うちの子は、よその子よりも早い段階で、1から100までを数えられていたこともあって、私はてっきり算数が得意な子になると思っていたんです。
そういうお母さん、実は多いんですよ。
うちも、小さいときから、一緒に湯船に浸かって、「100まで数えたら出ようね」なんてやっていました。
うちも数える練習はよくやってきたわ。
お母さんたち、今、「数える」と言いましたね。もしかするとお子さんたちは「数える」ことはしていないのかも。特に小さい子どもが「イチ、ニ、サン、ヨン、ゴ」と言うとき、それは「あ、い、う、え、お」と同じ暗記の感覚で言っていることがあるんです。数が「言えること」と、数を「数えられること」は全くちがうなんて言うと、ちょっとショックを受けちゃうかな。
ちょっとどころか、かなりショック…。そんなこと考えたこともありませんでした。
いやいや、大丈夫! 「言える」を「数える」にするのは、簡単な一工夫をするだけです!
でも、いまいち、「言える」と「数える」がちがうということがわかりません。
たしかに、数える概念がすでに身についている大人には、逆に難しいことなんですよ。わかりやすく説明するために、僕が飼っていた犬の話をしますね。だいぶ前のことですが、僕は、犬に「4」と「5」の違いを理解させようと思って、1枚のお皿に4枚のビスケットを、もう1枚のお皿には5枚のビスケットを置いてみたんです。要は、多い方を選ばせる実験です。
でも、犬が選ぶのは、そのときたまたま見ているほうのお皿で、いつも5枚のほうを選ぶということはできませんでした。このように、抽象的な数の概念を理解することは、とても難しいことなんです。
なるほど。では、どうすれば・・・?
たとえば「5」の概念を理解させるのであれば、5人、5羽、5枚のような絵や実物を見せてあげるといいかな。
全部同じ数で統一しておいたほうがいいのかしら。
とてもいい質問です!最初のうちは5人、5羽、5枚と、「5個の何か」だけで練習をしてください。
それに慣れたら、「5個の何か」のほかに、4人、6羽、7枚など、ちがった個数のちがうものの絵を混ぜてみて、その中から、5個が描かれている絵を選ばせる。これが、さっき僕がいった「一工夫」。
ただ数字を言わせるよりも、ずっと楽しそうですね!
遊びみたいに思うかもしれないけれど、これこそ立派な「数える」訓練。この「数える」という概念を子どもたちに理解させるには、日本の小1の算数の教科書はちょっと物足りない感じなんです。なので、ここはぜひ、お母さんたちに家庭で一工夫をしてもらいたいなと。身近なものを使って、楽しみながら「数える」訓練をしていけば、「言える」ことは退屈でも「数える」ことは楽しいと気づくはず。