2016/03/17
[第2回] 卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感 —大学における「キャリア教育」推進の今後のあり方- [5/10]
3.卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感(3)
(3)卒業大学に対する考えや結びつき(回顧的意味づけ、つながりの状況)
大学における「キャリア教育」推進の背景や状況からもみてとれるように、「キャリア=将来の進路」と捉えがちであるが、careerの語源や本来の意味をふまえ、「キャリア=過去の経歴」という側面をも含めて、より広義に捉え直すことも今後は必要であろう。
本調査では「卒業大学に対する考えや結びつき」に関する8項目を設け、それぞれ4段階評定(「とてもあてはまる」「まああてはまる」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」)での回答を求めている。より広義に「キャリア」を捉え直すならば、卒業大学に対する回顧的意味づけやつながりの状況は、先に目を向けたキャリア・アンカーやキャリア成熟同様、着目すべきキャリア意識といえるだろう。
表2は、「卒業大学に対する考えや結びつき」と大学時代全体を通しての成長実感の相関を示したものである。「卒業大学に対する考えや結びつき」に関する項目の4段階評定をそれぞれ4点(「とてもあてはまる」)から1点(「まったくあてはまらない」)でスコア化した。大学時代の成長実感のスコア化は、先の分析と同様に行っている。
表2.「卒業大学に対する考えや結びつき」と大学時代の成長実感の相関
若手層・シニア層ともに、いずれの考えや結びつきも成長実感との相関係数が0.3を超える中程度の相関関係にあるが、「大学時代の経験は、現在の自分を形成する土台になっている」「卒業生であることを誇らしく感じる」は相関係数0.5以上、「卒業大学に愛着を持っている」も0.5程度のやや強い相関係数が示されている。
ベネッセ教育総合研究所(2015)によれば、両世代ともに「大学時代の経験は、現在の自分を形成する土台になっている」「卒業生であることを誇らしく感じる」はおよそ70%が、「卒業大学に愛着を持っている」もおよそ65%が、「とても+まああてはまる」と回答している。本稿での分析結果からは、世代を問わず、大学時代の成長実感が強い卒業生ほど、卒業大学での経験を現在の「自分の土台」と感じていたり、卒業大学に「誇り」や「愛着」を持っていることがわかる。
若手層に関して言えば、「卒業大学は、大学進学を考える人にすすめる価値がある」も0.5以上の相関係数が示されており、大学時代の成長実感が強い卒業生ほど、卒業大学に「他者(大学進学を考える人)にすすめる価値」を見出しているといえるだろう。