2016/03/17

[第2回] 卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感 —大学における「キャリア教育」推進の今後のあり方- [1/10]

望月 由起●もちづき ゆき

昭和女子大学 総合教育センター 准教授
お茶の水女子大学 大学院人間文化研究科博士後期課程単位取得満期退学 博士(学術)
横浜国立大学 大学教育総合センター専任講師、准教授、お茶の水女子大学 学生・キャリア支援センター准教授を経て、2015年4月より現職。専門は、教育臨床社会学。研究テーマは、青年期のキャリア形成とその支援・教育、子どものキャリア形成に対する家庭の影響など。主な著書に、『進路形成に対する「在り方生き方指導」の功罪-高校進路指導の社会学-』(2007年)、『キャリア研究を学ぶ:25冊を読む』(2009年、共著)、『現代日本の私立小学校受験-ペアレントクラシーによる教育選抜の現状-』(2011年)、『キャリアデザイン支援ハンドブック』(2013年、共著)など。

1.はじめに

 大学における「キャリア教育」は、この15年余りのうちに急激に推進されてきた。その成果として学生の就職状況を挙げる大学も多いが、「キャリア教育」推進の本来の目的を鑑みれば、「卒業後、いかなるキャリア意識を形成しているのか。それが大学時代の成長実感といかに関連しているのか」といった観点から捉えることも必要ではなかろうか。
 本稿では、大学における「キャリア教育」がいかにして推進されてきたかを確認的に概観した上で、「大学での学びと成長に関するふりかえり調査(以降、「本調査」とする)」に基づき、卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感の関連性に目を向けてみたい。本調査では、「23~34歳(以降、「若手層」とする)」と「40~55歳(以降、「シニア層」とする)」の2つの世代の卒業生を調査対象としている。大学教育改革のさなかに大学生であった若手層の多くは「キャリア教育」が大学に浸透している(しつつある)環境で大学生活を送り、それ以前に大学生であったシニア層の多くは就職指導中心の環境で大学生活を過ごしていたと思われる。2つの世代の卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感の傾向などから浮かび上がる「キャリア教育」の影響を推察し、今後のあり方についても考えてみたい。