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琉球王国の象徴『首里城』とは? 『首里城』の歴史と琉球王国繁栄の秘密

『首里城』とは? 『首里城』を巡る歴史と世界遺産としての『首里城跡』

『首里城』は、現在の沖縄県那覇市首里にあったグスクで、別名『御城』(うぐしく)とも呼ばれます。築城の年代や築城主は明らかになっていませんが、発掘調査などの結果から、13世紀末から14世紀には存在していたと推定されています。1429年、尚巴志(しょうはし)が当時「南山・中山・北山」の3つに分かれていた国を統一して琉球王国が誕生すると、『首里城』は琉球王国の王城として、「政治・外交・文化」の中心地となります。

尚巴志による統一王朝が成立した約40年後、農夫出身の金丸(かなまる)が起こした武力行使により、新王朝が誕生します。政権を奪取した金丸は尚王家を継承して尚円王(しょうえんおう)と名乗り、『首里城』も引き続き尚王家の居城として使われました。琉球王国の歴史の中では唯一の大きな政権交代であったため、尚巴志からの王朝を第一尚氏王統、尚円王からの王朝を第二尚氏王統として区別しています。

第二尚氏王統は以後19代、約400年に渡って続きます。しかしその間、1609年に薩摩藩(現在の鹿児島県全域と宮崎県の南西部)が琉球王国に侵攻し、以後270年間薩摩藩の支配下でありながら、中国にも属し、なおかつ徳川幕府に朝貢する国であるという立場の中で、琉球王国として存続していきます。しかし1879年、明治維新によって成立した日本政府は琉球王国に侵攻、第二尚氏王統第19代の国王であった尚泰(しょうたい)に東京居住を命じ、琉球王国は滅亡の時を迎えました。

琉球王国の時代から、度重なる火災によって焼失と改築・再建を繰り返していた『首里城』ですが、第二次世界大戦中の沖縄戦の際に完全に消失してしまい、『首里城』一帯は焼け野原となります。1992年、県民の悲願もあって『首里城』は復元され、2000年には、『首里城跡』として、『琉球王国のグスク及び関連遺産群』の名称で世界遺産に登録されています。

2つの大国に挟まれた歴史を持つ琉球王国から学ぶ、受け入れの精神

『首里城』では、琉球王国が270年もの長きに渡って中国と日本の支配を受けていたことから、中国と日本両方の特徴が取り入れられた、独自の建築様式が築かれます。そのことがよく分かるのが、『首里城』の象徴とも言える建物の『正殿』です。

『正殿』は、中国の皇帝の居城である『紫禁城』(しきんじょう)を見本としていると言われています。至るところに龍の装飾が見受けられ、『正殿』2階の大庫理(うふぐい・様々な儀式や祝宴が行われた空間で、日常的には王妃や女官たちが使用していた)にある御差床(うさすか・国王の玉座)の壇の側面には、ぶどうの木でたわむれるリスの文様が彫られています。龍は中国ではめでたいものとされており、権力者の象徴として『紫禁城』でも多く用いられています。ぶどうとリスの文様も中国でよく見られるもので、実がたくさん実るぶどうと繁殖力が強いリスにあやかって、「王家の繁栄がいつまでも続いていくように」との願いが込められているそうです。

一方で、そこかしこに日本風の建築様式を見ることもでき、中国と日本の良い部分を巧みに取り入れて、琉球流にアレンジした独自の意匠がうかがえます。

また、『正殿』の両側にある「北殿・南殿」は、それぞれ中国と日本の様式に分けられています。全体が赤に染められた中国様式の北殿は中国使節を受け入れる場所として、ほとんど着色がない日本様式の南殿は薩摩藩の使者を迎える場所として利用されました。『首里城』は都の外交を行う場所としての側面も持っていましたが、この2つの建物は琉球王国の外交力の高さを裏付けています。

内に閉じこもってしまうのではなく、外に開くことで、海外の大きな勢力とも上手く付き合いながら、良い部分は取り入れていく風土があったからこそ、2つの大国の間にありながらも、長らく琉球王国として栄えていくことができたのかもしれません。

ライトアップで照らされた美しい『首里城』へ行ってみましょう

『首里城公園』内は大変広い敷地ですが、順路がある程度決められているため、1時間~1時間半程度の所要時間で見学することができます。『首里城跡』以外の遺産もまわろうと考えているかたは、少し時間に余裕を持ったほうがいいかもしれません。

また、『首里城』では、日没から24時まで、毎日城郭のライトアップを行っています。特に、龍潭(りゅうたん・尚巴志の命で作られた人工池)から臨む遠景は絶景です。昼間の『首里城』とはまた違った幻想的な風景を、ぜひお楽しみください。

アクセスマップ

名称:首里城公園
時間:無料区域 4月~6月と10月~11月は8時~19時30分、7月~9月は8時~20時30分、12月~3月は8時から18時30分
有料区域 4月~6月と10月~11月は8時30分~19時、7月~9月は8時30分~20時、12月~3月は8時30分から18時(いずれの期間も受付は閉館時間の30分前まで)
休日:7月の第1水曜日とその翌日(有料区域内施設と首里杜館のみ休館)
料金:大人820円、高校生620円、小・中学生310円、6歳未満は無料
住所:沖縄県那覇市首里金城町1丁目2番地
電話:098-886-2020
※情報は変更されている場合があります
※2017年11月現在

監修者プロフィール
河合 敦(かわいあつし)
多摩大学客員教授。歴史研究家。1965年東京都生まれ。多数の歴史書を執筆するとともにテレビやラジオなどのメディア出演多数。
代表的な著書に『日本史は逆さから学べ!』(光文社知恵の森文庫)、『もうすぐ変わる日本史教科書』(KAWADA夢文庫)などがある。

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