2017/03/15
[第2回] 世界のコンピテンシー育成の流れから見た日本の強みと示唆 [3/4]
Q. 全ての子どもに同じコンピテンシーを育てることを目指すべきなのでしょうか?
A. これからの社会で市民として豊かな人生を送るために、全員にとって必要となる基礎力はあります
現在、OECDやベネッセ教育総合研究所でも示されているコンピテンシーは、基本的には全員が身につけることを目指すべきもので、最低限の市民的教養やリテラシーと捉えられると思います。これからの社会で市民として豊かな人生を送るため、そして、職業や家庭生活を営むために必要なものだと言えるでしょう。そうした基礎を身につけた上で、例えばアーティストは創造的な感性や思考が際立って必要であるなど、個々の職業や生き方に応じて、自分の核となるコンピテンシーをさらに伸ばしていってほしいと思います。
大人になって振り返った時に、あの時にやっていればよかったと後悔しないように、食わず嫌いにならないように、基本となる部分はバランスよく学ぶことが大切です。子どもたちの可能性を早期に狭めてしまわないように、先生方にも"この教科は嫌い"と言わせない授業をしてほしいと思います。
またグローバル化は見えない形で急速に進んでいます。うちの地域の周りには外国の人はいないから、海外に行く機会はないからグローバルな視点は不要なのではなく、生活用品や食品の一つ一つをみればそこにいろいろな国際社会との接点が見えてくるでしょう。またネットによりメールやビデオ通話で遠隔地コミュニケーションも容易になりました。だからこそ内向き志向ではなく、国際的に俯瞰する視点がないと、技術の移り変わりの中で職業人として社会で働けない時代が来るのです。だからこそその中で創造的な仕事をするために、基礎となるコンピテンシーが必要なのです。
Q. コンピテンシーはいつから育てたらよいのでしょうか?
A. 乳幼児期からの愛着や信頼関係が、コンピテンシー育成の根源となります
コンピテンシー形成のためには、乳児期の育ちが基礎となります。健やかな体と心で伸び伸びと動いたり、身近な親しい人と気持ちが通じ合ったり、身近なものとかかわることで感性が育まれたりすることが学びの根源となり、将来の全ての学習領域へと分化していきます。
また、幼児期は乳児期の育ちを土台として、幼稚園教育要領で示されている「学びに向かう力や人間性」を伸ばし、広げていくことが、さまざま資質を伸ばす上での支えとなり、コンピテンシーへとつながっていきます。その発達過程のどこかでつまずくと、小学校以降の育ちにも支障が出やすくなります。
全ての出発点は、ごく親しい人との間での愛着や信頼関係です。親しい仲間や信頼できる仲間がいて初めて、自分の気持ちをありのままに表現することができたり、周りの世界を自分から探索しようと思えたりするようになるのです。その子らしい自己発揮や自己表現が生まれるには、それを育む人的・物的・社会的な環境が大切です。