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はじめてのマンション購入のポイントを徹底ガイド
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「子どもが生まれて家族が増えた」「子どもの入学に合わせて引っ越ししようか」「家賃を払うのがもったいないね」。そのようなきっかけで、マンションの購入を考え始める人も多いのではないでしょうか。ここでは、はじめてのマンション選びのコツや、購入時・購入後のお金について解説します。
この記事の目次
はじめてのマンション選びのポイント
分譲マンションは、家族の生活の拠点であると同時に、大切な資産でもあります。快適に暮らし、かつ資産価値を守るためには、どのような視点でマンションを選べば良いのでしょうか。はじめてマンションを購入する際にはまず次のポイントを押さえておくと良いでしょう。
災害に強い立地
近年日本では、地震や台風、集中豪雨などにより洪水・浸水・土砂災害など多くの自然災害が発生しています。せっかくのマイホームが被害を受けてしまうのは悲しいですね。
マンション選びの際には、自然災害のリスクが少ない立地を選ぶと安心です。
災害に強いエリアを調べたいときは「ハザードマップ」が参考になります。
ハザードマップとは自然災害が起こった時に、被害が想定される地域や避難場所が分かる地図のことです。災害には「土砂災害」「洪水」「浸水」「津波」「高潮」「液状化」「地震による建物の倒壊」などさまざまな種類がありますが、ハザードマップではこれらの災害リスクを確認することができます。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、全国の自治体のハザードマップを検索できますよ。(※1)
住環境・管理体制
周辺の住環境やマンションの管理体制も、これから長い間住むことになるマンションでは大切なポイントになります。
①駐車場・駐輪場・ゴミ置き場
最近はマイカーを持たない家庭も増えていますが、小さな子どもがいるファミリーでは習い事の送り迎え、日常のショッピングなど、マイカーがあるとなにかと便利な時期もあります。そのため、敷地内駐車場設置率(=住戸数に対する敷地内駐車場の台数の割合)や近隣に月極駐車場があるかを確認しておきましょう。
新築マンションでは敷地内駐車場の台数よりも利用希望者が多い場合、抽選や先着順などのルールによって利用できる住戸が決まります。
中古マンションの場合は敷地内の駐車場に空きがあるかを確認しましょう。
また、都市部を中心にカーシェアリングサービスを導入しているマンションが増えています。会員制で、分単位など短時間の料金設定となっており、年間の走行距離が短く短時間の利用が多い家族の場合、マイカーよりもコスト面でお得です。ライフスタイルによっては、カーシェア付きマンションも選択肢のひとつになるでしょう。
意外に不足するのが自転車置き場かもしれません。大人だけでなく、子どもも自転車を持っています。ところが各戸に1台程度しか自転車スペースがないマンションもあります。自転車置き場に余裕があるか、また毎月の駐輪料金についても確認しておきましょう。
②マンションの居住者
マンションは、ひとつの建物に多くの世帯が居住する一種のコミュニティです。そのため、同じマンションにどのような人・家族が住んでいるかは、快適なマンションライフを送るための大切なポイントとなります。
マンションには、シングル・カップル・ファミリー・シニアなど、さまざまな居住者がいます。そのなかでも年代や家族構成が近い居住者が多いと、趣味や子どもを通じたお付き合いなど、コミュニティが作りやすくなります。
新築マンションの場合は、モデルルームを見学する際に他の来場者を見ると、どの年代が多いのかがおおよそ把握できます。
また中古マンションを見学する際には、子ども用の自転車が置いてあるかを確認したり、管理人に居住者の年齢層を尋ねてみるのも良いでしょう。
③マンションのセキュリティ
防犯上、マンションのセキュリティは大切です。
エントランスにオートロックがあると安心感はありますが、それだけでは不審者の侵入を完全に抑止することはできません。防犯カメラや警備会社との契約など、他のセキュリティシステムと組み合わせているマンションは安心度が高くなります。
④周辺の治安
いくら駅から近くて利便性の良い立地でも、目の前が繁華街だったり、風俗店などが近くにあったりすると治安が心配です。反対に、人通りのない暗い夜道を通らないと帰宅できないというのも不安ですね。周辺の環境を確認するとともに、日中だけではなく、夜も駅から歩いてみたり、近隣を散歩したりして住環境を確認するようにしましょう。
⑤小中学校の学区、近隣の保育園・幼稚園
子どものいるパパ・ママは、通学区の小中学校や近隣の保育所・幼稚園などの情報も気になるでしょう。保育所の待機児童数は市町村のHPなどで確認できます。最近では、公立の小中学校でもさまざまな特色を出しながら教育をしています。小中学校の雰囲気やアクセスなどもチェックしておくと良いでしょう。
⑥駅や商業エリアへのアクセス
通勤・通学や、日ごろの買い物のためのアクセスの良さはマンションのセールスポイントのひとつです。そこで、多くのマンションの広告では「駅まで〇分の近さ!」「○×ショッピングセンターまで徒歩〇分」などと通勤通学や買い物などの利便性をうたっています。
法律では、徒歩何分という表示をする場合、80mを1分として計算することになっています。
これは、実は同じ徒歩5分の表示でも、320m超から400m未満と、距離に80mもの幅があることを意味します。
また、たとえば途中に大通りや踏切がありいつも数分間の信号待ちなどをするような場合でも、徒歩表示には関係ありません。そのため、実際に歩いてみて確かめることが大切です。
つけ加えると、マンションでは通勤時などの混雑している時間帯ではエレベーター待ちという時間が発生することも考えられます。その点も考慮しながら所要時間をチェックしましょう。
⑦管理形態・管理会社
マンションは管理でその価値が決まるといわれるほど、マンションの管理は重要です。
マンションの管理形態には、大きく分けて、常駐管理、通勤管理、巡回管理があります。
常駐管理は、いわゆる「住み込み」のことです。大規模なマンションで採用しているケースが多く、管理人の勤務時間はありますが、緊急時には夜間でも対応してくれます。安心感が大きなメリットですが、管理形態のなかでは最もコストが高くなります。
通勤管理は、管理人が平日管理室に出勤する形態を指し、常勤管理に比べてコストは低くなります。最も多く採用されている管理形態です。
巡回管理は、決まった曜日の一定時間に管理人が巡回し、共用部やごみ置き場の清掃などを行います。管理形態のなかではコストは最も低くなりますが、きめ細かいサービスには対応できません。
なお、大規模なマンションや高級マンションでは、コンシェルジュサービスとして、宅配便の預かり、タクシーの手配、共用スペースの予約などのきめ細かいサービスを提供するマンションもあります。
管理形態の確認とあわせて、管理会社の評判もチェックしておきましょう。
将来を見越して選ぶマンションの間取り
マンションの購入を検討する際に、間取りの選択は大切なポイントです。
結婚後、第一子の出産、子どもの入学時など、ライフステージにより必要な広さや部屋数も異なります。
ただし、賃貸マンションではライフステージに合わせて気軽に住み替えができますが、マンションを買い換えることはなかなかたいへんです。
長く居住することを前提にするのであれば、購入時のライフステージに合わせて間取りを選ぶのではなく、子どもは何人欲しいかなど、将来の家族数やライフスタイルを想定してプランを選択することが望ましいと言えます。
たとえば、結婚をきっかけにマンション購入をする場合、購入時には、2人家族なので1LDKや2LDKで十分でも、将来子どもを2人希望していれば、4人家族に対応できる3LDK以上の間取りがないと、いずれ狭くなってしまいます。
最適な間取りは「今の最適」ではなく、「将来の最適」を基準に選びましょう。
また、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、働き方を含めライフスタイルが変化しつつあります。テレワークやローテーション勤務、オンライン会議など、働き方の新しいスタイルの広がりに伴って、自宅での勤務にも対応できるように、仕事場の確保もこれからの間取りの選択にあたりポイントのひとつになるでしょう。
マンション購入時にかかるお金
諸費用と関連費用
マンションを購入する際には、購入価格以外に「諸費用」や「関連費用」がかかります。
そのうち諸費用には以下のような種類があります。
・印紙代
・登記費用 …登録免許税+司法書士の報酬
・火災保険料
・地震保険料
・住宅ローン費用 …印紙代、ローン保証料、事務手数料、抵当権設定登記など
・適合証明手数料 …フラット35を利用する場合
・修繕積立基金 …新築マンション購入の場合
・仲介手数料 …中古マンションを不動産会社の仲介で購入した場合
・固定資産税・都市計画税の精算金 …引き渡し日以降の税金は買主の負担となります
・不動産取得税 …購入時から数か月後にかかりますが、軽減によりゼロの場合もあります。
なお、新築マンションには建物価格の10%の消費税がかかりますが、販売価格に含まれているため、諸費用とはしません。また、中古マンションを個人から購入する場合には消費税はかかりません。
一般的に諸費用は、新築マンションの場合、物件価格の6%程度、中古マンションの場合は8%程度が目安とされています。
たとえば、3,500万円の新築マンションの諸費用は、3,500万円×6%=210万円程度。
2,500万円の中古マンションの諸費用は、2,500万円×8%=200万円程度。
諸費用は住宅ローンの対象にはならないため、自己資金で準備をしておく必要があります。
諸費用の金額は、購入するマンションや資金計画などによって異なるため、購入前に必ず販売会社や仲介会社から詳細の計算書を作成してもらってください。
関連費用とは、引っ越し代や、家具、エアコンなどの家電、照明器具、カーテン代などは、購入したマンションで新しい生活を始めるにあたり必要となるお金です。家具や家電などは、全て新しくそろえると大きな金額になってしまいます。以前から使っていて引っ越し後も使うものと新規に購入するものをきちんと分けて予算を把握しておきましょう。
契約時の手付金とは?
マンションの契約時には手付金を支払います。
手付金の額は、契約前に売主と買主の間で取り決めをします。一般的には、マンションの価格の1割から2割程度とすることが多いですが、50万円や100万円を手付金とするケースもあります。なお、売主が宅建業者の場合、20%を超える手付金を授受することはできません。
通常、手付金のことを解約手付といいます。買主は、売主が建物を引き渡す前であれば、支払った手付金を全額放棄することで、売主は、買主が中間金や残金を支払う前であれば、手付金を返還しさらに手付金と同額を買主に支払うこと(倍返し)で、契約を解除することができます。
頭金と住宅ローン
頭金とは、マンションの購入価格と住宅ローンの金額との差額のことをいいます。頭金と諸費用、付帯費用を合わせた金額が自己資金です。
頭金が多いほど、住宅ローンの借入額が少なくて済みます。それぞれの家庭の状況によりますが、一般的には購入価格の2割程度を頭金とすることが望ましいと言えます。
頭金だけではマンションの購入価格に足りない場合に、不足額を住宅ローンとして借り入れます。
主な住宅ローンには、銀行など民間の金融機関の住宅ローンと、住宅金融支援機構のフラット35があります。
さらに、フラット35には、省エネルギー性・耐震性・耐久性などで質の高いマンションを購入した場合に、一定期間、金利が引き下げられる「フラット35S」という金利優遇制度があります。金利の引き下げ幅は0.25%で、引き下げ期間は、高い性能基準を満たした「金利Aプラン」では10年間、Aプランの性能基準に満たない「金利Bプラン」は5年間と、より性能が高いマンションのほうが長期間優遇が受けられます。(※2)
その他の融資には、財形住宅融資や勤務先からの住宅融資などがあります。
住宅ローンの金利のタイプには、変動金利型と固定金利型があります。変動金利型の一種に、3年・5年・10年など、当初一定期間だけ金利が変わらない固定金利特約型もあります。
固定金利型は、借入期間中ずっと金利が変わらないのに対し、変動金利型は半年ごとに金利を見直します。現在は変動金利が固定金利よりも低い状況が続いていますが、今後もそれが続くとは限りません。長期的に見ると金利は変動します。景気が回復すると変動金利型の返済額が上がってしまい、生活費を圧迫する可能性もあります。それぞれのメリットとリスクを十分に理解して金利タイプを選択するようにしましょう。
諸費用
建築請負契約に関わる印紙代、新たに建物を建てたことを登録するための表示登記登録免許税及び司法書士費用(土地購入費にある「契約時の印紙代」「登記費用(所有権移転登録免許税及び司法書士費用)」とは別に必要)、また火災保険料などが該当します。また地鎮祭などの神事に関わる費用などもこの諸費用に含まれます。
マンション購入後にかかるお金
住宅ローン返済
マンションの購入後にかかる最も大きな費用は住宅ローンの返済ではないでしょうか。
収入に対して住宅ローンの返済の割合が高すぎると、生活費を圧迫する可能性があります。そのため、無理のない返済額に抑えることが大切です。手取り収入に対する返済額の割合を返済比率と呼び、返済比率は手取り収入の25%以内を目安として計画を立てることをおすすめします。
マンションの維持管理費用
マンションの維持管理費用には、管理費、修繕積立金、駐車場・駐輪場の使用料、専用庭の使用料などがあります。
そのなかでも、維持管理費用に占める割合が高く重要なものは、管理費と修繕積立金です。
管理費は、マンションの管理業務の報酬として管理会社に支払われる委託費のことです。
管理業務とは、管理人が行う共用部やごみ置き場の清掃の他、エレベーター・受水槽など設備の保守点検、植栽の剪定などを指し、マンションの管理組合から業務を委託された管理会社が行います。
一方の修繕積立金は、外壁の塗り替え・防水工事などの大規模修繕や、備品設備の修理・交換などに備えるために毎月一定額を積み立てる金額のことです。特に大規模修繕は10年から15年ごとに必要で多額の工事費がかかるため、長期修繕計画に基づいて適切な金額を積み立てる必要があります。しかし、なかには必要額に対して積立額が不足しているマンションもあり、満足な修繕工事が行えない恐れもあります。特に中古マンションを購入する際には、修繕積立金が必要額に対して足りているかを確認しましょう。
なお、維持管理費用は、管理内容の変更、修繕積立金の不足、物価の変動、法律の改正などの影響により値上がりすることもあるため、購入時には将来値上がりした場合でも耐えられるように余裕のある資金計画を立てておくことが大切です。
税金
マンションを購入すると毎年、固定資産税と都市計画税がかかります。これらの税金は、毎年1月1日現在のマンションの所有者に対し、市町村が課税する地方税です。
なお、新築マンションの場合、固定資産税の軽減の特例があり、当初5年間(長期優良住宅に認定されている場合は7年間)、固定資産税の税額が2分の1になります。
資金計画を立てる際には、毎年の税金も忘れずに押さえておきましょう。
はじめてのマンションの購入に活用したい制度
住宅購入を支援するためのさまざまな制度を知っておくと、お得にマンション購入をすることができます。
住宅ローン控除
住宅ローンを借りて、一定の要件を満たすマンションを購入した場合、住宅ローンの年末残高の1%が所得税から控除されます。所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から13万6,500円を限度に控除することができます。
なお、2020年12月31日までに入居する場合は控除期間が13年間ですが、2021年以降の入居については控除期間が10年間に短縮されるため注意してください。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で入居が2020年12月31日より遅れてしまった場合は、一定の適用要件を満たし2021年12月31日までに入居すれば13年の控除期間が適用になります。(※3)
すまい給付金
すまい給付金は、一定の年収などの要件を満たす場合に、最大50万円を給付される制度で、2021年12月までに入居する人が対象となります。給付は一定の収入以下の人に限られ、給付額は収入や家族構成により異なります。詳しい給付額のシミュレーションは、すまい給付金の事務局のホームページで確認ができます。(※4)
住宅取得資金贈与の非課税の特例
マンションの購入資金の一部を親や祖父母から贈与を受けた場合、一定の金額までは贈与税がかからない非課税制度があります。
この特例の適用を受けるには、2021年3月31日までに売買契約を締結することが条件となります。
また、契約締結時期により非課税限度額が異なります。2021年3月31日までにマンションを購入した場合の非課税限度額は、省エネ住宅の場合1,500万円、それ以外の住宅の場合は1,000万円となります。
はじめてのマンション選びに検討したいブランド
大手のデベロッパーが分譲しているマンションは、一般的にブランド名がよく知られています。
代表的なブランドには、三井不動産の「パークホームズ」、三菱地所の「ザ・パークハウス」、住友不動産「シティハウス」、野村不動産の「プラウド」などがあります。
ブランドマンションは一般的に価格が高めですが、立地が良く、比較的大規模な物件が多いのが特徴で、管理体制もしっかりしています。さらに知名度が高くブランドイメージも良いので、リセールバリューも維持しやすく、将来売却する場合にも有利と言われています。
ブランドマンション以外にも、地域によって人気のあるブランドもあるので、特徴や評判を調べてみることをおすすめします。
はじめてのマンション選びに大切なこと
住まいは人生で最も大きな買い物と言われています。それだけに失敗はしたくないもの。
マンション選びに際しては、正しい知識と新しく正確な情報がとても大切です。
さらに「自分の眼」で見て、確認して、納得することが、より高い満足度につながります。
ぜひ、夢のマンションライフを実現してください。
出典:
(※1)国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
(※2)住宅金融支援機構「フラット35・S」
(※3)国土交通省 令和2年4月7日報道発表
(※4)すまい給付金事務局「住まい給付金シミュレーション」