2017/03/15

[第2回] 世界のコンピテンシー育成の流れから見た日本の強みと示唆 [2/4]

Q. 日本の教育の特徴、強みはどこにあるのでしょうか?

A. バランスのよさが強みと言えるでしょう

 コンピテンシーの価値づけには、社会や経済などの違いを背景とした、その国の特徴が見られます。例えば、シンガポールのように多文化の中でのアイデンティティとして人格の育成に重きを置く国もあれば、カナダのブリティッシュコロンビア州のように起業家精神を大切にするケースもあります。
 その点で、日本はバランスのよさが特徴であり、強みだと言えるでしょう。先進諸国の動きを見つつ、幅広に捉え、バランスのよいカリキュラムを目指しています。
 また、一人ひとりの子どもの心情や意欲を尊重し、教科指導と生徒理解の両面を大切にしていることも、日本の教育のよさです。「子どもの居場所が確保されていなければ、安心して学ぶことはできない」という知恵と人のつながりへの理解が根底にあると思います。また、人間性の育成を目的とした、掃除や給食などの指導も、海外の国々から注目されています。こうした学校生活全体へのアプローチは、生涯の生活者や市民としての、コンピテンシーの育成においてもプラスに働くでしょう。

Q. 日本の子どもたちはどんな力を身につけるべきでしょうか?

A. 聴く力をベースに、異質な人とかかわりながら自分を表現する力、チャレンジする精神を伸ばしてほしいです

 日本の子どものよさとしては、まず聴く力に長けていることが挙げられます。小・中学校などで人の話をじっくり聴き、相手の話を受け止めて、つながることの心地よさを十分に経験しているからだと思います。その根底には、教員が子どもの言葉に真剣に耳を傾けたり、粘り強く待ったりする指導があるのでしょう。
 ただし、いろいろな国の子どもの集まりの中に入ると、日本の子どもは言葉を発せられなくなる姿がよく見られます。本人は「英語が苦手だから」と思うようですが、そうではなく、異文化の人に伝わるように自国の文化などを表現するための意欲やスキルが弱いからです。相手を理解し、相手に応じて、言いたいことを構成し直し、伝えていく力が求められます。
 それに加えて、自分を積極的に出すだけの内容、伝えたい中身を持つことです。それは、自分の身近な生活や地域と引きつけて学ぶことで育っていくものです。ローカルなものへの理解がなければ、グローバルを学んでも、表面的な議論にしかなりません。自己表現をする根底の力として育んでいきたいものです。
 また、チャレンジすることや、やり遂げることなども、もっと伸ばしていってほしい観点です。
 日本の教育は、日記指導などの自身を振り返る学びを取り入れてきた伝統が長くありますから、そうした学びを今後とも意識して生かしてほしいと思います。また、主体的であると同時に、いかに対話的な学びを支え促す学習環境を整えていくかも検討すべき課題です。