子どもに対し、イライラして怒鳴ってしまいます【前編】[教えて!親野先生]
- 教育
他の二つのクラスは、持ち上がりとわかった時に子どもたちから喜びの大歓声が沸き上がりました。
それに引き替え、私のクラスの子どもたちからは、非常に冷たい反応が返ってきました。
誰一人喜ぶ子はいませんでした。
担任発表が終わって、私がクラスの子どもたちの前に立った時、子どもたちはみんなうつむいていました。
誰一人、私の顔を見てくれる子はいませんでした。
私と子どもたちの双方が、深い絶望に包まれていました。
その時もつらかったですが、そのあとの1年間の長くてつらい日々は言葉で言い表せないくらいのものでした。
そして、結局そのあとの1年間で子どもたちとの信頼関係を取り戻すことはできなかったのです。
それどころか、さらにその溝は深まるばかりでした。
一度壊れた信頼関係を取り戻すのがいかに難しいことか、それを身をもって知りました。
でも、この苦しい日々の中で、私は本当に心の底から反省しました。
勝手に子どもたちにいろいろなものを求め、「こうしなさい」「ああしなさい」と要求し続け、できないといってイライラして叱りつけ、こんなことを平気でし続けていた自分。
自分でも気付かないうちに、子どもたちをあなどりなめきっていた自分。
先生と子どもという力関係に甘えきっていた自分。
子どもたちから完全にノーを突きつけられて、初めて私は心から反省しました。
自分がやってきたことの結果をまざまざと見せつけられて、初めて私は心から反省しました。
信頼関係がない状態で、人間関係が崩壊した中で生活することがどんなにつらいことか。
一度壊れた信頼関係を取り戻すのが、どれだけ難しいことか。
信頼関係がないところで何かを教えたり諭したりすることが、どれだけ難しいことか。
相手に対してしたことは必ず自分に返ってくる。
相手を遇した同じやり方で自分が遇される。
相手をあなどれば自分があなどられる。
相手を攻撃すれば自分が攻撃される。
相手を尊重すれば自分が尊重される。
相手を尊敬すれば自分が尊敬される。
自分がしたことは必ず自分に返ってくる。
こういうことが、身にしみてわかったのです。
それまでのわかり方は、頭だけの理解でした。
でも、この時のわかり方は心からの理解でした。
それで初めて、自分を変えることができたのです。
それからは、イライラして叱りつけたり怒鳴ったりなどということは、一切しなくなりました。
というより、できなくなったのです。
その行為のもたらす結果がどのようなものか、それがはっきりわかったからできないのです。
もちろん、イライラすることはあります。
子どもを相手にしていて、イライラしない人がいるでしょうか?
でも、心の中でイライラしても、それが叱りつけたり怒鳴ったりという行為に至ることはなくなりました。
イライラしている自分に客観的に気付くようにつとめた、ということもあります。
「自分は今イライラしているな」と気付いていると、不思議なことにそれだけで冷静になれるのです。
そして、子どもから離れてお茶を飲んだり深呼吸したりするのです。
それができない時は、呼吸を意識して、吸う息と吐く息を3倍の長さにするのです。
これは、かなり効き目があります。
というのも、イライラしている時は呼吸が短く浅くなっているからです。
このようにして、イライラを子どもにぶつけないようにしていました。
それでも、ある時2年生の子に「あの時、先生は顔はにこにこしていたけど目が怒っていた」と言われてしまったこともありますが。
子どもは本当に鋭いです。
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プロフィール
- 親野智可等
- 教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。