2014/06/06
[第2回] ICTを活用している教員/未活用の教員 [2/3]
【ICT活用度別】 授業でICTを活用できた要因
少なくとも現段階では、授業にICTが普及しているとはいえない。そのための推進役・研究担当者が多くはない(注4)という事情とも重なってくる。図4は、ICT活用区分別に、回答者自身が「ICT活用の推進・研究を担当しているか」をたずねた結果である。そもそも、自分が担当者であるという回答は低い(小学校16.3%、中学校10.0%)。しかし、「高活用」では、自分が担当者であるという回答が多くなっている(小学校26.7%、中学校20.2%)。「高活用」の教員が、学校内でICT促進のために果たすべき役割は大きい。
図4 小中学校別 活用区分別 自分がICT推進・研究担当である(一般校+実践校)
注4)報告書11ページを参照。
ICT利用者のみであるが、活用区分別にICTを授業に活用できた要因をみたものが、図5である(注5)。項目によっては違いもあるが、おおむね、「低活用」<「中活用」<「高活用」の順で回答割合が高くなっている。ICT活用促進のための機会を活用できたことが、「高活用」になっていると考えられる(注6)。
図5 小中学校別 活用区分別 授業でICT活用できた要因[ICT活用者のみ]
注5)報告書30ページと同じ分析と結果であるが、全体と「中活用」数値は初出となる。
注6)「低活用」「中活用」も今後、促進機会を有効に活用することで「高活用」になる可能性が十分考えられる。
注6)「低活用」「中活用」も今後、促進機会を有効に活用することで「高活用」になる可能性が十分考えられる。
【ICT活用度別】 子どもに身についた力/身につけさせたい力、授業で意識している力
活用区分別に、教員の教育観、授業実践についてもみていきたい。
表1は、自分の学級の子どもに対して、「身についている力(ほぼ+まあ)」、「身につけさせたい力(とても+まあ)」(a~mの13項目)の回答をみたものである(注7)。「身についている力(表内:上段)」については、おおむね「高活用」の回答割合が高い。つまり、ICTを活用している教員は、子どもにこれらの力が身についていると肯定的に受けとめている。一方で、ICTを活用していない(=「低活用」)教員は否定的に受けとめており、その差異は大きい。現在の「身についている力」への受けとめ方に違いがあるものの、今後に「身につけさせたい力(表内:下段)」については、活用区分にかかわらず、教員全体として回答割合が高い。教員は子どもに多様な力を身につけさせたいと感じている。
表1 小中学校別 活用区分別 子どもに身についている力・身につけさせたい力(一般校+実践校)
注7)報告書では、21-22ページで一般校の単純集計結果が掲載。
しかし、現在の授業実施となると、活用区分別に差異がみられる。表2は、表1で示した項目に対応する「力の育成を意識した授業を実施している(よく+ときどき)」の回答をみたものである(注8)。この結果についても、小学校、中学校ともにおおむね、「低活用」<「中活用」<「高活用」の順で回答割合が高い。「高活用」の教員は、授業において多様な力を育成することを心掛けていることがわかる。一方、「低活用」の教員は、いくつかの力の育成(たとえば、「基礎的・基本的な知識・技能の習得」「課題を解決する力の育成」「主体的に行動する力の育成」「自分の意見を伝える力の育成」「友だちと協働する力の育成」など)を重視していることがわかる。
表2 小中学校別 活用区分別 力の育成を意識している授業[現在](一般校+実践校)
注8)報告書では、23ページで一般校の単純集計結果の一部が掲載。
表1の結果のように、教員は子どもへ多様な力を身につけさせたいと思っている。しかし、表2のように、意識した授業を実施していると思っているのは「高活用」の教員である。「低活用」「中活用」の教員も、ICTの活用を高めることにより、自身も望んでいる、子どもに多様な力を身につけさせるための授業も実施できるようになるのではないか(注9)。いずれにせよ、授業実践とICT活用とは関係があることがわかる。
注9)もちろん、多様な力を身につけさせる授業を実施することによって、「高活用」となる可能性もある。