子どもと一緒にワクワク使おう!AI超入門解説

「最近よく聞くAIって結局どういうもの?」
今後の社会では、生活の中でAI(人工知能)を活用する場面が増え、お子さまの教育もAIによって変わるといわれています。
そこで、今話題の「生成AI 」を中心に、「AIとは何か?」「何ができるのか?」を、文部科学省のICT活用アドバイザーを務め、AI活用に詳しい広島工業大学教授の安藤明伸先生に伺いました。
お子さまと一緒にAIを使う際の参考にしてみてください。

そもそもAIって? どんなことができるの?

数年前から、メディアなどでAIが盛んに取り上げられるようになってきました。
AI(Artificial Intelligence:人工知能)は、文字どおり「プログラミングによって人間の知能を人工的に実現する技術」のことです。
AIの研究は1950年代から続けられており、1980年代にはコンピュータが多くの情報を学習(蓄積)することができるようになって発展しました。
ただこの時点では、人間がコンピュータに情報を入力しなければならず、非常に手間がかかることが課題でした。
2000年代以降には、Webなどからコンピュータ自身が大量の情報を学習する「機械学習」という技術が実用段階に入り、AIを使ってさまざまなことを実行できるようになりました。
特に、機械学習の一種として、人間の脳の働きを模した「ディープラーニング」という技術が誕生してからは、「AIにできること」は爆発的に増えています。

何かを判別するためのAIは既に、製造業や医療、物流などの現場で活用されています。
日常生活の中でも、たとえば自動で室内を最適な温度に調整するエアコンや、時間や天気に合わせて色・明るさが設定される照明システム、水温や米の銘柄などの条件を考慮してご飯を炊き上げる炊飯器など、AIを搭載した家電が次々と登場しています。

そして2022年11月、アメリカのOpenAI社が人工知能を使ったチャットサービス「ChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)」を公開してから、文章を自動的につくれる機能を備えた「言語生成AI」に注目が集まっています。

言語生成AIの魅力は? どこが面白いの?

ここからは、言語生成AIを例にとって、AIを使う面白さを説明していきましょう。
言語生成AIの特長は、まるで人間が話しているかのような自然な文章をつくれること。
「ChatGPT」の日本語対応アプリも、こちらから質問をすると、人間が考えながら答えているかのように人間味のある回答を出してくれます。

また、「〇〇とは?」といったシンプルな問いはインターネットの検索サービスでも答えを見つけられますが、言語生成AIができることはそれとは異なります。
たとえば、不完全な質問を投げても「あなたの知りたいのは■■ですか?」などと推測して答えてくれます。
また、たとえば条件を指定したうえで「敬老の日におじいちゃんに贈るプレゼントを考えてほしい」「白雪姫の物語を現代風に変えてくれない?」といった頼み事をすると、条件に合う「それらしい」答えを出します。
つまり、インターネット上に存在する大量の情報を学習したうえで、質問や指示に合う回答を出してくれるわけです。
回答の中には、質問者が思い付かない内容もたくさん含まれています。
言ってみれば、言語生成AIは、「物知りなパートナー」のような存在になり得るのです。
「自分が質問したことや頼んだことに対して、予想も付かない答えが飛び出す」という経験は、保護者のかたにとってもお子さまにとってもワクワクするものではないでしょうか?

ただし、「AIが出した答えがすべて正しいとは限らない」ことも知っておく必要があります。
AIはインターネットから情報を探して質問に答えるわけですが、ネットに多く登場する単語を拾って文章をつくる傾向があり、最新の情報を学習できているわけではないので、回答が正確ではない可能性もあります。

そうしたAIの特性を感じるためにも、全く知らないことを聞くのではなく、まずは自分が確実に知っていることをあえて聞いてみるとよいでしょう。
「AIはとてもたくさんのことを知っているけれど、間違える場合もあるから、回答をそのまま使うのは良くないね」という認識をお子さまと共有したうえで、スマートに活用していくことが重要です。

AIはお子さまの未来を変える?

AIの技術は、今後も進化し、未来の生活を変えていくといわれています。
なかでもお子さまに影響を与えると思われるのが、教育の分野です。

AIが教育現場で活用されるようになると、自分で調べて答えたり考えたりすることに加えて、AIを活用して自分の考え以外のアイデアを得たり、多くの人の考え方を知ったりできるようになります。
そこで、「どんなふうに質問すればよりよいアイデアを出すためのヒントを得られるか」といった質問力が問われるようになります。そのためには、まずは教科書や資料集などで基礎的な知識を付けることが、やはり大切になってきます。
そうすると、活用の仕方を発展させ、「質問の仕方を変えれば、別のアイデアがAIから出てくるかもしれない」「もっと役立つアイデアを出すために、少し自分でも調べてみよう」といった多様な取り組みが行われるようになる可能性もあります。

また、全国の小中学校では、既にAIを一部活用した教育が行われはじめています。
たとえば、AIがお子さまの理解度に合わせて次々と最適の問題を出す学習ドリルのアプリを採用している学校もあります。
文部科学省でも7月4日に、生成AIの利用に関する暫定的なガイドラインを全国に通知しました。そこにも、生成AI自体の性質やメリットデメリットを理解できていることや、情報モラルを含む情報活用能力が十分育成されていることの重要性が書かれています。
AIを効果的に利用して一人ひとりの力を伸ばす取り組みによって、お子さまの未来はさらに広がっていくでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

AIを味方に付ければ、お子さまは楽しみながら多様な力を伸ばしていくことができます。Society5.0といわれる時代を生きる子どもたちにとっては、AIとの付き合い方、AIに対するリテラシー(素養)が一層重要になります。AIが答えたものをそのまま自分の成果とするのではなく、それをきっかけにして、自分の経験を踏まえたり、自分ならではの表現を考えたりと、何度も自分で遂行するプロセスを大事にしていきましょう。 正しい使い方を一緒に模索しながら、「AIならではのワクワク感」を保護者のかたも楽しんでみませんか?

プロフィール


安藤明伸

広島工業大学教授
文部科学省のICT活用教育アドバイザー。
「小学校プログラミング教育の手引」の作成に参画している。
宮城教育大学名誉教授