【体験談】ChatGPTを使って夏休みの自由研究テーマを見つけてみた

ChatGPTをはじめとしたAIツールが次々と登場し、スピーディーな展開に驚かれているかたも少なくないでしょう。

子どもの学習においてどのようにAIを使うかについてはさまざまな議論がありますが、情報モラルやAIリテラシーに詳しいNPO法人 奈良地域の学び推進機構理事の石川千明さんは、「まずは大人の目の届くところで使ってみるところから」とアドバイスをしています。

そこで今回は、「夏休みの自由研究のテーマをChatGPTに相談しながら考える」というテーマで、保護者のサポートのもと、3人の中学生・高校生に実際に使ってもらいました。

文章で返ってくるので、知りたいことにより近付ける
〜Aさん・中学1年生〜

Aさん・中学1年生 文章で返ってくるので、知りたいことにより近づける

まずは、中学1年生のAさん。普段はGoogle検索などインターネットで調べものをすることが多く、ChatGPTは今回初めて使います。

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最初にAさんは、「夏休みの自由研究のテーマ おすすめ」と入力。ChatGPTは、天文学、ロボティクス、食品科学、文化比較……など、テーマとその概要について情報を提示しました。ただ、中学生が取り組むテーマにしては漠然としていて、Aさんもピンとこなかったようです。

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続いてAさんは「夏休みの自由研究 家での実験」と入力。植物の成長実験、化学の実験、食品科学実験などが候補として挙げられました。

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Aさんは化学実験を選択。「化学実験 家」と入力すると、ChatGPTからはレモン電池、マグマランプ、酢と重曹の反応などが挙げられました。

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「マグマランプって火の玉ができるやつかな?」と興味を持ったAさん。「マグマランプとは?」と入力し、さらに調べてみることにしました。

ChatGPTを使ってみた感想をAさんとお母さまに伺いました。

情報の真偽に気を付けつつ、今後も使ってみたい

「Google検索とかと同じ感覚でいたけれど、ChatGPTのほうがより詳しく、文章で回答が返ってくるので、こちらのほうが何かを知りたい時は便利かなと思いました。
学校の授業で、インターネット上には誤った情報が含まれている可能性があると聞いたことがあります。そういうことに気を付けながら、今後もChatGPTを使ってみたいと思います」(Aさん)

便利な半面、危険もある。訓練の必要性を実感

「便利な半面、危ない部分もあると感じました。
自分がある程度知識のある分野については、ChatGPTが提示する情報が正しいか正しくないかという判断ができますが、まったく知らない分野の場合は正誤の判断が難しく、与えられた情報をそのまま受け取ってしまいかねません。
ChatGPTを使ううえでは、これは本当に正しい情報なのかと常に疑いの目を持つことが大事で、大人自身にも訓練が必要だと感じました」(Aさんのお母さま)

問いを重ねることで1つのテーマをどんどん深掘りしていけるのが、インターネット検索とは異なるChatGPTの大きな特長です。
まずはChatGPTに聞きたいことを入力し、回答をもらう。その回答から、さらに自分の興味に合わせて問いかけ、深めていく……といった、「相談相手として」の使い方がオススメです。
正しく使うためには、ChatGPTから得た情報の正誤を見極めることが不可欠。書籍や公的機関のホームページ等で確認し、必ず事実確認するようにしましょう。

高性能でわかりやすいけれど、まちがった情報もある
〜Bさん・中学1年生〜

Bさん・中学1年生 高性能でわかりやすいけれど、まちがった情報もある

続いては、中学1年生のBさん。この日初めてChatGPTにふれるということで、まずは自由に使ってもらいました。

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Bさんは、「学校のクラスでウケる話を教えて」と入力。ChatGPTが挙げたのは、浦島太郎や桃太郎、赤ずきんといった定番の物語で、Bさんが想定していた回答とは違ったよう。
今度は、「中学の文化祭に人を呼ぶための文章を書いて」と、別の指示を出しました。

使ってみた感想を尋ねると、「中学校でウケる話については微妙だったけれど、文化祭の文章はいいかなと思った」とのこと。
素早く、かつ、文章で回答が返ってきたことに、少し驚いた様子でした。

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いよいよ本題へ。Bさんが「夏休みの自由研究に最適なテーマを教えて」と入力すると、ChatGPTから、星と宇宙の探究、植物の成長と実験…といったテーマと概要が6つほど列挙されました。

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その中から宇宙を選んだBさんは、「宇宙をテーマにした自由研究をする時に調べるべきことを教えて」と入力。
ChatGPTの提案から国際宇宙ステーションを選んだBさんが、「国際宇宙ステーションについて調べる方法を教えて」と入力すると、国際宇宙ステーションの概要に加え、参考になる文献、映画、ドキュメンタリーなどの情報が提供されました。

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さらにBさんが「国際宇宙ステーションについて最も参考になる文献」と入力すると、ChatGPTは英語の書籍を列挙。
お母さまの「日本語の本、と指定しないといけないんじゃない?」というアドバイスに従い、Bさんは「国際宇宙ステーションについて最もわかりやすい日本語の本を教えて」と入力。するとChatGPTから、日本語で書かれた書籍3冊が紹介されました。

体験後、Bさんとお母さまに感想を伺いました。

条件を付けることで欲しい答えが得やすくなる

「ChatGPTは思っていたよりも高性能で文章もわかりやすかったです。細かく条件を指定したり、話題やテーマを絞ったりすることで、欲しい答えが引き出しやすくなると感じました。
一方で、違和感のある回答がいくつかあり、まちがった情報が含まれている可能性があると思いました。そういった点に注意すれば、学校で作文やレポートなど、文章を書く課題が出たときなどに、活用できそうだと思いました。」(Bさん)

多角的な視点が得られるが、書く力の低下が懸念される

「ChatGPTが調べ物にここまで使えることに驚きました。
ChatGPTを使うことで多角的な視点が得られると感じたので、ChatGPTを学習に活用することには基本的に賛成です。
気になるのは、パソコンが普及した際に漢字が書けなくなった人が増えたように、ChatGPTを使い出すと大人も子どもも文章が書けなくなるんじゃないかということ。 書く力は大事だと思うので、そこは今後の課題になると思います」(Bさんのお母さま)

ChatGPTは、入力する質問が漠然としたものであれば漠然とした答えしか返ってきません。欲しい情報を得るためには、具体的な条件付けをしたり、テーマを絞ったりすることが大事です。
「〜(人)にとってわかるように(教えて)」「何文字以内で(答えて)」「何個のアイデアを(提案して)」のように限定的にするのもおすすめです。
なお、実在しない書籍が紹介される場合もあるので、実際に存在するのかどうか、インターネットなどでチェックするとよいでしょう。

ChatGPTを使うことで、新しい視点が発見できる
〜Cさん・高校2年生〜

Cさん・高校2年生 ChatGPTを使うことで、新しい視点が発見できる

続いては、高校2年生のCさん。これまでも、探究のテーマ探しやレポートの構成案の作成時に、ChatGPTを使ったことがあるそうです。
夏休み期間に海外に短期留学するため、自由研究にかけられる時間は2週間に設定。Cさんの場合は、「地域の野生動物の調査」と、研究の大まかな方向性が既に決まっています。

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Cさんが最初に入力したのが、「2週間で地域の野生動物の調査をしようと思っています。どのような生物が候補に挙がりますか」という問い。ChatGPTを使ったことがあるだけに、具体的な問いになっています。

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ChatGPTからは複数の動物の候補が挙がり、Cさんはキツネを選択。「キツネの調査をする場合、どのような機材と道具が必要ですか」と入力すると、「トラップカメラ」を使うという説明が。
Cさんは「トラップカメラを自作することはできますか」と入力しましたが、難解な制作法を提案されてしまいました。

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改めて「自分の持っているスマホを使ってトラップカメラのようなものを作ることはできますか」とより細かい質問を投げかけるCさん。
ChatGPTから提案されたスマホ用のアプリをその場でネット検索するも、「このアプリ、あまり一般的じゃないかも……」とやや行き詰まります。

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お父さまが「2週間という期間が考慮されていない気がする」「もっと小さな生き物のほうがいいのではという視点もありそうだけれど」とアドバイス。
そこでCさんは、「もっと他の小さい生き物で行える研究を提案してください」と入力します。

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お父さまの「地域を特定したほうがいいんじゃない?」というアドバイスを受け、「北海道に住んでいて、地元の生態系についての調査をしたいと考えています。何かよい研究対象を提案してください」と改めて入力。
ChatGPTからはニホンジカなど複数の提案がありました。Cさんは「2週間で研究したいです」と再度入力し、最終的にはChatGPTからの提案の中にあった「昆虫の研究」にテーマが定まりました。

体験後、Cさんとお父さまに感想を伺いました。

新しい視点の発見があるけれど、うのみにしてはいけない

「ChatGPTには、具体的かつ細かく指示をする必要があると感じました。友達との会話のように省略したりあいまいな表現を使ったりすると、伝わりづらいと思います。
ChatGPTは、尋ねたことに対して網羅的に答えてくれて、たとえば野生動物でも自分が思い付かなかった動物とかも教えてくれるので、新しい視点の発見があるのはよいところだと思います。
また、ChatGPTには24時間365日いつでも何度でも聞けるので、申し訳なさを感じずに頼れるのもいいところだと思います。

一方で、気を付けるべき点もあると思います。ChatGPTはうそをつくこともあるよと父から聞いていたのですが、先ほど北海道の野生動物としてニホンジカを挙げていて。『ニホンジカじゃなくてエゾシカでしょ?』と気付き、ChatGPTの回答をうのみにしてはいけないことを実感しました」(Cさん)
※エゾシカはニホンジカの亜種

新しいツールはできるだけ子どもに使わせてみる

「自分が使う時とは質問の投げ方が違って興味深かったですね。私自身がIT関係の仕事をしていることから、ChatGPTのような新しいツールはできるだけ子どもに使わせてみるようにしています。
子どもに伝えているのは、ChatGPTは検索ツールではないということ。情報の網羅は得意だけれど正確ではない情報も含まれること、自分では思い付かない発想を得るのに使えることも、伝えるようにしています」(Cさんのお父さん)

ChatGPTのような新しいツールは、子どもたちのほうがどんどん使いこなしてしまうもの。お子さまが使う様子をそばで見守ることで、「こんなふうな使い方もあるんだ」と大人にも気付きがありそうです。
リテラシーが心配だという場合も、一緒に使ってみるなかで「この情報って本当かな?」「きちんと調べてみたほうがいいと思うよ」「参考にするのはいいけれど、丸写しはダメだよ」などと声をかけることで、誤った使い方をしないようサポートできるのではないでしょうか。

まとめ

AIツールに向き合ううえで大事なのは、まずは安全な環境で、お子さまや保護者のかたが実際に使ってみること。
体験談のコメントにもあったように、ChatGPTは従来のインターネット検索とは異なるツールだという認識が大切です。
ただ情報収集や知識の確認に使うのではなく、自分にはない観点やアイデアを提供してくれる相談相手として使うことで、より有効にChatGPTを活用できます。

まだまだ未知数のAIツールですがこれからの時代にはこういったツールを使いこなせるスキルも必要になってくるでしょう。
今回の3名の体験をヒントに、使いかたや質問の仕方を工夫し、情報の真偽を必ず確かめる、丸写しはしないといった利用のためのルールを守り、ぜひ親子でAIツールにふれてください。

プロフィール


石川千明

NPO法人 奈良地域の学び推進機構理事、テックコーチ
2008年より自治体や学校等でICT支援活動を行う。2011年より情報モラル教育を推進。「どなたにもわかりやすく」をモットーに、子どもたちがインターネットで被害者にも加害者にもならないための情報モラル講座を開講している。
公式サイト:https://www.j-moral.com/