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2023/12/21
【医師監修】子どもが朝起きられない…原因と対策、起こし方は?チェックリスト付き
なかなか朝起きられないお子さまにお悩みのかたもいらっしゃるかもしれません。睡眠不足や生活時間の乱れが気になりながらも、深刻な原因が潜んでいるのではないかと不安に思うこともあるでしょう。
子どもが朝起きられない原因にはどのようなことが考えられるのか、どう対策すればいいのかについて、東京医科大学教授で小児科がご専門の山中岳先生監修のもと解説します。起きられない原因を探る簡易セルフチェックもご活用ください。
監修者
山中 岳 先生
子どもの心身の成長に向き合う現場を20年以上経験するドクター。経験に加え、日本小児科学会専門医・指導医、日本小児神経学会専門医・指導医、日本てんかん学会専門医・指導医、と数多くの認定資格を所持し、日々、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患、頭痛、発達の遅れ、脳性麻痺など、主に神経疾患のお子さまの診察を行う。東京医科大学主任教授としても、次世代の医師の育成に力を入れている。
朝起きられないのは甘えじゃない! 深刻な原因が潜んでいる可能性も
お子さまが朝起きられずに、登校がギリギリになったり、遅刻したりすると「だらしない」「やる気がない」と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、朝起きられないのは怠けているからではなく、別の理由が隠れていることもあるものです。
本人のやる気や気合の問題と片付けることなく、原因に向き合い、それに合わせて朝気持ちよく目覚められるようなサポートをしてあげたいですね。
朝起きられない時に考えられる4つの原因は? 簡易セルフチェック付き
一口に「朝起きられない」と言っても、その原因はさまざまです。原因ごとに、特徴的な行動や状態をチェックリストとして示しますので、お子さまの状況を踏まえて、原因の見当を付けることにお役立てください。
考えられる原因1:睡眠不足
朝起きられない原因として、最も多いのは睡眠不足です。子どもたちも学校に部活、習い事と忙しい中、家族だんらんの時間やゲームなど息抜きの時間も持つとなると、どうしても寝る時間が遅くなってしまいがちです。また「うちの子は、十分に寝ているはず」と思っても、成長期のお子さまにとっては足りていないことも多いもの。米国睡眠学会が示している子どもに必要な睡眠時間は次のとおり(※1)。お子さまの睡眠時間と比べていかがでしょうか?
● 6〜12歳:9〜12時間
● 13〜18歳:8〜10時間
● 13〜18歳:8〜10時間
<睡眠不足の簡易チェック>
☐睡眠時間が7時間に満たない
☐日中にあくびが多い
☐授業中や帰宅後に寝てしまう
☐休みの日は、いつまでたっても起きてこない
☐集中力が落ちている
☐睡眠時間が7時間に満たない
☐日中にあくびが多い
☐授業中や帰宅後に寝てしまう
☐休みの日は、いつまでたっても起きてこない
☐集中力が落ちている
考えられる原因2:睡眠の質の低下
睡眠時間はとれていても、睡眠の質が低いと十分に脳と体を休められず、朝起きられなくなることがあります。部屋の明るさや温度、寝ている間の音、寝具、スマホやゲーム等の寝る直前の行動など睡眠の質に影響を与えるものは数多くあります。不安やストレスを抱えている場合にも、眠りが浅くなるでしょう。
<睡眠の質の低下の簡易チェック>
☐睡眠時間は十分とれているのに、すっきりしない
☐眠りが浅い
☐何度も寝返りを打つなど寝苦しそうにしている
☐不安やストレスを抱えている様子で元気がない
☐睡眠時間は十分とれているのに、すっきりしない
☐眠りが浅い
☐何度も寝返りを打つなど寝苦しそうにしている
☐不安やストレスを抱えている様子で元気がない
考えられる原因3:起立性調節障害
思春期(小学校高学年~高校生)に多い起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:通称OD)が原因で、朝起きられないケースもあります。起立性調節障害は、自律神経のコントロールが乱れることによる病気であり、次のような症状が見られます。
起立性調節障害の症状
● 朝、起き上がるときに頭痛やめまい、立ちくらみ、倦怠感(けんたいかん)が出る
● 食欲不振
● 動悸(どうき)
● 頭痛
● 午後になると回復することが多い
● 朝、起き上がるときに頭痛やめまい、立ちくらみ、倦怠感(けんたいかん)が出る
● 食欲不振
● 動悸(どうき)
● 頭痛
● 午後になると回復することが多い
起立性調節障害は、「夜更かししているのでは?」「怠けているのでは?」と誤解を受けることも多いですが、体(自律神経)の病気であることを理解しましょう。罹患(りかん)している場合はさまざまな症状で苦しんでいる可能性があります。
下記の11項目のうち3項目以上当てはまる場合は、受診を検討しましょう。
下記の11項目のうち3項目以上当てはまる場合は、受診を検討しましょう。
<起立性調節障害の簡易チェック>
☐立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
☐立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
☐入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
☐少し動くと動悸あるいは息切れがする
☐朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
☐顔色が青白い
☐食欲不振
☐臍疝痛(さいせんつう※)を時々訴える
☐倦怠感あるいは疲れやすい
☐頭痛
☐乗り物に酔いやすい
※臍疝痛:おへその周囲の痛み
☐立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
☐立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
☐入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
☐少し動くと動悸あるいは息切れがする
☐朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
☐顔色が青白い
☐食欲不振
☐臍疝痛(さいせんつう※)を時々訴える
☐倦怠感あるいは疲れやすい
☐頭痛
☐乗り物に酔いやすい
※臍疝痛:おへその周囲の痛み
出典:(『小児起立性調節障害診断ガイドライン 改訂第3版』日本小児心身医学会,2023)
▼起立性調節障害について詳しくはこちら
起立性調節障害とは? 症状や原因、保護者ができることを医師が解説
起立性調節障害とは? 症状や原因、保護者ができることを医師が解説
考えられる原因4:睡眠時無呼吸症候群
大人だけでなく、子どもも睡眠時無呼吸症候群にかかることがあります。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気。体が低酸素状態になってしまいます。
子どもに睡眠時無呼吸症候群が見られるようになった背景には、花粉症などのアレルギー性鼻炎や、生活習慣病の増加で気道が狭くなりやすくなっていることが指摘されています。
子どもに睡眠時無呼吸症候群が見られるようになった背景には、花粉症などのアレルギー性鼻炎や、生活習慣病の増加で気道が狭くなりやすくなっていることが指摘されています。
<睡眠時無呼吸症候群の簡易チェック>
☐いびきが大きい
☐寝ている間、呼吸が数秒間泊まる
☐何度も目が覚め、眠りが浅い
☐寝ながらせき込む
☐いびきが大きい
☐寝ている間、呼吸が数秒間泊まる
☐何度も目が覚め、眠りが浅い
☐寝ながらせき込む
原因別の対策は? 受診を検討するケースも
お子さまが朝起きられない原因ごとに対策法を紹介します。生活習慣に改善が必要な場合は、一朝一夕ではいかないもの。ただし、一度改善されればその後もスムーズにいくことが多いものです。根気強くサポートしてあげられるとよいですね。また、受診が必要な場合は、家庭でなんとかしようとせず、専門的なアドバイスや治療を受けさせてあげましょう。
睡眠不足への対策
十分な睡眠時間を確保できるよう、次のような点に注意していきましょう。
● 決まった時間に寝るようにする
● 寝る前にテレビやゲーム、スマホを見るのを避ける
寝る直前にブルーライトを浴びることとなり、脳が刺激されて入眠が妨げられてしまいます。寝る前30分〜1時間はできるだけ見ないようにしましょう
● 寝る3時間ほど前までには食事を終えておく
食べたものを消化するのには3時間ほどかかります。胃腸が働いている状態だと、入眠しづらいでしょう
● 寝る前にカフェインをとらない
● 寝る前にテレビやゲーム、スマホを見るのを避ける
寝る直前にブルーライトを浴びることとなり、脳が刺激されて入眠が妨げられてしまいます。寝る前30分〜1時間はできるだけ見ないようにしましょう
● 寝る3時間ほど前までには食事を終えておく
食べたものを消化するのには3時間ほどかかります。胃腸が働いている状態だと、入眠しづらいでしょう
● 寝る前にカフェインをとらない
睡眠の質の低下改善への対策
睡眠の質の低下を改善するには、生活習慣や睡眠環境を整えたり、不安やストレスを軽減させたりすることが必要です。次のような点に取り組んでいきましょう。
生活習慣の改善
● 寝る前のゲームやスマホを避ける
● 入眠のルーティンを見つける
「好きな音楽を聴く」「ハーブティーを飲む」「軽いストレッチをする」など入眠前の習慣を決めると、眠りにつきやすくなります
● 日中はよく体を動かす
● 平日も週末も起きる時間を固定する
起床時間を固定すると、それに合わせて眠くなる時間も訪れるため、就寝時間も整えやすくなります
● 朝起きたらカーテンを開け、朝日を浴びる
朝に太陽光を浴びることで、体内時計を整えることができます
● 寝る前のゲームやスマホを避ける
● 入眠のルーティンを見つける
「好きな音楽を聴く」「ハーブティーを飲む」「軽いストレッチをする」など入眠前の習慣を決めると、眠りにつきやすくなります
● 日中はよく体を動かす
● 平日も週末も起きる時間を固定する
起床時間を固定すると、それに合わせて眠くなる時間も訪れるため、就寝時間も整えやすくなります
● 朝起きたらカーテンを開け、朝日を浴びる
朝に太陽光を浴びることで、体内時計を整えることができます
睡眠環境の改善
● 部屋を暗くして寝る
● 室温は18〜24℃程度、湿度は50〜60%程度の不快に感じないレベルに調整する
● 寝具のかたさや枕の高さを調整する
● お子さまが寝ている間の生活音に注意する
● 部屋を暗くして寝る
● 室温は18〜24℃程度、湿度は50〜60%程度の不快に感じないレベルに調整する
● 寝具のかたさや枕の高さを調整する
● お子さまが寝ている間の生活音に注意する
不安やストレスの軽減
● 不安やストレスを話しやすい雰囲気をつくる
● 不安やストレスを無理に聞き出そうとしない
● 不安やストレスを話しやすい雰囲気をつくる
● 不安やストレスを無理に聞き出そうとしない
起立性調節障害への対策
前述のチェックリストで起立性調節障害が疑われる場合は、医療機関で診断を仰ぎ、治療を受けるようにしましょう。
起立性調節障害に対しては、薬を使った治療の他に、自律神経のバランスを整えたり、水分・塩分をしっかりとったりといった生活上の工夫で症状が改善することも。ぜひ医師に相談のうえ、サポートしてあげてください。
起立性調節障害に対しては、薬を使った治療の他に、自律神経のバランスを整えたり、水分・塩分をしっかりとったりといった生活上の工夫で症状が改善することも。ぜひ医師に相談のうえ、サポートしてあげてください。
睡眠時無呼吸症候群への対策
大きないびきをかく、就寝中に呼吸が数秒間止まるようなことがあるといった場合は、耳鼻咽喉科などで診断を受けるのがいいでしょう。診断には自宅での簡易検査に加え、夜間の睡眠状態をみる1泊検査があります。
まとめ
子どもが朝起きられない原因はさまざまです。「怠け心が出ている」「だらしない」ととらえてしまうのでなく、原因がどこにあるのかを考え、親子で一緒に対策をとっていけるといいですね。しっかりとした睡眠がとれると、頭もさえて気分がよく、集中力も発揮され、日中も活動的に過ごせるものです。お子さまがいきいきとした毎日を過ごせるよう、サポートしてあげられるとよいですね。
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