なのに話し始めてしまったり、好きなときに好きなことをしてしまったりすることがあります。

同じ時間、場所、手順といった決まったパターンに強いこだわりがあると、いつもと違うことをしなくてはいけないとき、不安やストレスを感じてパニックになることもあります。

必要な時に「じっとしている」には自尊感情が持てるかかわりを

自宅でソファーに座って会話を楽しむ親子

「じっとしていない」行動傾向は、先生や大人に何度も注意されがちです。
その場に保護者のかたがいたら、「ちゃんとしなさい」と叱ってしまったり、何度言っても変わらず、心配になることもあるでしょう。

ただ、一番つらいのは、お子さま自身です。
注意されている理由はわかっているのに、やめられないからです。
気をつけようとしているのにできない場面が多くなると、「自分はダメだ、できない」と思ってしまうことも。

自信を失わないためにも、大事なのは、お子さまに合った手立てやかかわり方の工夫です。
TPOに応じた行動ができるようになると、「自分はできるんだ」と自分に自信が持てて、自尊感情を持ちやすくなります。
周囲の状況ややるべきことに合わせて自分をコントロールすることは、お子さまにとっても大切な成長の一つですし、保護者のかたにとっても助かるポイントです。

じっとしていられない イライラ・そわそわしてしまうお子さまのサポート

学校のクラスで積極的にプリントを配りにいく子ども

お子さまがじっとしていられない理由はさまざまで、叱ることが逆効果になることもあります。

でも少しでも落ち着いて過ごしてほしい、成長につなげたい、という思いを無理なく行動につなげるため、具体的なサポート方法をご紹介します。

学校や習い事でできること

・じっとしなくても大丈夫な役割(プリントの配布など)を任せる
プリントを配る、先生の補助として、ときどき先生のところに行き、友だちへの指示を伝えるといった、立ち歩いてもいい環境を作ることで、行動が目立たなくなります。

・理由を伝える・終わりの目途を伝える
この時間は静かに席に座っている必要があることを事前に伝えます。そのときに、何分間はじっとしていてほしいなど、終了時間がわかる声かけをすると、お子さまに伝わりやすくなります。

・集団ではなく、個別対応の習い事にする
習い事をするなら、集団よりも個別のほうが、落ち着いて取り組めることが多いといえます。またお子さんの傾向(特性)を伝えておくと、先生もお子さんと接する際に気をつけて見てくれるでしょう。

・刺激の少ない環境を整える
できるだけ刺激が少ない環境にしてもらえると、落ち着いて過ごせる可能性があります。
例えば、
・先生の目の前や、廊下や校庭など、お子さんが気になる場所を避けた座席配置にしてもらう
・壁への掲示物は最小限にしてもらう
・窓はカーテンを閉めてもらう
などの工夫が考えられます。

環境を工夫してもなかなか席でじっとしていられない場合には、トイレに行ってクールダウンするなど、いったん離席を認めてもらうことで、落ち着くことも。

実際に可能かどうか、学校や習い事の先生とも相談してすすめてみてくださいね。

おうちでできること

子どもが我慢できたことに対して褒める親

・落ち着ける環境を整える
お子さまが教科書などを読みやすい色の照明にしたり、エアコンの温度を調節したりしてみましょう。
音に敏感さがある場合にはイヤーマフなどを使うなど、落ち着きやすい環境を整えられるといいですね。

・気になるものを置かないようにする
好きなおもちゃは見えないところにしまうなど、気が引かれてしまうものをいったん見えないようにする工夫も助けとなります。 学習の際には、テレビを消したり、きょうだいが遊んでいる時には場所を分けたりしましょう。

・あとどれくらいの時間じっとしていればいいかを伝える
「あと5分やってみよう」「時計の針が6にきたらおしまい」など、一旦ゴールを示してみましょう。
まだ、宿題などの課題量が多くて集中しにくい場合には、数問先を示して「ここまでできたら教えてね」など、途中で区切りをつけてあげることで、取り組みやすくなります。

・興味を引く教材を使用
数字が好きなお子さまなら点つなぎ、お絵かきが好きなら、塗り絵入りのプリントなどの教材を取り入れてみましょう。興味を引くことで、学習しやすくなります。

・身体を動かす活動や短時間の休憩を作る
可能なら、お子さまの「動きたい」エネルギーを発散させるために、運動や音楽などの活動を取り入れる、話したいことをしっかりと聞いてあげるなどの時間をとってみましょう。
お子さまがすっきりとした気分になり、やるべきことに向き合いやすくなります。

・お出かけには、お子さまの好きなものを持っていく
電車に乗るときや一緒にお出かけするときには、お子さまが楽しんで集中できるグッズを持っていくのもいいですね。
好きなものに集中することで、落ち着くことができます。
お店の列にきちんと並べたり、電車内で静かに過ごしたりすることができたら、見逃さずにほめてあげましょう。

まとめ & 実践 TIPS

授業に音読をする子ども2人

お子さまが落ち着いて過ごせる環境を整え、適切な関わり方をしていくことが、周囲に適応していくための助けとなります。

特に小さい頃の落ち着きのなさは、年齢とともに落ち着いていく面もありますし、いくら適切な方法をとっても、すぐに行動改善が見られないことも多々あります。

少しゆったり構えて、お子さまのいい面を見つめていく。
それでも不安を感じるようであれば、学校の先生やスクールカウンセラーの先生や医療機関等の専門家にも相談し、よりよく過ごせる方法を一緒に考えてもらってくださいね。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。