子どもの瞳が輝き出す「聴き方」とは[やる気を引き出すコーチング]

  • 子育て

先日、大人向けのコーチング講座に、たまたま、小学校6年生のお子さんが参加してくれました。お母さんが受講したいけれど、お子さんをどこにも預けられず、一緒に連れてきてしまったということでした。せっかくなので、大人と一緒に参加してもらうことにしました。
夕方から夜にかけて、2時間休憩なしの講座でしたが、少しも飽きることなく、最後まで集中して参加してくれました。その姿に、私たち大人も、とても励まされ、心洗われる思いがしました。
講座終了後、このお子さんに、感想を聴かせてもらいましたので、ぜひ、こちらで紹介したいと思います。

自分の話を聴いてもらえた気持ち

「今日は参加してくれて、本当にありがとう! けっこう長い時間だったけど、疲れなかった?」
「ぜんぜん! すごく楽しかったです!」
「そう! どんなところが楽しかった?」
「先生の話を聴くだけじゃなくて、自分たちも、グループの人と話しながらやれたので、楽しかったです」
「他の人と話せて楽しかったんだ」
「はい! 大人の人がすっごくたくさん話を聴いてくれて、なんか、上手に話せないことも待ってくれて、私の話を聴けるのが『嬉しい!』って言って聴いてもらえて、すごく嬉しかったです」
「大人も、小学生の○○さんと一緒に勉強できて、とても嬉しかったと思うよ」
「ふだん、こんなに話を聴いてもらうことはないです。聴いてもらうと、『もっとがんばろう!』みたいな気持ちになりました。今日は本当に来てよかったです」

キラキラと輝く瞳を見ていると、こちらまで心があたたまりました。興味を持って、ただ聴いてもらうだけで、子どもはこんなに輝くんだと感動しました。

ジャッジと操作を手放して聴く

実は、この子と同じグループだった大人の皆さんは、すでに、コーチングを学習済みのかたがただったので、話の聴き方も心得ていらしたのでしょう。

コーチングの聴き方は、「自分が聴きたいことを聴く」のではなく、「相手が言いたいことを聴く」という聴き方です。自分が持っている「価値観のものさし」はいったん全部手放します。否定や批判は一切しません。「それは違うよ」とか「ダメだよ! そんな考え方じゃ!」などと口をはさみません。「そこはもっとこうしないとうまくいかないよ」などの説教もしません。

良いとか悪いとか、合っているとか間違っているなどのジャッジ(判断)を一切せず、「この子はそう思っているんだ。そんなふうに考えたんだ」と、ただ受け取ります。「私がこの子の課題を解決してあげる」とか「こっちの方向に導いてやらねば」といった相手を操作しようとする気持ちも脇に置きます。これらのジャッジや操作を手放して、「ただ聴く」だけで、子どもたちはどんどん輝き出すのです。

このお子さんの言葉で、さらに印象的だったのがこちらです。
「学校の先生で、『お前にわかるか? どうせわからないだろう?』っていう雰囲気の先生がいるんです。そういうふうに思われてると、もうすごくやる気がなくなるんです」。言葉に出さなかったとしても、子どもには伝わっているのですね。

なんとかしようとしなくても大丈夫

よそのお子さんだと、案外、ジャッジと操作を手放して、「ただ聴く」ができるようですが、自分の子どもとなると、「何か言ってやらねば」となりがちです。でも、こちらが、なんとかしようとしなくても大丈夫です。

子どもが話したいことをただ聴くだけで、子どもは自分で考え、自分で行動するようになっていきます。「聴いてもらえた!」という気持ちは、嬉しさと共に、「大切にされている」という自己肯定感をも生み出します。やる気を引き出したければ、「やる気を引き出してやろう!」という気持ちさえ手放して、お子さんの話にただ耳を傾けてみてください。お子さんの様子に、こちらもやる気を引き出されるはずですよ。

(筆者:石川尚子)

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石川尚子