小学校入学準備編 お箸をじょうずに使えない![食育につながるワンポイント]

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「家庭でできる食育」とはなんでしょうか。管理栄養士・医学博士であり、テレビや雑誌などで広く活躍されている本多京子先生にお話を伺います。

公立小中学校の99%でお箸を使用

小学校入学にあたって「子どもがお箸(はし)をじょうずに使えない」ことを心配している保護者のかたもいるようです。 確かに、保護者の時代に比べると最近は学校給食でもお箸を使う場面がとても多くなっています。 文部科学省の調査でも、公立小中学校の99.1%で、給食時にお箸を使用していることがわかりました。
お箸の使い方、食器の使い方、これも親が入学前にきちんとしつけておくべきこと。
「お箸の使用が増えている背景には、米飯給食の普及があります。日本食の文化に慣れ親しむことはもちろん、生活習慣病を予防する観点からも給食で米飯、日本食を多く摂らせようという傾向にあります」(本多先生)

やはり文部科学省の調査では、米飯給食の実施率は国公私立学校全体で99.8%。1週間あたりの実施回数は3.0回と、給食の半分以上は米飯であることがわかります。
「米飯給食の普及に併せるように、お箸も広まってきました。学校給食といえばかつては先割れスプーンでしたが、いわゆる『犬食い』を誘発するなど、日本の食のマナーに反する食べ方を子どもが身に付けてしまうと批判を集め、箸やスプーン、フォークの使用が多くなっています」(本多先生)

入学祝いにホンモノの食器を

そんな状況のなか、「お箸をじょうずに使えるか」は確かに保護者の関心事の一つです。
「給食できちんとお箸を使えるかどうかは、それまでの家庭での食事の在り方次第であることは言うまでもありません」(本多先生)
普段、家庭で先割れスプーンを使わせて「犬食い」を許しているのであれば、給食でじょうずにお箸を使うことはできないでしょう。まず、家庭での食事から改める必要があります。

「私がすすめているのは、子どもの入学祝いに食器を買ってあげること。プラスチックのお箸やお椀(わん)を使っていたのなら、ぜひ木のお箸や陶器のお椀を買ってあげてください。 木や陶器の食器は乱暴に使うと傷んでしまいます。だから、子どもはものを大切に使うことを覚えるのです。ものも人も、乱暴に扱えば傷ついてしまう。ものを大切に使うことをとおして、子どもは人にやさしく接することを学びます」(本多先生)
家族共用ではなく、自分専用の食器であれば、いっそう大切に使うはずですし、家族それぞれが専用の食器を持つことで、子どもは食卓をとおして家族の存在感を確かめることができる、と本多先生は説明します。家族みんながそろっていることを、それぞれの食器が並んだ食卓で確認していくわけです。
「食器を大切に扱うようになれば、お箸の使い方をはじめ食事のマナーは自然に身に付いていきます。そして、ものを大切にし、人を大切にする心が身に付けば、人を不快にさせないようなマナーへの気配りもさらに増していくはずです」(本多先生)

「お箸の持ち方」という表面的なことばかりに目を向けるのではなく、どんな食器を使って、どんなふうに家族と食卓を囲んでいるか、そこでは、ものや人を大切にするような気持ちを子どもは養っているか。保護者としてはそこにこそ注目したいものですね。

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