2017/03/22

[第3回] 自ら考える思考力を育むために大切なこと [2/4]

Q. 思考力は、どのように発達していくのでしょうか?

A. 思考力は児童期に基礎が形成されます。さらに、そこから社会で使える力となるよう洗練させていくことが必要となります

 批判的思考力における論理的思考とメタ認知の発達は、人間の発達に伴ってステップを踏んで育っていきます。幼児期から日常生活の様々な経験を通して芽が育ち、それに加えて小学校の国語では事実と意見を区別したり、理科の実験では因果関係を推論したりするなど、主に教科学習の中で基礎的な力が形成されていきます。そうして、中学生くらいまでに、成人と同等の論理的思考力とメタ認知の能力が身につきます。
 しかし、多くの経験や知識に基づいて判断したり、対話を通して様々な利害関係の中で最適解を求めて皆が満足するような決定をしたりする力はまだ育っていません。高校以降で、社会にかかわり経験を積み重ねながら、より複雑な課題への解決力を高めていくことが必要となります。
 また、創造的思考力については、創造という言葉から天才的なひらめきをイメージしがちですが、創造はゼロから生まれるのではなく、ひらめくまでには知識や経験の積み重ねと、それを頭の中で温めるプロセスが必要です。その次のステップとして新たなアイデアが生み出されるのです。学校教育には、土台となる知識や経験をしっかりと積み重ねることを十分に行いながら、それに加えて新たなものを生み出す力を長い目で育てることが求められます。

Q. 思考力を育成するためには、どのような資質が必要となるのでしょうか?

A. 相手の意見に耳を傾け、大切にする思考態度を養うことが基礎となります

 思考力を育成し発揮できるようにするためには、思考方法や知識と同時に、思考態度も育てる必要があります。最初は自分のことしか見えていない子どもも、メタ認知の発達に伴って、友だちが自分とは違う考えを持っていたり、自分とは異なる気持ちを持っていたりすることに気づいていきます。さらに、「自分も間違えることがある」「時と場合によって考えは変わることがある」といったことを理解すると、本質的に物事を考えられるようになります。
 また、仮に高度な思考力を持っていても、それを現実の社会で生かせるような態度が伴なっていないと、自分の考えを相手に理解してもらったり、人と協働して問題を解決したりすることはできません。授業中の問題は解けるものの、現実の生活の問題解決では役に立たないということが起こり得るのです。
 先生方は「ほかの人の気持ちになって考えよう」と指導されていると思いますが、特に、小学校時代までにこうした視点を十分に育てることが大切です。